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 森の中のシカをめぐる生物間相互作用大台ケ原の自然誌

大台ケ原の自然誌 森の中のシカをめぐる生物間相互作用

柴田 叡弌:編著, 日野 輝明:編著
A5 328ページ
定価:3,500円+税
ISBN978-4-486-01830-8 C3045
奥付の初版発行年月:2009年07月

内容紹介

本書では,大台ヶ原で長年調査を行ってきた著者たちが,シカをめぐる生物間の相互作用ネットワークを明らかにし,それをもとに森林生態系の再生を考える。「崩壊の危機にある大台ケ原の森はよみがえるか?」


目次

口絵    v
はじめに  xvii

第I部 大台ヶ原の自然環境
第1章 大台ヶ原の植生とその現状
 1.はじめに
 2.植生の基盤としての物理環境
 3.大台ヶ原の植生の現状
 4.変化する大台ヶ原の植生
第2章 大台ヶ原の植生の歴史
 1.近畿地方太平洋側地域における植生変遷
 2.大台ケ原における植生変遷
 3.林分構造からみた七ツ池の森林の変化
 4.過去30年間の正木ヶ原ミヤコザサ群落の景観的変化
第3章 大台ケ原のユニークな昆虫類
 1.大台ケ原を舞台としたこれまでの昆虫研究
 2.昆虫相の特徴
 3.自然再生事業と昆虫調査
 4.大台ケ原における昆虫調査研究の今後
第4章 大台ケ原の哺乳類相とその現状
 1.はじめに
 2.かつての大台ケ原の哺乳類相
 3.近年の哺乳類相調査
 4.カメラトラップ法による哺乳類相の調査
 5.何が明らかになったか?
 6.まとめ
第5章 大台ケ原のニホンジカ
 1.シカの数の数え方
 2.ニホンジカとはどんな生き物なのか?
 3.シカの数を数える――区画法の実施――
 4.大台ケ原のシカの数
 5.シカの土地利用状況を探る

第II部 シカが森林植生におよぼす影響
第6章 シカが森を食う
 1.大台ケ原の現状
 2.剥皮――シカが木の皮を食べる
 3.剥皮の被害
 4.シカはどのようにして剥皮しているのか
 5.剥皮の実態が示す意味は?
 6.剥皮、枯死、そのあとに・・・
 7.森林衰退の悪循環
 8.ササ草原のままなのか
第7章 シカはなぜ樹皮を食べるのか
 1.シカの餌の食べ方
 2.シカの食事情
 3.シカはどんな樹種を好んで剥皮をするのだろう?
 4.シカはなぜ樹皮を食べるのだろうか?
 5.剥皮の発生要因にはどんなものがあるか?
 6.ミヤコザサが先か剥皮が先か
第8章 シカによる樹幹剥皮が種子生産、成長、風倒におよぼす影響
 1.はじめに
 2.シカによる樹幹剥皮がトウヒの球果生産におよぼす影響
 3.シカによる樹幹剥皮がトウヒの肥大成長におよぼす影響
 4.シカによる樹幹剥皮が針葉樹の風害発生におよぼす影響
第9章 食われると姿を変えるササ
 1.大台ケ原のササ草原
 2.防鹿柵とミヤコザサ
 3.ミヤコザサ
 4.ミヤコザサの形態を調べる
 5.台風の襲来
 6.ミヤコザサの回復力
 7.生き方のちがいが運命をわける――大台ケ原のササ2種
 8.ミヤコザサの戦略:耐え忍んで生きのびる
第10章 シカの採食によるササ現存量の変化
 1.はじめに
 2.調査方法
 3.地上部現存量の復元
 4.地上部における越冬部と当年部
 5.地上部と地下部への現存量の配分
 6.同化器官と非同化器官への現存量の配分
 7.現存量の配分からみたミヤコザサの生存戦略
第11章 シカの影響の有無によるササの光合成能力の変化
 1.大台ケ原のササとの出会い
 2.正木峠防鹿柵内外のササの比較
  ――サイズ、窒素含量、光合成能力の変化――
 3.防鹿柵内外のササの性質のちがいは、シカの影響の有無に対する反応である
 4.植物体サイズ、窒素含量、および光合成能力の変化の要因に関する作業仮説
 5.シカが植物体サイズにおよぼす影響
 6.植物体サイズが窒素濃度におよぼす影響
 7.窒素含量が光合成能力におよぼす影響
 8.連鎖反応仮説の意味と課題
 9.連鎖反応仮説の課題1――変化の持続性の問題――
 10.連鎖反応仮説の課題2――変化の方向性の問題――
 11.おわりに――柵を通してみたシカとササの関係――
第12章 ミヤコザサ草原の拡大
 1.大台ケ原のミヤコザサ草原
 2.空中写真からミヤコザサ草原の拡大状況を調べる
 3.ミヤコザサ草原の拡大とシカとの関係を考える
 4.ミヤコザサ草原の今後
第13章 防鹿柵設置による林床の変化が樹木の更新に影響する
 1.はじめに
 2.防鹿柵と調査方法
 3.13年間の防鹿柵の採食防止効果
 4.防鹿柵の設置によって変化した林床の状態と針葉樹実生の発生との関係
 5.まとめと提案
第14章 トウヒの更新は林床微地形が鍵
 1.トウヒ
 2.トウヒの更新敵地
 3.シカの増加にともなうトウヒ林の変化
 4.トウヒ稚樹に対する防鹿柵の効果
 5.柵内のササ原における林床微地形の有効性
 6.おわりに
第15章 シカとササは樹木の更新にどのように影響するか
 1.森林の更新
 2.ササと更新 
 3.シカとササの相互作用による実生の生存への影響
 4.ササが実生におよぼす影響
 5.相互作用を考慮した森林の回復手法
第16章 シカがササを食べると森林土壌はどうなるか
 1.はじめに
 2.シカがいると窒素の動きが変わる
 3.シカがいると土壌やリターが動きやすくなる
 4.土壌の温度や水分環境が変わる

