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比較の視座から「国家総動員」の時代

「国家総動員」の時代 比較の視座から

A5判 432ページ 上製
価格:5,940円 (消費税:540円)
ISBN978-4-8158-0975-1 C3031
奥付の初版発行年月:2020年01月 / 発売日:2020年01月中旬

内容紹介

第一次大戦後、大正デモクラシー下の日本において模索された民間主体の国家総動員構想を解明、同時代の英米で展開された政策も初めて精査して、その驚くべき重なりを跡づける。ファシズムや軍部独裁をその必然的帰結とみなす通説を大きく書き換え、近代史理解の新たな地平を拓く。

前書きなど

「国家総動員」の登場
本書は、第一次世界大戦後から国家総動員法に至るまでの日本の国家総動員体制の形成過程について、アメリカやイギリスとの比較を通して検討し、その世界史的意義を明らかにするものである。

まず国家総動員とは何か。そして、国家総動員はいつどのように登場し、日本に知られることとなったのか。以下に、その基本的な経過を素描しておこう。

一九一四年六月二八日のサライェヴォ事件を受けて、オーストリア=ハンガリー帝国が七月二八日にセルビアに宣戦布告すると、セルビアを支援するロシア帝国は動員を開始した(七月三〇日)。それが、ドイツ帝国によるロシア帝国への最後通牒、そして宣戦布告(八月一日)、露仏同盟を背景とするフランスへの宣戦布告(八月三日)、さらにドイツによる中立国ベルギーへの進攻(八月四日)、イギリスの対独宣戦布告(八月四日)へと次々に連鎖し、第一次世界大戦が始まった。

二正面作戦を回避するためのシュリーフェン・プランを擁するドイツはパリを目指すも、マルヌ会戦でフランス軍の反攻によって撤退を余儀なくされた(九月九日)。ドイツは一方の東部戦線において、ロシアをタンネンベル……

[「序章」冒頭より/注は省略]

著者プロフィール

森 靖夫(モリ ヤスオ)

1978年 兵庫県に生まれる
2008年 京都大学大学院法学研究科博士課程修了
現 在 同志社大学法学部准教授、博士(法学)
著 書 『日本陸軍と日中戦争への道』(ミネルヴァ書房、2010年)
    『永田鉄山』(ミネルヴァ書房、2011年)他

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

凡例

序章 「国家総動員」競争の時代

第I部 戦間期アメリカ・イギリスの「国家総動員」準備

第1章 アメリカにおける「国家総動員」準備の展開
1 アメリカの「国家総動員」準備の展開 1920~39年
2 1920年代における「国家総動員」プランナーのねらい
3 軍と産業の協働――陸軍兵器協会の活動

第2章 アメリカが見た日本の「国家総動員」準備
1 「国家総動員」準備の始まり
2 資源局設置と「国家総動員」準備
3 国家総動員法の成立

第3章 イギリスにおける「国家総動員」準備の展開
1 戦間期イギリス軍内部に拡がる次期「総力戦」論
2 戦間期イギリスの「国家総動員」準備 1924~39年

第4章 イギリスが見た日本の「国家総動員」準備
1 日本の国家総動員準備を観察するイギリス
2 イギリスが見た世界の産業動員準備

第II部 日本の「国家総動員」準備

第5章 第一次世界大戦と「国家総動員」の発見
1 軍需工業動員法の成立
2 シヴィリアンたちの国家総動員論
3 1920年代日本陸軍の国家総動員論――永田鉄山と世界的潮流

第6章 資源局の成立
1 松井春生の国家総動員体制構想
2 もの言う実業家たち――資源審議会の意義

第7章 資源局と国家総動員準備の展開
1 国家総動員計画の展開
2 「松井構想」の修正
3 資源局が目指した国家総動員のモデル 1931~37年

第8章 日中全面戦争と国家総動員法への道
1 陸軍はなぜ国家総動員を必要としたのか
2 松井春生と日中戦争
3 国家総動員法への道

終章 「国家総動員」とは何だったのか


付録
産業動員計画(アメリカ)
有事権限法(イギリス)
日本の国家総動員に関する諸法令
あとがき
図表一覧
索引


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