大学出版部協会

科学研究費補助金研究成果公開促進費 「学術図書」に関する要望


編集者がすすめる一冊の本

各大学出版部の編集者がおすすめする書籍です。メールマガジンでも配信しております。


詳細な書誌情報へ
[2011年4月12日公開]

成田彦栄氏考古・アイヌ民族資料図録 (弘前大学出版会刊)

弘前大学人文学部附属亀ヶ岡文化研究センター

定価●2,800円+税

ISBN978-4-902774-64-1 C3672

A4判 / 150ページ / 並製

奥付の発行年月●2010年09月

 「ふと目にした写真から、自分の中に眠っていた興味に気付いた。」そんな経験をみなさんはお持ちでしょうか?

 本書には、青森県の医師・成田彦栄氏が収集していた土器や土偶など、縄文時代晩期に東北地方で華開いた亀ヶ岡文化の遺物の写真を数百点掲載しています。成田氏の収集品は、数点の著名な遺物が展示会などで紹介されただけにとどまっていたため、長い間「幻のコレクション」とされていましたが、平成21年度にご遺族から弘前大学に寄贈されてからは、多数の考古資料が弘前大学人文学部附属亀ヶ岡文化研究センターで一般公開されています。
 本書はその掲載資料について詳細に解説をしており、考古学に興味を持っている方は勿論、原始美術や工芸に関心のある方にお薦めする縄文文化の専門書です。しかし、書籍の大半は特徴的な写真やそれらの拓本で占められているため、難しい専門的知識を持っていなくとも、眺めるだけで縄文文化を楽しめる内容になっています。ひょっとしたら、その多くの写真のなかに心を揺さぶられるような1点を見つけられるかもしれません。

 「今まで全く興味は無かったけれど、実は考古学って結構おもしろいのかも?」と思わせてくれる、そんな一冊ではないでしょうか。本書を手に取ってみることで『自分の知らなかった一面を見つけた時のちょっとした嬉しさ』を感じてもらうことができましたら幸いです。



詳細な書誌情報へ
[2011年2月22日公開]

数の泉 数の成り立ちから実数論へ (九州大学出版会刊)

加藤 久子

定価●1,600円+税

ISBN978-4-7985-0034-8 C1041

A5判 / 82ページ / 並製

奥付の発行年月●2010年12月

発売日●2010年11月下旬

 数学(算数)ができなくても、社会生活に支障はない。学生のころ、ややこしい数式を前にそんな悪態をついたことがある人は少なくないかと思います。しかしながら、実際には日常生活のいろんな場面で数学(算数)は必要になります。買い物をするにも、料理をするにも、薬を飲むにも。
 著者は大学生や社会人の数学離れを嘆いてこの本を著しました。割り算のできない大人に「割り算のやり方」を教えるのではなく、そもそも割り算をする、ということはどういう意味を持つのかからひもとき、覚えさせるのではなく、理解させる。公式を丸暗記させるのではなく、こうやってそもそもの原理を教えてくれる教師がいたならば、ここまで数学離れは進まなかったかもしれないと思わざるを得ません。
 自然数とは何か、有理数とは、無理数とは、そして零とは何を表すのか。あらゆる「数」をひとつひとつ並べてゆくことで現れるものは、ひとつの直線です。その直線の上には、1点の隙間もなく、実数が並んでいます。著者は、数直線を「あなたの立っている点を0として北極星を通過する直線」として想定しています。自分と宇宙が数で繋がれているような、どこかロマンチックな感覚です。
 数学(算数)ができなくても、社会生活に支障はないけれど、数学的な視点を持って眺める世界は、ちょっとおもしろい。そう思わせてくれる1冊です。


詳細な書誌情報へ
[2011年1月19日公開]

死刑選択基準の研究 (関西大学出版部刊)

