アルテ・ポーヴェラ 戦後イタリアにおける芸術・生・政治
価格:5,940円 (消費税:540円)
ISBN978-4-7664-2318-1 C3070
奥付の初版発行年月:2016年03月 / 発売日:2016年03月下旬
戦後イタリアの芸術運動「アルテ・ポーヴェラ」とはいったい何だったのか?
その政治性、前衛性、今日的意義を問いなおす。
▼「貧しい芸術」を意味する「アルテ・ポーヴェラ(Arte povera)」は、1960年代末イタリアに興った芸術運動であり、一群の芸術家たちのゆるやかな結びつきを指す。
かれらは、新聞紙や布きれ、木材、鉄、石、果物など、日常的で粗末な素材を好んで用い、完成されたオブジェとしての作品以上に、しばしば作品のコンセプトや制作プロセスを重視した。
▼美術史において、コンセプチュアル・アートやランド・アートと並ぶ、ポスト・ミニマリズムの一潮流として認識されるアルテ・ポーヴェラは、近年、歴史的位置づけがおこなわれるなかで、20世紀の進歩と消費の神話に対抗する、理念的かつ革命的力を持った、清貧主義の運動だと再評価されることも多い。
▼本書では、ミケランジェロ・ピストレット、ジュリオ・パオリーニ、 ヤニス・クネリス、ジュゼッペ・ペネーノ、ルチアーノ・ファブロ、ピーノ・パスカーリ、 ジュゼッペ・ペネーノなどの作品をとりあげ、アルテ・ポーヴェラの歴史を辿りつつ、この芸術運動の意義を再検討することを試みる。個々の芸術家の作品を、地理的・政治的観点から捉えなおし、ゆるいつながりであった一連の活動の輪郭を浮かび上がらせる力作。
池野 絢子(イケノ アヤコ)
京都造形芸術大学芸術教養学科専任講師。
2005年、京都大学総合人間学部人間学科卒業。2007年、京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程修了。2007年より平和中島財団奨学生としてトリノ大学文学・哲学部に2年間在籍。2012年、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程研究指導認定退学。2012年より日本学術振興会特別研究員(PD)を経て現職。分担執筆に岡田温司編『ジョルジョ・モランディの手紙』、みすず書房、2011年。主要論文に、「石膏像の記憶 ── 一九七〇年代のイタリア美術における形而上絵画の系譜」、『表象』、第6号、2012年など。
目次
序 論
第一章 否定の力 ―― 芸術、テクノロジー、マスメディア
1 アルテ・ポーヴェラの誕生
2 ジェルマーノ・チェラントの批評戦略
3 マスメディアとイメージ
4 「あべこべの反映」 ―― ミケランジェロ・ピストレット「鏡絵
画」におけるスペクタクルの両義性
第二章 トリノの地政学
1 ブリコラージュ ―― 素材と行為
2 居住空間と都市空間
3 デポジト・ダルテ・プレゼンテ
4 「同逸名」 ―― アリギエロ・ボエッティによる地図製作の方法
第三章 実践のパラダイム
1 作用=行為
2 言説のポリティクス
3 ポイエーシスとプラクシス
4 イメージの「作者たち」 ―― ジュリオ・パオリーニの初期作品を
めぐって
第四章 前衛以後の古典主義 ―― 1970年代の転回
1 アルテ・ポーヴェラ以後
2 破壊される石膏像 ―― ヤニス・クネリスにおける「イコノクラス
ム」
3 反復する石膏像 ―― ジュリオ・パオリーニと「シミュラークル」
4 石膏像と古典主義 ―― ジョルジョ・デ・キリコと形而上絵画の系
譜
第五章 更新されるアルテ・ポーヴェラ ―― 1980年以降の受容
1 「ノット・アート」 ―― 歴史化と再解釈
2 ミュージアムの論理
3 再制作 / 再構築(不)可能性
4 歴史的庭園と「開かれた修復」 ―― ジュゼッペ・ペノーネ《流形
彫刻の庭園》
結 論
註
あとがき
関連展覧会出展作品リスト・主要著作目次
関連年表 1962―72年
参考文献
図版リスト
人名索引