大学出版部協会


編集者がすすめる一冊の本

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[2013年1月18日公開]

科学と証拠 統計の哲学 入門 Evidence and Evolution: The Logic behind the Science(名古屋大学出版会刊)

エリオット・ソーバー

定価●4,600円+税

ISBN978-4-8158-0712-2 C3010

A5判 / 256ページ / 上製

奥付の発行年月●2012年10月

原著者エリオット・ソーバーは、科学哲学、とくに生物学の哲学の分野で世界的に著名であり、日本でも『過去を復元する:最節約原理、進化論、推論』『進化論の射程:生物学の哲学入門』の2冊の邦訳書が刊行されています。

本書はこれらのような生物学の哲学についての本ではなく、副題にあるように、統計学の哲学をテーマとした本ですが、ソーバーが専門外の分野に手を伸ばしたというわけでは、決してありません。上記の『過去を復元する』でも、進化論の推論を統計学の技法により基礎付けようとしているように、ソーバーはこれまで統計学の哲学の分野でも、数多くの業績を残してきています。本書は、日本ではあまり省みられてこなかったソーバーの「統計学の哲学」の成果を紹介する書となっています。

そもそも日本では、「統計学の哲学」自身があまり知られておりません。しかし、統計学の世界にはベイズ主義 vs 頻度主義 vs 尤度主義、という長年にわたる「学派の争い」があり、様々な哲学的議論の積み重ねがあります。その中で、日本の統計学者・赤池弘次の提起した「赤池情報量規準=AIC」は、非常に重要な意義を果たしています。本書はこうした歴史をもつ「統計学の哲学」についてコンパクトにまとめており、まさに入門書として最適と言えるでしょう。

数式の解説を含む豊富な訳註、充実した訳者解説、本書のためにソーバーが書き下ろした序文・結論ほか、は、原書にはない貴重な箇所です。

理系文系を問わず、物事を深く考えることが好きな方に、是非読んでもらいたい好著です。



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[2012年12月7日公開]

旅するウナギ 1億年の時空をこえて (東海大学出版会刊)

黒木 真理

定価●3,800円+税

ISBN978-4-486-01907-7 C1040

B5判 / 292ページ / 上製

奥付の発行年月●2011年08月

 本書は、自然科学、社会科学、人文科学というあらゆる角度からウナギをみつ
める一冊。
 ウナギという生き物を多方面から科学して俯瞰してみることで、包括的に理解
することを目的としている。
 「不可思議だから、面白い」「ウナギは、その条件を十分に満たしている」と
は著者の言葉であるが、こうした不可思議な面白さを、多数の写真を用いながら、
オールカラーであますところなく紹介する。
 ウナギの調査は各国で100年以上も続けられて、天然の卵が発見されたのは2009
年のこと。
 先人から受け継がれ現代まで徐々に明らかにされてきたこれまでの系譜も、時
代の流れにそって読むことができる。
 また、社会、人文の分野についても、豊富な資料を基に紐解かれる。
 そこでわかる食・美術工芸・信仰など日本人とウナギとの密接なかかわりにも
注目されたい。


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[2012年11月20日公開]

ジョン・ケージ 混沌ではなくアナーキー (武蔵野美術大学出版局刊)

