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[2010年12月16日公開]

緒方洪庵全集 第一巻
扶氏経験遺訓 上 (大阪大学出版会刊)

適塾記念会緒方洪庵全集編集委員会

定価●10,000円+税

ISBN978-4-87259-370-9 C3321

A5判 / 426ページ / 上製

奥付の発行年月●2010年11月


緒方洪庵全集 第二巻
扶氏経験遺訓 下 (大阪大学出版会刊)

適塾記念会緒方洪庵全集編集委員会

定価●10,000円+税

ISBN978-4-87259-371-6 C3321

A5判 / 418ページ / 上製

奥付の発行年月●2010年11月

 本全集は緒方洪庵生誕200年を記念して、緒方洪庵の顕彰を主目的とする適塾記念会と適塾を源流とする大阪大学が一体となって企画された全五巻のプロジェクトである。11月に第一巻、第二巻が刊行された。
 緒方洪庵は、近年の江戸ブームの中でテレビドラマなどにもとり上げられ少し知られるようになった。蘭学者、医者そして何よりも教育者として、科学的な考えを西洋から学ぶ必要性を説いた人である。日頃は、町医者としてそして多くの門下生を抱える適塾の先生として忙しく活動しながらも、その目は常に人々のために向けられている。原因の分からない病におののく人たちをどうすれば救えるか。蘭書の中にその答えを見つけたときは直ちにその翻訳に取りかかり、自分一人のものとせず同業の医者に知らせることを旨とした。長くない人生のあいだに翻訳した蘭書は数え切れない。
 その中から今回、二冊にわけて収められたものは、『扶氏経験遺訓』である。扶氏とはドイツ、ベルリン大学教授フーフェランドのことで、その著作であるEnchiridion medicum という当時最新の医学書の洪庵による和訳である。ドイツでの刊行は1833年、オランダ語訳は1838年でその翌年か翌々年に洪庵はこのオランダ語訳を読んで感銘を受け、直ちに訳すことをきめた。1842年には訳し終えている(刊行は1859年)。
 原書の新知識の中には日本語にない概念、名称が多く含まれている。そのために、洪庵が創作したと考えられる用語は多い。咽頭、疫病、喀血、感覚、灌腸、健忘、処置、常習、健康など100近くを数える。今も使用されているものもある。また、どうしても訳することができないものは、音訳として漢字音名で示している。ゲレイ→傑列乙(ゼリーのこと)、パップ→琶布(湿布)、レイムパ→列印波(リンパ)などがそうである。この翻訳にかけた洪庵の情熱が感じられる。
 文章は、カナ交じり文の文語体であり、内容は病気、治療、薬方などに限られるが、今回、常用漢字はすべて新字に改めたので、現在の私たちでも十分読める。また、担当された芝哲夫名誉教授により、詳しい全体解説と膨大な索引がつけられているので、それを目安として内容をたどることもできる。
 200年後の現在、もちろん医療技術は格段のちがいであるが、病気と取り組む医者の姿勢を医学者だけでなく私たちも読みとりたいと思う。
(大阪大学出版会 大西愛)

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