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 日本映画と照明影の美学

影の美学 日本映画と照明 THE AESTHETICS OF SHADOW

A5判 374ページ 上製
定価:5,400円+税
ISBN978-4-8158-0951-5 C3074
奥付の初版発行年月:2019年06月 / 発売日:2019年06月中旬

内容紹介

光と影から見た日本映画史――。それは伝統ではなかった! 『陰翳礼讃』以前、日本映画は「明るさ」に価値を求めていた。では「影の美学」はどのように現れ、展開し、伝統となったのか。照明のテクノロジーに注目し、トランスナショナルな視点から新たな日本映画史を描く。

前書きなど

「日本人が長い年月をかけて創造してきた「陰翳の美学」は社会の風潮がどうであれ、私達の体質の奥深いところにじっと潜んでいるのに違いない。私たちはその奥深いところから潜んでいる「陰翳の美学」を抽出し、正しく理解、把握して日本映画の創造にとりくんで行きたい」。

『映画照明』一九七九年八月号に掲載された、松竹の美術監督・芳野尹孝の言葉である。

映画は光と影のメディアである。映画は、光がなくては存在することができない。プロジェクターからの光線が、セルロイド・フィルムを通り抜け、スクリーンに影を映し出すとき、映画は初めて現れる。フィルムに撮影されたイメージもまた、光と影によって作り出されたものだ。デジタル・カメラでさえ、撮影のために光を必要とする。だから、日本映画の美術監督が照明の重要性を説いても、それはまったく驚くべきことではない。興味深いのは、芳野が影だけを特に強調していることである。「日本映画の創造」のために、彼がとても重要だと信じている「陰翳の美学」とは、一体何なのだろうか。

芳野の言葉は、実は谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』(一九三三年一二月から三四年一月にかけて発表された)を忠実に繰り返したものである。谷崎は、日本の建築について、「畢竟それは陰翳の魔法であつて、もし隅々に作られている蔭を追い除けてしまつたら、忽焉としてその床の間は唯の空白に帰するのである。われらの祖先の天才は、虚無の空間を任意に遮蔽して自ら生ずる陰翳の世界に、いかなる壁画や装飾にも優る幽玄味を持たせたのである」と論……

[「序 章 影の美学とは何か」冒頭より/注は省略]

著者プロフィール

宮尾 大輔(ミヤオ ダイスケ)

1970年 東京都に生まれる
2003年 ニューヨーク大学大学院映画学科博士号(Ph.D)取得
現 在 カリフォルニア大学サンディエゴ校教授
著 書 Sessue Hayakawa: Silent Cinema and Transnational Stardom
    (Duke University Press, 2007)、
    『映画はネコである――はじめてのシネマ・スタディーズ』
    (平凡社、2011年)など

笹川 慶子(ササガワ ケイコ)

現 在 関西大学文学部教授、博士(文化交渉学、関西大学)
主 著 『近代アジアの映画産業』(青弓社、2018年)他

溝渕 久美子(ミゾブチ クミコ)

現 在 同朋大学他非常勤講師
主論文 「戦時下の映画脚本の懸賞と動員――第1回「国民映画脚本募集」と小糸
    のぶをめぐって」『JunCture 超域的日本文化研究』第5号、2014年他

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 章 影の美学とは何か

第1章 照明と資本主義
 ―松竹とハリウッド―
ハリウッドから来た男
蒲田調とパラマウント調
――ラスキー・ライティングからスリーポイント・ライティングへ
『情の光』
見やすさと表現の豊かさ――新派とハリウッド
「一ヌケ」のスローガンと蒲田調
合理化――松竹の資本主義と近代化
スターの照明法

第2章 刀の閃きとスターの輝き
 ―松竹と時代劇―
時代劇の誕生と刀の閃き
伊藤大輔の時代劇
明るく楽しい松竹時代劇映画
林長二郎、彗星の如く現る――時代劇と女性観客
セクシーな時代劇映画へ――新しいプロモーションと照明
対話とフォトジェニー
――林長二郎のスター・イメージと新しい映画観客

第3章 ストリート映画
 ―松竹とドイツ―
『十字路』――松竹の「不純な調和」、時代劇、そしてストリート映画
光で殺す
蒲田の街
発光する手
視覚について
視覚の光と触覚の光
蒲田調の復活

第4章 影の美学
 ―松竹、東宝、日本―
闇の奥へ――林長二郎から長谷川一夫への変身
黒の凱歌――『婦系図』と『川中島合戦』
ハリウッド映画のロー・キー・ライティングの賞賛
写実的精神と日本の崇高
“ハリー”・三村明――ハリウッド帰りの東宝の男

終 章 宮川一夫の映画撮影
日本の美を伝える
「影の美学」実現――第二次世界大戦期
「影の美学」再検討第二次世界大戦後
日本映画と照明


あとがき
参考文献
図版一覧
索 引


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