白石 美雪

定価●3,200円+税

ISBN978-4-901631-89-1 C3070

A5判 / 320ページ / 仮フランス装

奥付の発行年月●2009年09月

発売日●2009年09月下旬

 今年2012年はジョン・ケージ生誕100年にあたり、ケージにちなむ数々のコン
サートや催しが開かれています。そこで、今回お勧めするのは第20回吉田秀和賞
受賞『ジョン・ケージ 混沌ではなくアナーキー』です。
 たとえば、ケージはどんな方法で沈黙の『4分33秒』を「作曲」したのか?
 なぜピアノの弦に異物を挟んだ「プリペアドピアノ」を考案したのか?
 易経の8×8のチャートを作曲に反映させた『易の音楽』とはどんな曲なのか?
 図形楽譜はどういう代物で、どう読み解くのか? そして難解とも奇妙ともいわ
れる彼の音楽理論は?
 緻密な論証によって、ケージにまつわる数々の謎を詳細に読み解いてゆくスリ
ルと醍醐味は格別ですが、同時に、なぜケージはそのように音楽と向き合ったの
か、ケージはなぜそのように生きたのかを論ずる丁寧な筆運びは、音楽学者であ
る著者のケージへの人間的共感に溢れています。
 「ともすると、音楽の鳴り響きとは別のところに存在意義があったとされるケ
ージだが、彼はなぜ、ほかならぬ音楽に身を捧げたのか、なぜ、音楽でなければ
ならなかったのか」読み終わった時こうした疑問が氷解するように論じたいとい
う著者の目的は達成されたようで、音楽に対し真摯に、かつユーモアの精神とと
ともに生きた1人の青年の姿が、そして年老いて静かに飄々と音楽への愛ととも
にその生涯を終える〈親愛なるジョン・ケージ〉の姿が浮かび上がります。是非、
あなただけの知られざるジョン・ケージを見つけてください。


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[2012年11月14日公開]

芸術と服飾 あやなす景色 (関東学院大学出版会刊)

山﨑 稔惠

定価●3,800円+税

ISBN978-4-901734-28-8 C3070

四六 / 368ページ / 上製

奥付の発行年月●2009年12月

発売日●2009年12月中旬

 議論の大筋からは一見、取るに足らぬ単調なあらわれのようでいて、ときとし
て服飾描写が陰翳深い相貌をあらわすことがある。作品を読み、そこにすっくと
立ち上がってきた服飾を歴史的、社会的、文化的、美的(感性的)文脈において
とらえてみる。本書で示そうとしたのは、ある時代、ある社会に生きた人びとの
喜びや悲しみ、快楽や苦痛、欲望や虚栄など、さまざまな心情と結びついて細や
かな景色を紡ぐ服飾の、問題の深さや面白さである。
 本書は序と結び、六つの章で構成される。
 序「ユルスナールの靴」はほかでもない須賀敦子氏の著作から、その「きっち
り足に合った靴」に執筆の所為に代え服飾の機微や肌理がたどられる。
 つづく六章では、西洋近世から近代において女性を魅了し、それゆえその描写
にもなんらかの意味が認められた真珠、マフ、扇の三つの装身具ごとにそれぞれ
二章ずつ、三つの切り口からアプローチする。
 その一「寓意の主題」、第一章「光の粒」では、真珠の画家ヨハネス・フェル
メールの作品をきっかけにヴァニタスについて再考し、第二章「真珠ものがたり」
では、貴くも妖しい真珠がいかに時代を越え興味深いテーマであったのか。
 その二「エロスとの対話」、第三章「毛皮のポエジー」ではヴェンツェル・ホ
ラーやトマス・ゲインズバラが描くマフに漂う文化的シナリオを、第四章「ボエ
ームのマフ」では冷たい手を温めるマフにこめられた愛の表現をみる。
 その三「メディアの技法」、第五章「たわむれの行方」では彫版扇の流行と
《娼婦一代記》の模倣が扇絵にもおよぶほど人気画家であったウィリアム・ホガ
ースの扇への知られざる関心、第六章「仮面扇の真相」では異形の扇に《乞食オ
ペラ》にまつわる意外な事実の追跡、などなど。芸術の位相における服飾の様態
や人間のこころに映るさまを観察する。


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[2012年9月4日公開]

刻された書と石の記憶 (武蔵野大学出版会刊)