永田 憲史

定価●2,800円+税

ISBN978-4-87354-499-1 C3032

A5函入 / 274ページ / 上製

奥付の発行年月●2010年09月

 どのような場合に死刑を選択し、どのような場合に死刑選択を回避すべきか?
 2009年5月に裁判員裁判が始まり、法律の専門家ではない市民にとっても、「死刑選択基準」が重要な関心となってきた。
 本書は、1983年の永山事件第一次上告審判決以後、2008年末に至るまでの判決を分析の対象とする。死刑選択が問題となった事件は、最高裁において永山事件第一次上告審判決以後に確定した死刑判決だけでも120件を超える。
 本書では、まず永山事件第一次上告審判決に至るまでの「死刑選択基準」を概観し、次に「死刑選択基準」を浮き彫りにした三つの事件(群)、すなわち、
 (1) 控訴審でなされた無期懲役の判断に対して、「死刑選択基準」に関する判例違反を主張して、検察官よりなされた上告五事件、
 (2) 犯行当時少年であった被告人が4人を殺害した市川事件、
 (3) 犯行当時少年であった被告人が母子を殺害した光市事件
の判決及び決定について詳しく論じる。その結果、光市事件第一次上告審を除けば、「死刑選択基準」に変化はみられないことが明らかとなる。最後に、裁判員裁判における「死刑選択基準」の行方にも言及している。
 なお、巻末に、最高裁において永山事件第一次上告審判決以降に確定した死刑判決等の資料も収められている。
(関西大学出版部・藤原有和)


詳細な書誌情報へ
[2010年12月16日公開]

緒方洪庵全集 第一巻
扶氏経験遺訓 上 (大阪大学出版会刊)

適塾記念会緒方洪庵全集編集委員会

定価●10,000円+税

ISBN978-4-87259-370-9 C

A5判 / 426ページ / 箱入

奥付の発行年月●2010年11月


緒方洪庵全集 第二巻
扶氏経験遺訓 下 (大阪大学出版会刊)

適塾記念会緒方洪庵全集編集委員会

定価●10,000円+税

ISBN978-4-87259-371-6 C3321

A5判 / 418ページ / 上製

奥付の発行年月●2010年11月

 本全集は緒方洪庵生誕200年を記念して、緒方洪庵の顕彰を主目的とする適塾記念会と適塾を源流とする大阪大学が一体となって企画された全五巻のプロジェクトである。11月に第一巻、第二巻が刊行された。
 緒方洪庵は、近年の江戸ブームの中でテレビドラマなどにもとり上げられ少し知られるようになった。蘭学者、医者そして何よりも教育者として、科学的な考えを西洋から学ぶ必要性を説いた人である。日頃は、町医者としてそして多くの門下生を抱える適塾の先生として忙しく活動しながらも、その目は常に人々のために向けられている。原因の分からない病におののく人たちをどうすれば救えるか。蘭書の中にその答えを見つけたときは直ちにその翻訳に取りかかり、自分一人のものとせず同業の医者に知らせることを旨とした。長くない人生のあいだに翻訳した蘭書は数え切れない。
 その中から今回、二冊にわけて収められたものは、『扶氏経験遺訓』である。扶氏とはドイツ、ベルリン大学教授フーフェランドのことで、その著作であるEnchiridion medicum という当時最新の医学書の洪庵による和訳である。ドイツでの刊行は1833年、オランダ語訳は1838年でその翌年か翌々年に洪庵はこのオランダ語訳を読んで感銘を受け、直ちに訳すことをきめた。1842年には訳し終えている(刊行は1859年)。
 原書の新知識の中には日本語にない概念、名称が多く含まれている。そのために、洪庵が創作したと考えられる用語は多い。咽頭、疫病、喀血、感覚、灌腸、健忘、処置、常習、健康など100近くを数える。今も使用されているものもある。また、どうしても訳することができないものは、音訳として漢字音名で示している。ゲレイ→傑列乙(ゼリーのこと)、パップ→琶布(湿布)、レイムパ→列印波(リンパ)などがそうである。この翻訳にかけた洪庵の情熱が感じられる。
 文章は、カナ交じり文の文語体であり、内容は病気、治療、薬方などに限られるが、今回、常用漢字はすべて新字に改めたので、現在の私たちでも十分読める。また、担当された芝哲夫名誉教授により、詳しい全体解説と膨大な索引がつけられているので、それを目安として内容をたどることもできる。
 200年後の現在、もちろん医療技術は格段のちがいであるが、病気と取り組む医者の姿勢を医学者だけでなく私たちも読みとりたいと思う。
(大阪大学出版会 大西愛)

一般社団法人 大学出版部協会 Phone 03-3511-2091 〒102-0073 東京都千代田区九段北1丁目14番13号 メゾン萬六403号室
このサイトにはどなたでも自由にリンクできます。掲載されている文章・写真・イラストの著作権は、それぞれの著作者にあります。
当協会スタッフによるもの、上記以外のものの著作権は一般社団法人大学出版部協会にあります。