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風景が生まれるところ領域のフレーミング

領域のフレーミング 風景が生まれるところ

A5判 402ページ 並製
価格:4,950円 (消費税:450円)
ISBN978-4-87354-779-4 C3071
奥付の初版発行年月:2024年03月 / 発売日:2024年04月上旬

内容紹介

風景が描かれる場合、最初は対象を美的なものとして評価、判断する認識能力が働くが、同時にそれを自らの周囲に置きたい、仮想的空想的であれ、それによって囲まれた領域を自らのものとしたいという願望が生じる。このような観点から、西洋近代の風景画、トルコの近代絵画、イランの絵画絨毯などの風景表象を捉え直す試み。

著者プロフィール

蜷川 順子(ニナガワ ジュンコ)

京都⼤学⼤学院⽂学研究科博⼠後期課程(美学美術史学専修)修了。
phD(芸術学、ヘント大学)。
関西大学教授などを経て、現在、関西大学名誉教授、東西学術研究所客員研究員。
専門は芸術学、美学、西洋美術史。代表的著作:『バーバラ・バート「風のイコノロジー」』(翻訳)、2022年、三元社;『ハート形のイメージ世界 見えるものと見えないもの』(編著)、2021年、晃洋書房;『祈りと祈りの場』(共著)、2020年、関西大学東西学術研究所;『祈りの場の諸相』(共著)、2017年、関西大学東西学術研究所;『聖心のイコノロジー』(単著)、2017年、関西大学出版部;『油彩への衝動』(編著)、2015年、中央公論美術出版;『顔をみること 表わされた顔をめぐる美術史・文化史的断章』(共著)、2012年、関西大学出版部;『初期ネーデルラント美術にみる個と宇宙』(共著)、2011年、ありな書房;『アロイス・リーグル「ローマにおけるバロック芸術の成立」』(翻訳)、2009年、中央公論美術出版;『アーウィン・パノフスキー「初期ネーデルラント絵画―その起源と性格」』(共訳)、2001年2月28日、中央公論美術出版他.

メルテム・オズカン・アルトゥノズ(メルテム・オズカン・アルトゥノズ)

アンカラ大学美術史学科卒業。アンカラ中東工科大学建築史学科修士課程修了。
メキシコ国立自治大学(UNAM)美学研究センター、マドリード自治大などでの研修を経て、2013年に中東工科大学建築史で学位取得。
米国メリーランド大学の人類学部門/遺産研究ブランチでポスドク研究員となり、産業遺産保存に関する研究に従事。カラビュク大学芸術デザイン学科准教授を経て、現在アンカラ大学美術史学科教授。研究分野はモダニズム、イベリア研究、産業遺産研究、オスマン・トルコ研究、ユダヤ研究。
Editor of Cultural Encounters and Tolerance Through Analyses of Social and Artistic Evidences: From History to the Present, IGI Publisher, 2022: “Early Modernist Spatial Ideals, Renewal Objectives and their Physiological Effects in Karabuk,” EAUH Conference 2018, Rome (2018, CD press): “Topkapı Sarayı Duvar Resimlerinin Yeni Bir Değerlendirmesi,” 22. Uluslararsı Ortaçağ ve Türk dönemi Kazıları ve Sanat Tarihi Araştırmaları Sempozyumu, 24-26 Ekinm, Mimar Sinan Güzel Sanatlar Üniversitesi, İstanbul, 2018.

吉田 雄介(ヨシダ ユウスケ)

関西大学大学院文学研究科博士課程後期課程(地理学専攻)単位取得済退学。博士(文学、関西大学)。
現在、せとうち観光専門職短期大学地域振興学科准教授。
専門は地誌学、経済地理学、イラン地域研究。代表的な業績「イランにおける手織物生産の存続と多就業化の関係―ヤズド州メイボド地域のズィールー製織業を事例として―」『地理学評論』第78号8号,2005年;「王立地理学協会とイラン―1830年代から1840年代にかけてのイランに関する西洋の地理知識と言説の研究―」『関西大学 東西学術研究所紀要』第43号,2010年;「19世紀初期までのズィールーの基礎的検討」新谷英治編『祈りの場の諸相』ユニウス,2017年;「手織物生産への女性の参加とその限界:ヤズド州メイボド産地におけるズィールー(綿製敷物)生産を事例に」『イラン研究』18号,2022年;「近代期の神戸を経由した植民地内交易ネットワーク―ハッサム商会の破綻と事業継承を事例に―」『東洋研究』229号,2023年.

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

凡例

序 …蜷川 順子
 領域のフレームと風景表現
 古代や中世の風景表現
 領域のフレーム
 風景とフレーミング

第一章 マクシミリアン一世の<凱旋行列>図 …蜷川 順子
 一‐一 神聖ローマ皇帝マクシミリアン一世の生涯
 一‐二 帝国のフレーミングミニアチュール版〈凱旋行列〉の概要
 一‐三 アルトドルファーの戦闘図
  一‐三‐一 《第一次ヘルダー侵攻とユトレヒト戦争》(五二葉)
  一‐三‐二 《第一次フランドル侵攻とリュティヒでの勝利》(五三葉)
  一‐三‐三 《スイス戦争とナポリに対する戦争》(六四葉)
  一‐三‐四 《バイエルン戦争とクフシュタイン、ラッテンベルク、
         キッツビュールの市の旗章をもつ騎手》(六五葉)
  一‐三‐五 《ボヘミアの戦いとボヘミアの戦利品車》(六六葉)
  一‐三‐六 《第二次ヘルダー戦争とミラノでの再勝利》(六七葉)
  一‐三‐七 《ヴェネツィア大戦争》(六八葉)
 一‐四 戦闘図にみる風景表現
  一‐四‐一 イタリアの戦闘図との比較
  一‐四‐二 ケルデラーの風景表現と凱旋行列
 一‐五 アルトドルファーと独立風景画
  一‐五‐一 《きこりのいる風景》
  一‐五‐二 《聖ゲオルギウスと竜》
 一‐六 ツェルティスの人文主義とドイツ風景画
 一‐七 風景とフレーミング
  一‐七‐一 装飾と風景
  一‐七‐二 パレルゴン
 小結