廣瀬 裕之

定価●2,000円+税

ISBN978-4-903281-20-9 C1076

A5判 / 並製

奥付の発行年月●2012年01月

発売日●2012年01月中旬

 公園、史跡などのそこかしこにある石碑に、あなたはどのくらい注意を払って
いるだろうか? 待ち合わせの目印、毎朝のウォーキングの距離の目標、台座に
腰掛けて弁当を食べる場所……、こんな程度にしか思われていない石碑も多いこ
とだろう。
 いつでもそこにある石のカタマリでしかなかった石碑。そんな石碑が、実は奥
深い面白さを抱えていることを、本書は気づかせてくれる。
 石碑を見るときの着目ポイントは、碑の形式、そこに書かれた碑文の書と内容、
書を石の面に再現する刻、刻の味を決める石の素材などである。本書では武蔵野
にある3つの異なるタイプの碑を例にとる。それらは国木田独歩、太宰治にもゆか
りがあり、石碑調査は武蔵野文学散歩の趣から始まる。
 しかし、舟雲という号を持つ書家であり、書道・書道史の研究者でもある著者
の石碑探求は単なる文学散歩では終わらない。拓本を採り、碑の形式、揮毫、刻
のルーツを分析する。畳1畳大の採拓をものともせず、石切場まで車を駆る一方で、
拓本の1文字ずつの筆法を分析する。石のカタマリにここまで情熱を注ぐ著者に、
読者は圧倒されるだろう。そして、気がつくと自らも石のカタマリをおもしろい
と思い始めている。本書の豊富な写真、図版もぜひ楽しんでいただきたい。


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[2012年7月17日公開]

叢書・ウニベルシタス 975
時間の前で 美術史とイメージのアナクロニズム (法政大学出版局刊)

ジョルジュ・ディディ=ユベルマン

定価●3,800円+税

ISBN978-4-588-00975-4 C1310

四六判 / 352ページ / 上製

奥付の発行年月●2012年06月

発売日●2012年06月下旬

 近年、そのめざましい執筆活動によって、美術史学の分野を超えて世界的に注
目されるディディ=ユベルマンの画期作。二十世紀前半、二度の大戦という〈歴
史〉の破局のなかで、ユダヤ系知識人を中心に出現した知の星座──ヴァルター
・ベンヤミン、カール・アインシュタイン、アビ・ヴァールブルク等々──が思
想にもたらした革新とはどのようなものだったのか? この系譜の相続人たる著
者は、既成の学問によって整合的なパースペクティブへと押し込められた芸術の
歴史をいったん解体し、時間を流動化させ、まなざしを真の意味で弁証法化しよ
うと試みる。アナクロニズムと批判される危険を恐れず、むしろ時間の渦巻きと
再構成のなかでしか捉えられない歴史の「徴候」「モンタージュ」「残存」のリ
アリティを認めようとする。──プリニウスの古代ローマからバーネット・ニュ
ーマンのモダニズムまでを往還し、旧来の美術史の前提をゆるがす「イメージの
人類学」を実践する本書は、歴史がいま・ここの日常にもたらすさまざまなしる
しを読み解くための有効な手段を提供してくれます。小局既刊『イメージの前で』
の姉妹編であり、ディディ=ユベルマン入門としても最適の一冊です。


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[2012年6月19日公開]

メディアは大震災・原発事故をどう語ったか 報道・ネット・ドキュメンタリーを検証する (東京電機大学出版局刊)

遠藤 薫

定価●2,500円+税

ISBN978-4-501-62750-8 C3036

A5判 / 312ページ / 上製

奥付の発行年月●2012年03月

発売日●2012年03月上旬

 大地震・津波・原発事故により広範囲にわたって被害がもたらされ、メディア
自体も被災した状況で、未曽有の災害はどう報じられたかを検証する。時間経過
による報道内容の変化、メディアによる情報の違い、テレビ・新聞等の既存メデ
ィアとネット・ソーシャルメディアとの連携、被災者自身による情報発信、ドキ
ュメンタリーによる事実の検証、原発事故報道のあり方、報道が世論・選挙にも
たらす影響、世界での報道と国内での反応などを論考。
 著者が震災前から録画した首都圏すべてのテレビ録画映像分析や世論調査によ
るデータも交え、詳細に分析する。


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[2012年6月16日公開]

僕は絶対あきらめない 車いすテニスに夢をかけた22歳の生と死 (麗澤大学出版会刊)

