アイヌの祭具 イナウの研究
価格:14,300円 (消費税:1,300円)
ISBN978-4-8329-6790-8 C3039
奥付の初版発行年月:2014年02月 / 発売日:2014年02月下旬
アイヌ民族の祭具であるイナウ(木幣)について多角的に研究した専門書。1900年代~1960年代にかけて製作・収集されたイナウの実物資料・記録類を踏査し、アイヌの宗教文化をモノの面から描き出す。また、本州やサハリン・アムールの北方民族、ボルネオ島の諸民族が持つ削りかけ文化と形状・技術・用途についての比較を行い、アイヌ文化史を再考する。
北原 次郎太(キタハラ ジロウタ)
1976年東京都生まれ。北海道大学アイヌ・先住民研究センター准教授。千葉大学博士課程修了(学術博士)。2005年よりアイヌ民族博物館学芸課勤務。2010年4月より現職。アイヌの宗教文化と物質文化,とりわけイナウについての研究を専門とするほか,アイヌ語,口承文芸,芸能などの研究に携わる。
目次
はじめに
地 図
第1章 総 論
1.精神文化とイナウの関わり
1-1.世界観
1-1-1.諸々の精霊・神
1-1-2.動物神
1-1-3.植物神
1-1-4.自然界の神
1-1-5.物 神
1-1-6.人間の霊魂
1-1-7.儀 礼
1-1-7-1.日常的儀礼
1-1-7-2.漁労儀礼
1-1-7-3.送り儀礼
1-1-7-4.物神の霊送り
1-1-7-5.葬儀・祖霊祭
1-1-8.巫 術
1-1-9.アイヌの霊魂観
1-1-9-1.ラマッの一般的理解
1-1-9-2.知的活動の根源
1-1-9-3.ラマッはどんな姿をしているか
1-1-9-4.細分化したラマッ
1-1-9-5.チラマッコレ──入魂/説諭
1-1-9-6.結 語
1-2.イナウについて
1-2-1.イナウが指し示す範囲
1-2-2.イナウの機能
2.先行研究・資料の概要
2-1.近代以前の研究
2-2.近代以降の研究
2-2-1.B.ピウスツキの研究
2-2-2.V.N.ヴァシーリエフの研究
2-2-3.▲西猛千代の研究
2-2-4.N.G.マンローの研究
2-2-5.名取武光の研究
2-2-6.河野広道の研究
2-2-7.更科源蔵の研究
2-2-8.藤村久和の研究
3.課題と研究方法
3-1.先行研究の課題
3-2.研究の方法と意義
第2章 イナウに用いる樹種・用い方
1.樹種の選択
1-1.祭具のイナウ
1-2.守護神のイナウ
2.樹木に対する認識
2-1.性 別
2-2.木の上(梢)と下(根)
小 括
第3章 イナウの製作技術
はじめに
1.アイヌが使用する工具と作業姿勢
1-1.樺太の事例
1-2.北海道の事例
2.加工上のポイント
2-1.木取り
2-2.切断面
2-3.削りかけの状態
2-3-1.巻きの強さ
2-3-2.巻きの方向
2-3-3.削りかけの重なり方
2-3-4.削り跡
2-4.削りかけの二次加工
2-4-1.仕付け
2-4-2.S撚り
2-4-3.Z撚り
3.製作工程の復元
3-1.石狩市浜益区 山下三五郎
3-2.美幌町 菊地儀之助
4.本州各地の工具と作業姿勢
4-1.ハナカキナタ
4-2.小 刀
4-3.鎌
4-4.セ ン
4-5.鉈
4-6.不 明
5.ボルネオ島諸民族の工具と作業姿勢
5-1.ムル村(ブラワン民族)
5-2.ムル村プナン居住区(プナン民族)
5-3.ロング・パナヤ村(カヤン民族)
5-4.バラン地区・キプット村(キプット民族)
5-5.ドック・アナック・キアイ村(イバン民族)
小 括
第4章 イナウのかたち──構成要素の事例
はじめに
1.構成要素
1-1.主軸部
1-1-1.頭部および脚部
1-1-2.外 皮
1-1-3.腕状枝
1-1-4.頭頂形状
1-1-5.樹 種
1-2.削りかけ
1-2-1.短 翅
1-2-2.長 翅
1-2-3.刻 印
1-3.要素の構成(配列)法
2.各地の事例
2-1.鵜城の事例
2-2.来知志の事例
2-3.多蘭泊の事例
2-4.新問の事例
2-5.白浜の事例
2-6.余市町の事例
2-7.石狩市の事例
2-8.石狩市浜益区の事例
2-9.新十津川町の事例
2-10.八雲町の事例
2-11.長万部町の事例
2-12.平取町二風谷の事例
2-13.浦河町荻伏の事例
2-14.芽室町(毛根)の事例
2-15.帯広市伏古の事例
2-16.音更町の事例
2-17.白糠町の事例
2-18.釧路市(徹別,幣舞)の事例
2-19.標茶町塘路の事例
2-20.美幌町の事例
2-21.斜里町の事例
2-22.エトロフ島の事例
2-23.シムシュ島(シコタン島)の事例
構成要素の分布から見るイナウの地域性
第5章 シトゥイナウの分布と歴史的変遷
はじめに
1.先行研究
1-1.河野広道
1-2.N.G.マンロー
1-3.知里眞志保
1-4.更科源蔵
1-5.藤村久和
2.各地の事例
2-1.八雲町
2-2.長万部町
2-3.石狩市浜益区
2-4.新十津川町
2-5.旭川市
2-6.網走市
2-7.美幌町
2-8.弟子屈町屈斜路
2-9.阿寒町徹別(釧路市春採)
2-10.釧路市(鶴居村)
2-11.白糠町和天別
2-12.白糠町石炭岬
2-13.足寄町
2-14.芽室町
2-15.様似町
2-16.浦河町荻伏
2-17.新ひだか町東静内
2-18.平取町紫雲古津
2-19.平取町二風谷
2-20.白老町
2-21.虻田町
3.考 察
3-1.分布から見えること
3-2.外皮対生短翅
3-3.発生の時期
4.小 括
第6章 刻印と人面意匠
はじめに
1.先行研究
2.イナウに見られる刻印
2-1.北海道のイナウ
2-2.樺太のイナウ
2-2-1.胴の刻印
2-2-2.頭 印
3.刻印・人面に関わる他の事例
3-1.ウイルタ・ニヴフのイナウ
3-2.冬季住居の柱の例
3-3.木製守護神の例
4.本州の事例
4-1.サンクロウ
4-2.オホンダレ様
5.小 括
第7章 火神と家屋神・家族神
1.はじめに
2.家族神・家屋神の事例
2-1.樺太西海岸
2-2.樺太東海岸
3.北海道の事例
3-1.北海道中央部
3-2.北海道南西部
3-3.北海道東北部
小 括
4.火神の祭壇の事例
4-1.北海道中央部
4-2.北海道西南部(渡島・胆振・日高)
4-3.北海道東北部
小 括
終章 イナウの歴史へ──かたち・はたらきの変遷を考える──
おわりに
1.イナウ文化史の試み
2.融合と分離
むすび
図版編
資料編 文献抜書き