平和研究入門
価格:2,530円 (消費税:230円)
ISBN978-4-87259-474-4 C3036
奥付の初版発行年月:2014年04月 / 発売日:2014年04月中旬
3・11をへて時代背景は一変し,日本の安全保障
にも多くの課題がはらまれている.平和を構想す
るのにいかなる準備が必要か,鋭意編集を進め
る.Ⅰ・直接的暴力に抗う,Ⅱ・構造的暴力への
洞察,Ⅲ・文化的暴力の克服の3部から成り,価
値志向性,学際性,学問的主体性を特色とする.
戦争にまつわる暴力だけでなく,貧困や差別,公
害など人間の生活を脅かす現象も平和研究の積極
的な対象に据える.
目次
はじめに(木戸衛一)
1.直接的暴力
2.構造的暴力
3.文化的暴力
4.平和創造の主体形成に向けて
Ⅰ 直接的暴力に抗う
近代日本における「兵士」の誕生—兵営内教育と戦場での兵士—(北泊謙太郎)
1.ライフサイクルからみた青年男子にとっての「徴兵」
2.兵営内での軍隊教育と「暴力」
3.戦場における兵士—「差別」から「殺戮」へ
大阪大学に残る戦争遺跡(飯塚一幸)
1.待兼山に残る行幸碑・行啓碑
2.旧制浪速高等学校奉安庫の発見
3.広がるケシ畑
コラム 忠魂碑って、ナニ?(神坂玲子)
連合国占領軍の事故・犯罪による人身被害(藤目ゆき)
1.占領下の人身被害
2.講和条約発効後の占領軍被害補償問題
朝鮮半島の戦争と平和(康宗憲)
1.東西冷戦と朝鮮半島の南北分断
2.朝鮮半島の戦争危機、その要因は何か?
3.朝鮮半島の非核化と北朝鮮の核放棄
4.朝鮮半島の平和体制構築に向けて
コラム 被爆体験を語り継ぐ—自分の価値を再発見するフィールドワーク—(畑井克彦)
イスラエル/パレスチナ問題とは何か—故郷からの追放と占領下の生活—(清末愛砂)
1.パレスチナ難民の発生
2.1967年以降のパレスチナ
3.パレスチナ解放闘争の歴史
ドイツに見る「過去の克服」と歴史和解(木戸衛一)
1.はじめに—対等なパートナーのいない日本
2.日独比較の視座
3.「過去の克服」の諸相
4.不倶戴天の敵からパートナーへ
コラム 大阪砲兵工廠跡—加害と被害の歴史を伝える—(文箭祥人)
Ⅱ 構造的暴力の洞察
平和を脅かす格差・貧困化社会(二宮厚美)
1.はじめに—平和的生存権の思想
2.貧困・戦争と福祉・平和の相互関係
3.新自由主義のもとでの貧困大国化と軍事大国化
4.おわりに—グローバル競争国家化のもとでの格差・貧困社会化
コラム 寄せ場はどこにあるか(金羽木徳志)
ハンセン病の歴史と近代大阪(廣川和花)
1.近代日本のハンセン病の歴史
2.外島保養院から邑久光明園へ
3.大阪皮膚病研究所の研究と治療
遊牧の原理と核燃料サイクル—モンゴルのゴビ砂漠で生じた矛盾—(今岡良子)
1.遊牧の原理
2.ゴビ地方のウラン鉱山開発・原子力発電所建設・核廃棄物処分場建設
3.フロントエンドで起った家畜の異常死事件
無知の傲慢—暴走する核エネルギー利用—(下田正)
1.「無知の傲慢」
2.核エネルギーとは
3.歯止めなき核兵器開発競争
世界社会フォーラム—グローバルな構造的暴力に立ち向かう試み—(春日匠)
1.環境・貧困・病気…押し寄せる難問
2.世界経済フォーラムと世界社会フォーラム
3.社会フォーラムの10年とオキュパイ運動
4.世界社会フォーラムではなにが行われるか
人間性の起源と暴力の克服(長野八久)
1.自然法則としての自然法
2.人間性の起源
3.暴力を乗り越える
コラム 生野コリアタウン—過去と現在の不思議なつながり—(金麻紀)
Ⅲ 文化的暴力の克服
法による平和の探求とその現状(小沢隆一)
1.平和に向けての人類の法的探究—「戦争と平和」をめぐる国際法の歴史
2.戦後日本における平和と戦争をめぐる相剋—日本国憲法と日米安保条約
3.現代日本における平和の法的探究—平和的生存権の意義
戦争のための歴史、平和のための歴史—東アジア諸国民の相互理解を阻むものは何か?—(桃木至朗)
1.近代国家はなぜ歴史を必要とするか?
2.東アジア世界で歴史はどんな意味をもつか?
3.東アジアの相互理解にはなにが足りないか、なにが必要か?
戦争は日本文学にどのように書かれたか?(出原隆俊)
1.<文豪>たちが証言する
2.『北岸部隊』の林芙美子(従軍作家)と『うず潮』の林芙美子
3.文学作品の機能について
コラム 空白の沖縄市—大阪市大正区にみる—(大城尚子)
社会問題・社会病理としての学校—保護者間トラブル —教師の労働の特殊性に起因する苦しさ—(小野田正利)
1.3%のディープ・インパクト
2.保護者からのクレームに悩み、トラブルを恐れる教師
3.やっかいで激しいクレームだが
4.満足基準が急上昇する中での教育労働の特殊性
5.「名指し」で個人が責められ、複数の子どもが介在
6.目の前30センチの「敵」
7.増えるクレームと向き合う覚悟
エラスムスの平和論(望月太郎)
1.『平和の訴え』の時代背景—エラスムスの不戦思想と近代的ヒューマニズム
2.人類にとって平和とは何であるか—平和の積極的定義、平和の効用、平和への道
3.『平和の訴え』のもつ現代的意義
多文化社会における他者理解の課題(我田広之)
1.はじめに—グローバル化時代における多言語・多文化社会の現実
2.EUにおける「副言語主義」と「ヨーロッパ言語共通参照枠」
3.他者理解の可能性と限界
4.むすび—他者受容と相互承認
コラム 多文化共生の街から・神戸長田(川越道子)
あとがき(木戸衛一)
論文執筆者略歴