竹畠 明聡

定価●1,600円+税

ISBN978-4-89205-605-5 C0037

四六判 / 272ページ / 並製

奥付の発行年月●2011年08月

発売日●2011年08月中旬

 著者は、平成16年、高校2年生の時に、骨のガンの一種である骨肉腫を発症、
担当医から「5年生存率20%」と告げられます。その後、肺への転移が見つか
ります。
 16歳の少年は、当然のように、恐怖と不安にさいなまれます。絶望の淵から
立ち上がり、「死」と向き合い、遂に倒れるまで(平成22年10月)の7年間
をどのように生きたか。ミクシーに公開されていた「闘病日記」、日経新聞に連
載されたコラム、講演記録で構成したのが本書です。
 ごく普通の青春を謳歌するはずだった一人の青年が、苛酷な運命に抗し、苦難
を克服し、心をとぎすまし、いかに明るく、前向きに生きることができたか。そ
の記録です。
著者は、次のような言葉を遺しています。「諦めてしまうことの怖さに比べれば、
諦めないことがどれだけ楽か!」「大切なものが芯にあれば、心は強く、折れな
い。私の場合は、車いすテニスがそれだ。」
 学術書を中心に出版活動を行なう「大学出版会」としては、異色の出版となり
ました。
 著者が本学の学生であったことが発刊の後押しをしたのも事実ですが、それよ
りも、「死」をしかと見据えて、如何に「生」きるかの答えを求めて、現代の若
者と等身大の青年が、悲観に陥ることなく、ここまでの高みに達し得た記録を、
特に若い世代の読者に読んでいただきたいと考えたからです。


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[2012年5月25日公開]

新装版 日本政党史論
新装版 日本政党史論1 明治維新から自由民権へ (東京大学出版会刊)

升味 準之輔

定価●6,800円+税

ISBN978-4-13-034271-1 C3331

A5判 / 404ページ /

奥付の発行年月●2011年12月

発売日●2011年12月中旬


新装版 日本政党史論
新装版 日本政党史論2 明治国家の議会と政党 (東京大学出版会刊)

升味 準之輔

定価●6,800円+税

ISBN978-4-13-034272-8 C3331

A5判 / 496ページ /

奥付の発行年月●2011年12月

発売日●2011年12月中旬


新装版 日本政党史論
新装版 日本政党史論3 大正デモクラシーと大陸政策 (東京大学出版会刊)

升味 準之輔

定価●6,800円+税

ISBN978-4-13-034273-5 C3331

A5判 / 404ページ /

奥付の発行年月●2011年12月

発売日●2011年12月中旬


新装版 日本政党史論
新装版 日本政党史論4 原敬の時代 (東京大学出版会刊)

升味 準之輔

定価●6,800円+税

ISBN978-4-13-034274-2 C3331

A5判 / 416ページ /

奥付の発行年月●2011年12月

発売日●2011年12月中旬


新装版 日本政党史論
新装版 日本政党史論5 西園寺と政党政治 (東京大学出版会刊)

升味 準之輔

定価●6,800円+税

ISBN978-4-13-034275-9 C3331

A5判 / 528ページ /

奥付の発行年月●2011年12月

発売日●2011年12月中旬


新装版 日本政党史論
新装版 日本政党史論6 挙国一致と政党 (東京大学出版会刊)

升味 準之輔

定価●6,800円+税

ISBN978-4-13-034276-6 C3331

A5判 / 416ページ /

奥付の発行年月●2011年12月

発売日●2011年12月中旬


新装版 日本政党史論
新装版 日本政党史論7 近衛新体制 (東京大学出版会刊)

