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日本産花粉図鑑

日本産花粉図鑑

B5判 880ページ 上製
価格:19,800円 (消費税:1,800円)
ISBN978-4-8329-8198-0 C3045
奥付の初版発行年月:2011年03月 / 発売日:2011年03月上旬

内容紹介

40年に及ぶ研究成果を,4889枚の走査電顕・透過電顕・光顕写真と,総合的な解説,そして検索表に集大成した関係者待望の大図鑑。これまでの図鑑は,撮影技術上の限界のため花粉のもつ形態上のさまざまな情報を伝えることができなかった。しかし,微細な点まで鮮明に見える本図鑑は,花粉形態学や花粉分析学の研究者はもとより,第四紀学・環境考古学・気候学・環境史学・地質学・植物分類学・生態学・環境科学・医学・生理学などの様々な分野の研究者にとって必携の書である。また従来とは違った視点からの系統分類学への大きな貢献が期待されている。本書は,以下の8つの大きな特徴を持つ。①植物系統分類学の研究者の要望にも応えるために,207科794属1,305種に及ぶ広範な分類群を収録。②現生花粉の走査電顕写真4026枚に,現生花粉の光顕写真416枚などを加え,4889枚の写真を398プレートに収録。③写真プレートは,現生花粉の走査電顕と光顕写真,花粉外壁断面の透過電顕写真,化石花粉の走査電顕写真,花粉症原因植物花粉の光顕写真の5グループに分類して収録。④古環境研究者の要望にも応えるため,第四紀堆績物の花粉分析で産出する主要な化石花粉も収録。⑤花粉症に関わる人々のために原因植物花粉の光顕写真を収録。⑥研究目的に応じて使えるように,同じ花粉をアセトリシス法により化学処理したものと無処理のものを撮影収録。⑦解説は,①和名,②学名,③形態の特徴,④大きさ,⑤花期,⑥分布,⑦採集データ(試料採集場所,採集年月日)を記載。⑧専門外の方々の引きやすさを考えて,基本外観を図示し特徴をずばり押さえた検索表を収録

●本書を推薦します
「100年後も残る名著」 
安田喜憲 国際日本文化研究センター教授・フンボルト大学客員教授・麗澤大学比較文明文化研究センター客員教授
 科学の新たな展開と100年後も残る業績は,研究者のたゆまぬ努力と,真摯でひたむきな自然と人とのかかわりのなかで生まれる。本著は三好教夫博士という一人の研究者が,その40年の研究者人生をかけて集大成した,日本で初めての電子顕微鏡を駆使した花粉図鑑である。研究は一人の力でできるものではない。よき研究協力者とよき後継者にめぐまれてこそ,自らの開拓した研究分野に100年の命が与えられるのである。共著者の藤木利之博士,木村裕子博士は,ともに三好博士の高弟である。
 20世紀初頭に,スウェーデンでL.フォン・ポスト博士が花粉分析の手法を開拓してから,G.エルドマン博士(An Introduction to Palynology I, Almqvist & Wiksell 1952)らが花粉形態に注目する植物学的研究を行った。日本では幾瀬マサ博士が『日本植物の花粉』(廣川書店 1956)を刊行した。本著はそうした植物学からの花粉形態研究に,電子顕微鏡による観察を導入したエポックメーキングな金字塔である。それはW.プント博士らが刊行中の北西ヨーロッパの花粉図鑑(The Northwest European Pollen Flora I-VII, Elsevier 1976-1995)に匹敵する国際的に高く評価されるものである。花粉形態学や花粉分析学に携わる研究者はもとより,第四紀学・環境考古学・気候学・環境史学・地質学・植物分類学・生態学・環境科学・医学・生理学などの研究者にとって,必読の書である。

「様々な花粉研究に対応した最新の花粉図鑑」
高原 光 日本花粉学会元会長,京都府立大学生命環境科学研究科教授
 本書は,207科794属1,305種におよぶ植物の花粉の顕微鏡写真が掲載され,以下に述べるように,様々な分野の研究に使うことができる花粉図鑑である。著者の三好教夫先生は,岡山理科大学で教鞭をとられ,長年,花粉学の研究と教育に携わってこられた。共著者の藤木利之博士,木村裕子博士も三好先生の指導を受けた同大学卒業の高弟であり,本書は,まさに,三好研究室の長年にわたる研究成果の集大成でもある。
 さて,花粉形態に基づき親植物を明らかにする目的で花粉の同定が様々な分野で行われている。古生態学分野では,化学処理(アセトリシス処理など)によって堆積物に含まれる花粉を取り出す。このアセトリシス処理によって,花粉の細胞内の物質が分解され,花粉の表面構造が鮮明になる。また,花粉症に関連して,空気中に飛散している花粉の研究や蜂蜜の源を探るために蜂蜜中の花粉を調べる場合には,生のままの無処理の花粉を扱う場合が多い。このような化学処理したものと無処理のものでは花粉形態が大きく異なっている。さらに,花粉を観察する手段として,光学顕微鏡と走査電子顕微鏡(SEM)では,それぞれ特性が異なっている。すなわち,花粉の微細な表面構造については,SEMでなければ観察できないが,一方,花粉外壁の構造や発芽孔の内部構造は光学顕微鏡による光学断面として観察することができるが,SEMでは,花粉内部は見えない。このように,研究目的に応じて,花粉を観察する前の処理方法と観察手段が異なり,それらによって,花粉の見え方が異なってくる。つまり,様々な分野で使用できる花粉図鑑としては,無処理の花粉,アセトリシス処理をした花粉,そしてSEMによる高分解の花粉表面構造が示されている必要がある。こうした意味で,これらの異なる顕微鏡像が示されている点は,本書の利用価値が極めて高いことを示している。また,花粉分析による植生変遷の研究では,多くの場合,花粉は属レベルまでの同定であったが,多様な植物から構成される植生の形成過程を解明するには,種レベルの花粉同定が必要である。本書のSEMによる花粉図鑑は,種レベルの同定を目指した花粉分析を可能にしようとしている。実際に本書には,堆積物から取り出したスダジイ型,コジイ型などの種レベルでの化石花粉のSEM写真も多数掲載されている。
 さらに,検索表篇には,これまで公表されている検索表を基に,本書のSEMによる特徴記載を加えて,充実させている。また,模式的な図を用いて形態用語の難しさを補助する工夫がなされ,専門外の利用も可能としている。
 最後に,本書の出版後1年あまり先の2012年夏には,三好先生が花粉学会会長を務めておられたころからの念願である国際花粉学(IPC-XIII)国際古植物会議(IOPC-IX)合同大会が日本で開催される。その折り,世界中の研究者が利用できるように,本書の英文版が出版されることを希望する。


