森棲みの社会誌 アフリカ熱帯林の人・自然・歴史 II
価格:5,170円 (消費税:470円)
ISBN978-4-87698-953-9 C3039
奥付の初版発行年月:2010年03月 / 発売日:2010年03月中旬
近代化の波のなかでアフリカの森はどう変わったか。そこに暮らしてきた狩猟採集民たちは定住化を迫られ、農耕民とともに市場経済に呑み込まれてゆく。「森の文化」も大きく変容しつつある。40年以上、数十人にのぼるフィールドワーカーが、生態人類学研究を総括し、グローバル化のなかで地域社会が独自性を保持してゆく道を探る。
木村 大治(キムラ ダイジ)
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科准教授
1960年生まれ,京都大学大学院理学研究科博士課程修了,理学博士。
主な著書に,『ヒトの自然誌』(平凡社,共著),『人間性の起源と進化』(昭和堂,共著),『共在感覚—アフリカの二つの社会における言語的相互行為から』(京都大学学術出版会)。
北西 功一(キタニシ コウイチ)
山口大学教育学部准教授
1965年生まれ,京都大学大学院理学研究科博士後期課程修了,博士(理学)。
主な著書に,『森と人の共存世界』(京都大学学術出版会,共著),『平等と不平等をめぐる人類学的研究』(ナカニシヤ出版,共著)。
目次
巻頭図
まえがき
第Ⅰ部 総 説
第1章 アフリカ熱帯林の社会(1)—中部アフリカ農耕民の社会と近現代史— [小松かおり]
1—1 熱帯雨林の住人たち
1—2 バントゥー系言語集団の起源と森林への移動
1—3 西バントゥー諸社会の特質
1—4 社会の多様な展開
1—5 ヨーロッパの到来と大西洋交易
1—6 植民地下の社会
1—7 独立後の社会体制
1—8 紛争とエスニシティ
第2章 アフリカ熱帯林の社会(2)—ピグミーと農耕民の関係— [北西功一]
2—1 支配と従属vs. 協力 搾取vs. 相互依存
2—2 「ピグミー」とは?
2—3 言 語
2—4 生態学的,経済的な関係
2—5 社会的な関係
2—6 今後の課題
第3章 ピグミー系狩猟採集民における文化研究 [都留泰作]
3—1 エスノ・サイエンス
3—2 遊びへのまなざし
3—3 社会的心性
第4章 アフリカ熱帯林における宗教と音楽 [分藤大翼]
4—1 ピグミーの歌と踊り
4—2 「発見」された人びと
4—3 「発見」された世界観
4—4 森と人と精霊
4—5 音(楽)と精霊
4—6 農耕社会の儀礼研究
4—7 かわること,かわらないこと
第5章 農耕民と狩猟採集民における相互行為研究 [木村大治]
5—1 アフリカ熱帯林における相互行為研究の源流
5—2 研究史と本書の論文の位置付け
第Ⅱ部 バントゥーの社会
第6章 熱帯雨林のローカル・フロンティア
—コンゴ共和国北部,バントゥー系焼畑農耕民の事例— [塙狼星]
6—1 分節社会と「部族」社会
6—2 移動と移住の歴史
6—3 家族的な社会編成
6—4 焼畑農耕と集団編成
6—5 中部アフリカにおけるローカル・フロンティアの社会像
第7章 森の「バカンス」
—カメルーン東南部熱帯雨林の農耕民バクウェレによる漁撈実践を事例に— [大石高典]
7—1 はじめに
7—2 調査地と人びとの概要
7—3 バクウェレによる漁撈実践
7—4 漁撈キャンプにおける社会関係の諸相
7—5 考察:森棲み感覚と「バカンス」
第8章 中部アフリカ熱帯雨林カカオ生産における労働力利用
—カメルーン南部に暮らすバントゥー系農耕民ファンを事例として—[坂梨健太]
8—1 中部アフリカの労働力問題
8—2 ファンの経済活動
8—3 世帯外からの労働力確保
8—4 カカオ収穫期における労働実態
8—5 カカオ生産と熱帯雨林
Field essay 1 イトゥリの森の3兄弟 [市川光雄]
第Ⅲ部 ピグミーと隣人たち
第9章 ピグミーと農耕民の民族関係の再考
—ガボン南部バボンゴ・ピグミーと農耕民マサンゴの「対等な」関係— [松浦直毅]
9—1 一風変わったピグミーとの出会い
9—2 ピグミーと近隣農耕民の関係
9—3 バボンゴとマサンゴの関係
9—4 関係形成の過程
9—5 なぜ「対等な」関係が築かれてきたのか
第10章 森の民バカを取り巻く現代的問題 —変わりゆく生活と揺れる民族関係— [服部志帆]
10—1 うつろな眼差し
10—2 調査地と方法
10—3 バカの生活とその変容
10—4 外部社会との関係
10—5 変わりゆく生活と揺れる民族関係
第11章 カメルーン熱帯雨林地帯の「障害者」
—身体障害を持つ人びとの生活実践とその社会的コンテクスト— [戸田美佳子]
11—1 「隠された障害者」という神話
11—2 調査地域に暮らす人びと
11—3 身体障害者の生活実践とその社会的コンテクスト
11—4 考察
Field essay 2 仲なおりの魔法 [服部志帆]
第Ⅳ部 相互行為の諸相
第12章 バカ・ピグミーは日常会話で何を語っているか [木村大治]
12—1 フィールドにおける会話分析
12—2 狩猟採集民的心性
12—3 他者たちとの関係
12—4 会話から覗く社会
第13章 所有者とシェアリング —アカにおける食物分配から考える— [北西功一]
13—1 狩猟採集民の所有・分配・平等の研究における課題
13—2 調査地とそこに住む人びと
13—3 食物分配における所有者の役割
13—4 シェアリングと平等
13—5 物のやりとりとその解釈
13—6 今後の課題
第14章 「子どもの民族誌」の可能性を探る —狩猟採集民バカにおける遊び研究の事例— [亀井伸孝]
14—1 「子どもの民族誌」は可能か
14—2 子どもという「異民族」に出会う
14—3 バカの子どもたちの遊びの実際
14—4 子どもの民族誌の視点と技法
14—5 子どもの民族誌から多様なサブグループの民族誌へ
第15章 ピグミー系狩猟採集民バカにおける歌と踊り —「集まり」の自然誌に向けて— [都留泰作]
15—1 「規範なき社会」でヒトはなぜ集まるのか?
15—2 バカの「ベ」と社会的背景
15—3 「ベ」の比較分析
15—4 「個のコネクション」が集団を産出する?
Field essay 3 音響空間としての森と子どもたち [矢野原佑史]
第Ⅴ部 見えない世界
第16章 音声の優越する世界
—仮面結社の階梯と秘密のテクスト形態— [佐々木重洋]
16—1 熱帯雨林における生活と人間の五感
16—2 クロス・リヴァー諸社会の「豹」結社
16—3 「豹」結社における階梯と秘密のテクスト形態
16—4 音声の優越,生態環境としての熱帯雨林
16—5 熱帯雨林におけるコミュニケーション形態
16—6 視覚の制限と想像力
16—7 音声の優越する世界
第17章 エフェにおける死生観の変遷を考える [澤田昌人]
17—1 死後の世界
17—2 死者との距離
17—3 死生観のゆくえ
17—4 死生観の激変
あとがき
引用文献