第III部 シカによる森林改変が動物におよぼす影響
第17章 シカがササを食べると針の短い寄生蜂が得をする
 1.生物間相互作用による間接効果
 2.草食動物の採食とゴール形成昆虫についての間接効果の研究例
 3.登場昆虫の紹介
 4.シカの採食が間接的にゴールサイズを小さくする
 5.シカの採食がヒメコバチの寄生率を上げ、コブタマバエの生残率とオナガコバチの
  寄生率を下げる
 6.柵内では幅の大きなゴールでヒメコバチがみられなかった
 7.ヒメコバチの産卵管は短い
 8.ヒメコバチの羽化時期はもっとも遅い
 9.シカの採食がヒメコバチのひとり勝ちを演出している
 10.コブタマバエと2種の寄生蜂の共存のために
第18章 シカがササを食べると地表性節足動物の顔ぶれが変わる
 1.なぜ地表性捕食者を研究するのか
 2.実験区の概要と調査方法
 3.フェンスの影響 
 4.オサムシ科甲虫におけるミヤコザサ現存量の影響
 5.地表性クモ類におけるササ現存量の影響
 6.イサムシ科甲虫と地表性クモ類の多様性を高めるために
第19章 糞虫群集の多様性におよぼすシカの間接的影響
 1.はじめに
 2.調査の概要
 3.糞虫群集の種構成
 4.糞虫群集の多様性
 5.シカの糞供給量と糞虫固体数
 6.まとめ
第20章 シカの生息が土壌動物群集におよぼす影響
 1.はじめに
 2.調査方法 
 3.土壌動物の密度
 4.ササラダニ類の種多様性
 5.まとめ
第21章 シカによる森林改変が鳥群集を変える
 1.はじめに  
 2.多様性の低い鳥群集
 3.シカが鳥の「すみか」を変える
 4.鳥にとってのシカ密度
第22章 防鹿柵は野ネズミを増加させトウヒの更新を妨げる
 1.はじめに
 2.防鹿柵が野ネズミにおよぼす影響
 3.野ネズミによるトウヒ種子の捕食
 4.防鹿柵とトウヒの更新

第IV部 森林生態系の再生にむけて
第23章 森林生態系保全再生の取り組み
 1.大台ケ原の森林の大切さ
 2.大台ケ原の森林衰退の経緯
 3.大台ケ原における保全対策の歴史
 4.大台ケ原における自然再生の考え方
 5.森林再生のための更新課程の検証
 6.大台ケ原における森林再生の目標
 7.大台ケ原の森林再生のための実証実験の実施
 8.順応的な管理のためにモニタリングの実施
第24章 シカの保護管理計画
 1.特定鳥獣保護管理制度
 2.保護管理計画策定の背景
 3.環境省のシカ保護管理への取り組み
 4.保護管理の目的および目標
 5.計画対象地域
 6.大台ケ原のニホンジカの生息状況
 7.計画管理の実施方法
 8.モニタリング調査
 9.最後に
第25章 シカとササの相互作用の動態にもとづく森林生態系管理
 1.大台ケ原のシカの固体数変化のこれまで
 2.大台ケ原のササ現存量の変化のこれまで
 3.大台ケ原のシカの分散の可能性
 4.シカとササとの切っても切れない関係
 5.シカとササと生物多様性
 6.シカとササの相互作用にもとづく森林再生
 7.今後望まれる調査研究
引用文献
あとがき
索引


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