目次

目次
第Ⅰ部 写真篇
第1章  現生花粉の走査型電子顕微鏡写真
第2章  現生花粉の光学顕微鏡写真
第3章  化石花粉の走査型電子顕微鏡写真
第4章  現生花粉外壁断面の透過型電子顕微鏡写真
第5章  花粉症原因植物花粉の光学顕微鏡写真
ソテツ科/イチョウ科/マツ科/スギ科/ナンヨウスギ科/コウヤマキ科/ヒノキ科/マキ科/イヌガヤ科/イチイ科/マオウ科/ウェルイッチア科/モクマオウ科/ヤマモモ科/クルミ科/ヤナギ科/カバノキ科/ブナ科/ニレ科/クワ科/イラクサ科/ヤマモガシ科/ボロボロノキ科/ビャクダン科/ヤドリギ科/ツチトリモチ科/タデ科/ヤマゴボウ科/オシロイバナ科/ザクロソウ科/ツルナ科/スベリヒユ科/ツルムラサキ科/ナデシコ科/アカザ科/ヒユ科/サボテン科/モクレン科/バンレイシ科/マツブサ科/シキミ科/ロウバイ科/ハスノハギリ科/クスノキ科/ヤマグルマ科/フサザクラ科/カツラ科/キンポウゲ科/ボタン科/シラネアオイ科/メギ科/アケビ科/ツヅラフジ科/スイレン科/ハス科/ドクダミ科/コショウ科/センリョウ科/ウマノスズクサ科/ラフレシア科/マタタビ科/ツバキ科/オトギリソウ科/テリハボク科/ウツボカズラ科/サラセニア科/モウセンゴケ科/ケシ科/フウチョウソウ科/アブラナ科/スズカケノキ科/マンサク科/ベンケイソウ科/ユキノシタ科/トベラ科/バラ科/マメ科/カワゴケソウ科/カタバミ科/フウロソウ科/ハマビシ科/アマ科/トウダイグサ科/ユズリハ科/ミカン科/ニガキ科/センダン科/キントラノオ科/ヒメハギ科/ドクウツギ科/ウルシ科/カエデ科/ムクロジ科/トチノキ科/アワブキ科/ツリフネソウ科/モチノキ科/ニシキギ科/ミツバウツギ科/ツゲ科/クロタキカズラ科/クロウメモドキ科/ブドウ科/ホルトノキ科/シナノキ科/パンヤ科/アオギリ科/アオイ科/ジンチョウゲ科/グミ科/イイギリ科/スミレ科/キブシ科/トケイソウ科/ギョリュウ科/シュウカイドウ科/ウリ科/ミソハギ科/ヒシ科/フトモモ科/ハマザクロ科/ザクロ科/サガリバナ科/ノボタン科/ヒルギ科/シクンシ科/アカバナ科/アリノトウグサ科/ヤマトグサ科/スギナモ科/ウリノキ科/ヌマミズキ科/ミズキ科/ウコギ科/セリ科/イワウメ科/リョウブ科/イチヤクソウ科/ツツジ科/ガンコウラン科/ヤブコウジ科/サクラソウ科/イソマツ科/アカテツ科/カキノキ科/エゴノキ科/ハイノキ科/モクセイ科/リンドウ科/マチン科/ミツガシワ科/キョウチクトウ科/ガガイモ科/アカネ科/ハナシノブ科/ヒルガオ科/ハゼリソウ科/ムラサキ科/クマツヅラ科/シソ科/ナス科/フジウツギ科/ゴマノハグサ科/ノウゼンカズラ科/キツネノマ ゴ科/ゴマ科/ツノゴマ科/ヒシモドキ科/イワタバコ科/ハマウツボ科/タヌキモ科/ハマジンチョウ科/ハエドクソウ科/オオバコ科/スイカズラ科/レンプクソウ科/オミナエシ科/マツムシソウ科/キキョウ科/クサトベラ科/キク科/オモダカ科/トチカガミ科/ホロムイソウ科/シバナ科/ヒルムシロ科/アマモ科/ユリ科/リュウゼツラン科/ヒガンバナ科/ヤマノイモ科/ミズアオイ科/アヤメ科/イグサ科/ツユクサ科/ホシクサ科/イネ科/ヤシ科/サトイモ科/ウキクサ科/ミクリ科/タコノキ科/ガマ科/カヤツリグサ科/ショウガ科/カンナ科/ラン科
第Ⅱ部 解説篇
第1章  総 論
第2章  各 論
第Ⅲ部 検索表篇
主検索表
検索表A 気嚢型花粉
検索表B 複合型花粉
検索表C 二面体型花粉
検索表D 球状体・楕円体型(卵形)花粉


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