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 住民参加型保全の逆説を乗り越える自然は誰のものか

アフリカ潜在力5
自然は誰のものか 住民参加型保全の逆説を乗り越える

太田 至:シリーズ総編者, 山越 言:編, 目黒 紀夫:編, 佐藤 哲:編
A5判 320ページ 上製
定価:3,700円+税
ISBN978-4-8140-0009-8 C1330
奥付の初版発行年月:2016年03月 / 発売日:2016年04月上旬

内容紹介

欧米の自然保護思想をそのままアフリカに持ち込んだトップダウンの保全策は、さまざまな対立をもたらす。それは、地域の人々とよそ者の対立であったり、自然の側に立つよそ者と人間の側に立つよそ者との対立であったり、地域住民のなかのさまざまなアクター間の争いであったりする。「住民参加型保全」は解決策たり得るか、その将来像を探る。

【推薦】山極壽一氏(京都大学 総長)
自然保護とは,自然に関する実像と虚像をめぐる人々の合意と了解のプロセスである。その主役は地元住民であり,その実践にはあらゆる学問を総動員する必要がある。それを私はゴリラの研究と保護から学んだ。本書はアフリカを舞台に今展開している保護の実態をフィールドワーカーの視点から語る最良の報告と新たな提案である。

著者プロフィール

太田 至(オオタ イタル)

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・教授
京都大学大学院理学研究科修了,理学博士。
主な著書に Displacement Risks in Africa(Kyoto University Press,共編著),『遊動民(ノマッド)』(昭和堂,共編著),『続・自然社会の人類学』(アカデミア出版会,共編著)など。

山越 言(ヤマコシ ゲン)

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・准教授
京都大学大学院理学研究科博士課程修了,京都大学博士(理学)。
主な著作に,『講座生態人類学8:ホミニゼーション』(共著,京都大学学術出版会)など。

目黒 紀夫(メグロ トシオ)

東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所・研究機関研究員
東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程単位取得退学,博士(農学)。
主な著作に,『さまよえる「共存」とマサイ―ケニアの野生動物保全の現場から』(新泉社),「野生動物保全が取り組まれる土地における紛争と権威の所在―ケニア南部のマサイランドにおける所有形態の異なる複数事例の比較」『アジア・アフリカ地域研究』14(2):210―243,「『共存』再考―東アフリカ2地域社会における人間―野生動物関係の分析から」『環境社会学研究』19:127―142(岩井雪乃との共著)。

佐藤 哲(サトウ テツ)

総合地球環境学研究所・教授
上智大学大学院理工学研究科博士課程修了,理学博士
主な著作に『フィールド・サイエンティスト: 地域環境学という発想』(東京大学出版会),『シリーズ環境政策の新地平8 環境を担う人と組織』(岩波書店,分担執筆),『日本のコモンズ思想』(岩波書店,分担執筆)。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序章 アフリカの自然は誰のものか―参加型自然保護活動の現状と将来像 [山越 言・目黒紀夫・佐藤 哲]

第1部 自然保護の歴史と現状

第1章 殺さない倫理と殺して守る論理―アフリカのスポーツハンティングを考える [安田章人]
   1 はじめに
   2 アフリカ大陸の自然の「発見」と「破壊」、そして「保護」
   3 住民参加型保全を支える野生動物観光の相克
    (一)サファリ/(二)スポーツハンティング
   4 おわりに
第2章 森の先住民、マルミミゾウ、そして経済発展と生物多様性保全の是非の現状 [西原智昭]
   1 森の先住民のつぶやき
   2 森と野生生物がなくなる―熱帯林伐採業
   3 森と野生生物はもどらなくなる―マルミミゾウの生存危機
   4 自然保護区存否の是非―昔と今
   5 森と森の先住民の行く末―経済発展と環境保全の狭間で
第3章 神聖な森と動物の将来―在来知と科学知の対話にむけて [山越 言]
   1 誰がアフリカの自然を守るのか
   2 アフリカの自然を守る在来知
   3 チンパンジーと共存する村ボッソウ
   4 チンパンジー研究者との遭遇
   5 ボッソウのチンパンジーの四〇年
   6 人馴れという原罪
   7 村人にとってのチンパンジー保全
   8 主体性と対話による将来

コラム1 都市に生きるヒョウとの共存―ナイロビ国立公園周辺住民へのケア [山根裕美]

