メディア スポーツ 20世紀 スポーツの世紀を築いたのは、スポーツかメディアか
価格:1,650円 (消費税:150円)
ISBN978-4-87354-730-5 C3036
奥付の初版発行年月:2021年03月 / 発売日:2021年03月中旬
日本のスポーツはメディア、とりわけ新聞社が作り、発展させたのだ、とはよく言われる。確かに「甲子園野球」は朝日新聞が作った。プロ野球は読売新聞が作ったことはよく知られている。しかし、もっと前から、日本における様々なスポーツの発展に、新聞社は最初から大きくかかわっていた。さらに、新聞社だけではなく、電鉄会社もそこに深くかかわっていたのである。
本書は、20世紀の身体とスポーツが、メディアとのかかわりにおいていかに誕生し成長していったのかの物語である。以下の章立てのように、5つの事例を取り上げて考察している。
第1章 新聞事業としてのマラソン大会の誕生
第2章 二つのオリンピックのはざまで
第3章 阪神電鉄開業時の郊外開発とメディアスポーツ
第4章 ラジオ体操の誕生
第5章 メディア・イベントとしてのマナスル初登頂
ただ、本書の大半は20世紀の初頭に展開された新聞事業にかかわっている。第1章では、新聞事業としてスポーツ大会の開催し大阪毎日新聞(以下、大毎)のスポーツ事業の展開に焦点を当てつつ、それらのスポーツ事業としてのマラソン大会が大毎主催で開催される経過を電鉄の郊外戦略を絡めつつ明らかにする。第2章では、マラソン大会の成功に力を得て、大毎がオリンピックは感に関心を持ちながらも東洋オリンピック(極東競技大会)への関与を強めて経過を明らかにしている。第3章では、日本最初の都市間電鉄、阪神電鉄の立場から、阪神電車と新聞社がスポーツや余暇生活のためのスペースづくりを推進した経過を明らかにしている。
第4章では、新聞事業とは別に20世紀前半、ラジオが日本人の身体と健康に大きくかかわった「イベント」としてラジオ体操を取り上げる。ただし、この現象も、前半で展開する新聞社によるスポーツ事業の積み上げによるスポーツへの関心、身体への関心の中で生まれたものとして考察している。
最後の第5章のマナスル登頂は、戦後日本の復興と、新生日本を象徴する「メディア・イベント」として位置づけるが、これも戦後の断絶ではなく、戦前から毎日新聞が積み上げてきたスポーツ事業の連続線上にあるものとして考察している。
本書全体としては、日本近代の日本人の身体とメディアの物語だと考えてもらいたい。
黒田 勇(クロダ イサム)
黒田 勇(くろだ いさむ)
1951年 大阪市生まれ
1984年 京都大学大学院教育学研究科博士後期課程学修認定退学
1985年 京都大学助手、神戸女子大学、大阪経済大学を経て、1999 年より
関西大学社会学部教授。専門はメディア文化論。
主要著書
『オンメディア・オフメディア』(編著、法律文化社、1994年)
『ラジオ体操の誕生』(青弓社、1999年)
『ワールドカップのメディア学』(共編著、大修館書店、2003年)
『送り手のメディアリテラシー』(編著、世界思想社、2005年)
『メディアスポーツへの招待』(編著、ミネルヴァ書房、2012年)
目次
序章
第一章 新聞事業としてのマラソン大会の誕生
はじめに
第一節 メディアスポーツの誕生
第二節 大阪毎日新聞の南海鉄道の連携
第三節 日本におけるマラソンの誕生
おわりに
補論 クロスカントリーと「郊外」開発
第二章 二つのオリンピックのはざまで
はじめに
第一節 クロスカントリーから極東(東洋)オリンピックへ
第二節 極東オリンピックと大阪毎日新聞
第三節 第六回極東競技大会の大阪開催
おわりに
第三章 阪神電鉄開業時の郊外開発とメディアスポーツ
はじめに
第一節 阪神電鉄の郊外開発
第二節 阪神電鉄の余暇・スポーツ事業と新聞社の役割
おわりに
補論 都市内部のスポーツ空間・市岡
第四章 ラジオ体操の誕生
はじめに
第一節 ラジオ体操の創案
第二節 保健・衛生思想の拡大
第三節 簡易生命保険の普及
第四節 ラジオ体操の普及と健康
第五節 身体そのものの「合理化」
第六節 早起きと集団体操
おわりに
第五章 メディア・イベントとしての「マナスル登頂」
はじめに
第一節 マナスル登頂とメディア・イベント
第二節 日本における登山
第三節 新聞事業としての登山
第四節 メディア・イベントとしてのマナスル登頂
第五節 「メディア・イベント」前夜のマナスル登頂成功
おわりに
引用参考文献
おわりに
索引