升味 準之輔

定価●6,800円+税

ISBN978-4-13-034277-3 C3331

A5判 / 482ページ /

奥付の発行年月●2011年12月

発売日●2011年12月中旬

 《私が1948年大学を出て政治学の勉強をするようになった・・・それから30余
年はるかなりたぎりたつ八重の汐じお、私は、ゆられゆられてここに漂着した。》
──これは、『日本政党史論』につづいて著した『戦後政治 1945-55』上下、
『現代政治 1955年以後』上下の、後者の「あとがき」の末尾に升味準之輔が記し
た感慨である。刊記は「1985年1月快晴の日」、著者58歳の時。
 鮮明に記憶するのは、手書き原稿では「八重の汐じお」ではなく「八重の汐路
を」となっていて、初校の校正刷の段階で先生が朱を入れられたことである。言
葉としては両方ありえるが、柳田國男の話しに想を得た島崎藤村の『椰子の実』
に由来するが故に「八重の汐じお」を選んだのである。『新装版 日本政党史論』
に寄せた解説で、升味の独自の文体について御厨貴は「升味史論体」と命名した
が、その文体が、どこから言葉の水脈(みお)を曳いているかを推測させる、ひ
とつのエピソードであると思う。
 昨2011年は東京大学出版会設立60周年。その記念として、品切れ期間二十年で
あった『日本政党史論』全7巻を新装復刊した。
 2010年8月13日に逝去された著者からは、どんな形でもいいから読者が読める
ようにしてほしい、と希望を出されていたが、オンデマンド本ではなく本式印刷
・本式製本でいくべき「格式ある本」として復刊したいと位置づけられたがため、
かえってその実現は遅れ、逝去後のこととなった。
 一周忌の直後の8月18日の暑い日に、今は主なき国分寺市のご自宅にうかがい、
奥様から著者の書き込みの入った全7巻の手沢本をお預かりした。著者による朱
の訂正、朱の疑問、鉛筆の疑問、鉛筆での傍線・・・。文献の追加。句読点の位
置の吟味を含め、著者が何度も何度も読み返し、正確さと分かりやすさとに努め
た様子がひしひしと伝わってくる。
 さて、復刊にあたって、著者の遺稿とも言うべき書き込みをどのように扱うか。
著者の教え子の研究者の意見を聞きながら、著者の山のような手書き原稿に挑戦
し、てんこもりのゲラの赤字の判読に苦吟した経験のある私が責任を持ってあた
ることとなった。
 著者の書き込みの背後にある著者の意図を、著者の思いに沿って読み込み、訂
正としての採用不採用を慎重に判断するという作業を行い、最終的に印刷所に渡
したのは3カ月後の11月半ば。作業に取り組んでいたとき、升味さんは夢に現れ、
指示する。升味さんが私に憑依した。
 同じころ、4カ月かけて400字80枚の愛情のこもった解説を書き上げられた御厨
先生にお会いしたら「解説に取り組んでいる最中に私にも升味さんがのりうつっ
てきましたよ」とおっしゃっていた。
 そして、12月15日、『新装版 日本政党史論』全7巻は、八重の汐じお、読者の
海に旅立った。


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[2012年3月30日公開]

海と共にある歴史 イエメン海上交流史の研究 (中央大学出版部刊)

栗山 保之

定価●3,800円+税

ISBN978-4-8057-4149-8 C3022

A5判 / 384ページ / 上製

奥付の発行年月●2012年02月

発売日●2012年02月中旬

 アラビア半島の南西端に位置するイエメンは、わが国ではほとんど知られてい
ない地域のひとつです。このイエメンはその西側に横たわる紅海と、南側に広が
るインド洋とに取り囲まれています。このふたつの海洋が連結するイエメンの近
海は今日、石油資源に乏しい日本へ輸送される原油を満載した大型タンカーが頻
繁に往来するところであり、その意味でわが国にとって大変に重要な海域です。
しかしながら現在、この海域では海賊が横行して、わが国に関係する船舶の往還
はその襲撃によって甚大な被害をうけており、その結果としてイエメンの近海は、
世界的にも非常に危険な海域としてみなされています。ところがイエメンはかつ
て、インド洋と紅海のふたつの大洋を通じて、西は北アフリカや地中海北岸、そ
して東は中国や東南アジアなどの諸地域と、国際貿易、国際関係、そして人の移
動と交流の観点において、広域的な連関を有するきわめて国際性豊かな地域でし
た。
 本書は、このような海洋と深い関わりのあるイエメンの歴史について、わが国
で初めて著された本格的な研究書です。本の表紙は、イエメン南東部シフル港で
著者自身が撮影した写真を使用していますが、青い空と海が海賊のイメージとは
ほど遠い印象です。また、あとがきの中でも触れられているように著者が調査の
ために現地の遺跡を訪れた際に、中国産磁器片を夢中で這いつくばって探し回っ
ていると気づかぬ間に人だかりができていて恥ずかしい思いをしたというように
熱心な若手研究者です。ぜひご一読いただければ幸いです。

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