ものの人類学
価格:4,620円 (消費税:420円)
ISBN978-4-87698-996-6 C3039
奥付の初版発行年月:2011年03月 / 発売日:2011年03月下旬
人を動かすのはモノである。だからこそ、いわゆる物質文化研究ではない、真に【モノを主人公にした】人間中心主義を 越えた人類社会論を構 築するのだ。熟練の逆説/ものの介入/記号的なものの物質性/アフォーダンス等々——音や会話といった事象をも対象に斬新な方法・ 視点と溌剌とした議論で、新しい人類学を拓く秀作。
目次
プロローグ(口絵写真):ものをして語らせよ
序章:なぜ「もの」の人類学なのか? [床呂郁哉・河合香吏]
第Ⅰ部 「もの」の生成・消滅・持続
1章 かたち・言葉・物質性の間
—陝北の剪紙が現れるとき [丹羽朋子]
Key Words:陝北の剪紙,「もの」の現れ,感性的経験,記号的なものの物質性,反復と創造
2章 潜むもの,退くもの,表立つもの
—会話におけるものと身体の関わり [菅原和孝]
Key Words:対面相互行為,ものの介入,アフォーダンス,資源,直示
第Ⅱ部 「もの」と環境のネクサス
3章 「もの」の御し難さ
—養殖真珠をめぐる新たな「ひと/もの」論 [床呂郁哉]
Key Words:真珠,熟練の逆説,自然(環境)の御し難さ,「もの」との対話
4章 土器文化の「生態」分析
—粘土から「もの」へ [印東道子]
Key Words:土器技術,技術変化,生態環境,技術適応,知識の身体化
エッセイⅠ 現れる「もの」
1 名前がかたちを得る場:
ものと経験を動員するジャワバティックの伝統文様 [佐藤純子]
2 カシュタが人を動かす:ウズベク刺繍がもつ「もの」の力 [今堀恵美]
3 ものと人の関係性の「遊び」:
バナナと人間は依存しあっているか? [小松かおり]
第Ⅲ部 「もの」と身体のダイナミクス
5章 土器つくりを知っている
—エチオピアの女性土器職人の「手」と技法の継承 [金子守恵]
Key Words:エチオピア,土器,女性職人,身体技法,技法を獲得する過程
6章 男性身体と野生の技法
—強精剤をめぐる自然・もの・身体 [田中雅一]
Key Words:漢方,生命主義,広告,セックス,ゲテモノ
エッセイⅡ 妖(怪)しい「もの」
1 パゴダと仏像のフェティシズム [土佐桂子]
2 身体から吸い出される「もの」:
ラダックのシャーマニズム儀礼より [宮坂 清]
第Ⅳ部 「もの」のエージェンシー
7章 仮面が芸能を育む
—バリ島のトペン舞踊劇に注目して [吉田ゆか子]
Key Words:仮面,物性,芸能,もの中心の記述,ものらしくないもの
8章 「生きる」楽器
—スリンの音の変化をめぐって [伏木香織]
Key Words:インドネシア,バリ・ガムラン,楽器,音の変化,音の「もの」性
9章 ものが見せる・ものに魅せられる
—インドの占い師がもたらす偶然という「運命」 [岩谷彩子]
Key Words:占い,偶然性,インデックス,ナイカン,チョーディ
エッセイⅢ 揺らぐ「もの」
1 グローバル化するアボリジニ絵画,ローカル化する「芸術」 [窪田幸子]
2 太平洋諸島移民アーティストの身体と芸術のかたち [山本真鳥]
3 ほんものであり続けること:
「紅型」と「琉球びんがた」のあいだ [村松彰子]
第Ⅴ部 新たな「もの」論へ
10章 道具使用行動の起源と人類進化
[山越 言]
Key Words:チンパンジー,アフリカ,霊長類,二足歩行,採食技術
11章 霊長類世界における「モノ」とその社会性の誕生
[黒田末寿]
Key Words:霊長類,手,スガリ,モノの社会化,平等原則
12章 身体と環境のインターフェイスとしての家畜
—ケニア中北部・サンブルの認識世界 [湖中真哉]
Key Words:インターフェイス,身体の拡張,アフォーダンス,擬家畜化,隠喩的思考
13章 チャムスの蝉時雨
—音・環境・身体 [河合香吏]
Key Words:牧畜民チャムス,単独行動による放牧,音環境,ひとりであること,音の「もの」性
エピローグ:意志なき石のエージェント性
—「もの」語りをめざして [内堀基光]
あとがき