第2部 住民参加型自然保護を問い直す

第4章 豊かなゆえに奪われる野生動物―タンザニアにおける住民参加型自然保護 [岩井雪乃]
   1 「住民参加型自然保護」をめぐる議論
    (一)「要塞型」から「住民参加型」へ/(二)「手段としての参加」と「目的としての参加」
   2 セレンゲティ地域における参加型自然保護プロジェクトの変化―肉から土地へ
    (一)保護区アウトリーチ型の事例―セレンゲティ地域保全プロジェクト(SRCP)
    (二)住民主体の保全型の事例―野生動物管理地域(WMA)
   3 「目的としての参加」への挑戦―エコミュニティ・タンザニア・プロジェクト
    (一)期待しすぎないようリスク説明の努力/(二)波乱のパトロールカー
   4 魅力的すぎるセレンゲティ
第5章 アフリカ熱帯雨林における文化多様性と参加型保全
    ―ふたつの自然保護区における地域社会の比較から [松浦直毅]
   1 アフリカ熱帯雨林における参加型保全の現状
   2 ふたつの調査地と地域住民
    (一)ガボン、ムカラバ・ドゥドゥ国立公園/(二)コンゴ民主共和国、ルオー学術保護区
    (三)ふたつの調査地の比較
   3 ふたつの調査地における保全と開発の実践
    (一)ガボン、ムカラバ・ドゥドゥ国立公園における事例
    (二)コンゴ民主共和国、ルオー学術保護区における事例
   4 おわりに
第6章 コミュニティ主体型共同管理という言説 [關野伸之]
   1 イブの死
   2 コミュニティ主体型自然資源管理と共同管理
   3 バンブーン共同体海洋保護区
   4 ないものとされた漁民の声
   5 濃淡の異なる「漁民」というアクター
   6 イブとジャン、そしてアイダー
   7 弱者の中の強者
   8 コミュニティ主体型共同管理のジレンマ
   9 だれの幸せを願うべきか―イブの目指したもの

コラム2 新しい保全のあり方とは―「参加型自然保護」のバリエーション [目黒紀夫]

第3部 自然保護の新たな潮流と将来像

第7章 新自由主義的保全アプローチと住民参加
    ―エチオピアの野生動物保護区と地域住民間の対立回避の技法 [西﨑伸子]
   1 ポスト「持続可能な開発」―市場原理への信望
   2 主流化する国際環境NGO
   3 新自由主義的保全アプローチの事例―国立公園の民営化
    (一)「抑圧された人々」とのパートナーシップの可能性
    (二)国際観光産業の進展とエコツーリズム開発 
    (三)エチオピア、ネチザル国立公園の民営化
   4 軽視される住民参加
    (一)保全論者の生産モードと遠ざかる現場/(二)ネチザル国立公園民営化の失敗
   5 対立回避の技法―交渉によるオルタナティブの提示
    (一)「住民参加」に向けた制度的整備/(二)保障される自然資源へのアクセス
   6 おわりに

コラム3 エボラ出血熱の流行で垣間見た自立 [森村成樹・山越 言・松沢哲郎]

第8章 マサイ・オリンピックの先には何がある?
    ―ケニア南部における「コミュニティ主体の保全」の半世紀 [目黒紀夫]
   1 半世紀にわたる「コミュニティ主体」の経験から考える
   2 サバンナに生きるマサイ
    (一)マサイ社会のあらまし/(二)アンボセリ地域の特徴
   3 アンボセリ地域における野生動物保全とマサイのせめぎあい
    (一)植民地ケニアにおけるマサイと野生動物のかかわりの変遷
    (二)国家主導のCBCへの地域社会の対応/(三)伝統文化をめぐるNGOと地域社会の駆け引き
   4 マサイ・オリンピックの理想と熱狂
    (一)マサイ・オリンピックが目指すもの/(二)マサイ・オリンピックのプログラム
    (三)第二回マサイ・オリンピックの当日の様子
   5 「コミュニティ主体」の野生動物保全の今後と地域社会の「潜在力」
    (一)マサイ・オリンピックの特徴/(二)青年たちにとってのマサイ・オリンピックの意味
    (三)マサイ・オリンピックから透かし見る今後の課題

コラム4 アフリカ自然保護研究三〇年 [小林聡史]

終章 自然保護活動の実践におけるアフリカ潜在力の在処とその行方西原智昭 [佐藤 哲・目黒紀夫・山越 言]
   1 アフリカ自然保護の歴史的背景と現状
   2 住民参加型保全の登場と主体性のありか
   3 「住民参加」が開いた対話の場
   4 「わたしたち」に何ができるか

索引


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