第二章 ヨーロッパ都市図集成 …蜷川 順子
 二‐一 都市図の伝統
  二‐一‐一 『ニュルンベルク年代記』
  二‐一‐二 『世界都市図集成』
 二‐二 アブラハム・オルテリウス
 二‐三 ヨーリス・フーフナーヘル その生涯と画業
  二‐三‐一 アントウェルペン時代一五四二‐七六年
  二‐三‐二 ミュンヘン時代 一五七七‐九一年
  二‐三‐三 フランクフルト、そしてウィーンヘ 一五九一‐一六〇一年
  二‐三‐四 フーフナーヘルの景観図
 二‐四 名所図への侵入
 二‐五 描かれた風景に入る
 小結

第三章 十六世紀グラフィック風景画 …蜷川 順子
 三‐一 風景版画の登場と広がり
 三‐二 「四方の風」設立までの版画出版事情
  三‐二‐一 ドイツの事例を中心に
  三‐二‐二 イタリアの事例を中心に
  三‐二‐三 ネーデルラントの事例を中心に
 三‐三 ヒエロニムス・コックと「四方の風」
 三‐四 〈大風景画〉シリーズ
 三‐五 〈小風景画〉シリーズ
 三‐六 フィリップ・ハレ一族
 小結

第四章 フランス王国の領域 …蜷川 順子
 四‐一 ヴェルサイユ宮殿「鏡の間」天井画
  四‐一‐一 ヴェルサイユ宮殿造営史概略
 四‐二 ヴェルサイユ宮殿「大使の階段」風景画
 四‐三 ルーヴル宮殿:グランド・ギャルリと地誌的風景画
 四‐四 ルイ十五世治下の〈フランスの港〉シリーズ
 四‐五 アカデミズムにおける風景画の位置
 小結

第五章 オスマン・トルコにおける風景画の展開 …蜷川順子
 五‐一 オスマンの挿絵入り書物における地誌的風景描写の登場
  五‐一‐一 宮廷における絵画制作
  五‐一‐二 十六世紀の地誌的風景描写
 五‐二 十七、十八世紀の地誌的風景画
 五‐三 トプカプ宮殿の風景壁画

第六章 空間の謳歌:トプカプ宮殿にみるオスマンの風景画
    …メルテム・オズカン・アルトゥノズ
 六‐一 オスマン帝国と絵画文化
 六‐二 オスマン帝国の絵画文化にみる空間の変化
 六‐三 トプカプ宮殿の風景画再訪
 小結

第七章 イランの絵画絨毯に織り込まれた地元の風景
    ―風景による地元のフレーミングに関する技術的側面の検討 …吉田 雄介
 七‐一 絵画絨毯のデザインに関する一考察 ―販売用のカタログの分析を中心に―
  七‐一‐一 カタログの分析
   七‐一‐一‐一 分析対象となるカタログ
   七‐一‐一‐二 各カテゴリーの特色
   七‐一‐一‐三 オリジナルの絵画作品と絨毯の違い
  七‐一‐二 風景カテゴリー
   七‐一‐二‐一 西洋風の風景
   七‐一‐二‐二 イラン風の風景
   七‐一‐三 小括
 七‐二 絵画絨毯について
  七‐二‐一 絵入り絨毯の歴史
   七‐二‐一‐一 技術的な制約
   七‐二‐一‐二 宗教的な制約
   七‐二‐一‐三 動物の柄、人物柄
  七‐二‐二 絨毯生産の根本的な変化
  七‐二‐三 サルドルード産地の変化
   七‐二‐三‐一 サルドルード地区
   七‐二‐三‐二 床敷絨毯
   七‐二‐三‐三 ホナル・バーフィー
   七‐二‐三‐四 ポスタル・バーフィー
   七‐二‐三‐五 タブロー絨毯
 七‐三 タブロー絨毯の製作工程
  七‐三‐一 タブロー絨毯の製作工程
   七‐三‐一‐一 原画の選択から織りの工程
    (a)原画、写真の選択 (b)フォトショップでの加工
    (c)染色用の指示書のプリントアウト
    (d)織りの指示書のプリントアウト (e)糸の準備
    (f)織機・織架の製造 (g)織りの道具の製造・調達
    (h)整経 (i)染色 (j)糸の準備 (k)織り
   七‐三‐一‐二 織り終わった後の工程
    (a)織り残した部分の製織 (b)織り間違いの修正
    (c)織りの長さの調整 (d)末端の緯糸通し
    (e)経糸の端を結ぶ (f)とじ糸 (g)織機からの切り離し
    (h)毛足の刈込 (i)クリーニング
    (j)陰影が出るように毛足の刈り込み
    (k)枠の製造・枠入れ (l)発送・販売
   七‐三‐二 風景画絨毯の「風景」をどう捉えるか?
    七‐三‐二‐一 はじめに
    七‐三‐二‐二 サルドルードのバーグチェ(果樹園)
    七‐三‐二‐三 風景画絨毯の分類と遠近法
    七‐三‐二‐四 風景の生成
 七‐四 おわりに

結びにかえて
初出一覧
文献一覧
挿図一覧
件名・地名索引
人名索引


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