現代宗教文化研究叢書3
宗教集団の社会学 その類型と変動の理論
価格:5,280円 (消費税:480円)
ISBN978-4-8329-6785-4 C3014
奥付の初版発行年月:2014年01月 / 発売日:2014年01月下旬
従来の宗教集団類型論は、それぞれ特定の宗教文化圏では有効であっても、通(宗教)文化的比較のためには十分なものではなかった。本書は、集団指導層による組織運営かネットワーク形成か、集団成員が権威志向か自立志向か、という2つの変数を用いて、新たに4類型の集団類型を提示し、それに基づき宗教集団の展開(類型間移行)を描き出す。また、無信仰者群、スピリチュアルな情報を消費する層も視野に入れて動的分析に適用可能なモデルを提示した。理論研究が手薄な宗教社会学に一石を投じる力作。
2012年創刊「現代宗教文化研究叢書」待望の3巻目!
三木 英(ミキ ヒズル)
1958年 兵庫県生まれ
1987年 大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程単位取得満期退学
現 在 大阪国際大学教授。博士(人間科学/大阪大学)
主な研究業績として,『復興と宗教――震災後の人と社会を癒すもの』(編著,2001年,東方出版),『よくわかる宗教社会学』(共編著,2007年,ミネルヴァ書房),『日本に生きる移民たちの宗教生活――ニューカマーのもたらす宗教多元化』(共編著,2012年,ミネルヴァ書房),『新世紀の宗教――「聖なるもの」の現代的諸相』(共著,2002年,創元社),『聖地再訪 生駒の神々――変わりゆく大都市近郊の民俗宗教』(共著,2012年,創元社)などがある。
目次
緒 言
第一章 宗教集団類型論と日本の宗教集団
第一節 宗教集団類型論の展開
1 チャーチ-セクト-デノミネーション
2 ミスティシズムとカルト
3 精緻化される類型論
第二節 日本における宗教集団類型論
1 先駆的研究
2 新(新)宗教の諸類型
3 合致集団の組み込み
4 合理化・組織化レベルによる類型化
第三節 既存宗教集団類型論における限界と可能性
1 先駆的研究の検討
2 新(新)宗教類型論の検討
3 特定宗教文化圏の特定的な類型論
第二章 新たな宗教集団類型の構築
第一節 現代日本の宗教状況
1 制度的教団宗教・組織宗教・新新宗教・民俗宗教
2 スピリチュアリティ探求者群
第二節 スタークとベインブリッジのカルト論
1 オーディエンス・カルト-クライエント・カルト-カルト運動
2 提供される代償と組織化
3 カルト類型の有効
第三節 カルト類型の限界
1 カルトと民俗宗教・組織宗教・制度的教団宗教
2 カルト類型の問題点
第四節 新たな宗教集団類型へ
1 権威志向-自律志向
2 ネットワーク形成-組織運営
3 四つの新類型
4 四つの新類型と古典的類型(宗教における公式セクター)
5 八つの新類型
第三章 宗教集団の展開モデル
第一節 宗教集団類型間の移行
第二節 移行を促すファクター
1 代償の質――普遍的か特定的か
2 コンティンジェンシー理論
3 環境の確実視と不確実視
4 宗教ネットワークと個人環境
5 宗教集団類型間の移行
第三節 宗教組織運営の困難な時代、そして宗教ネットワークの拡大・顕在化
1 現代における宗教組織と環境
2 教団内の宗教ネットワーク
第四章 宗教集団の発展――立正佼成会のケース
第一節 立正佼成会の展開
1 教団の成立と成長
2 戦後の躍進
3 外患と内憂
4 真実顕現と地区ブロック制の導入
第二節 立正佼成会における集団属性の変動
1 初期佼成会の集団類型
2 特定的代償から普遍的代償へ
3 自律志向型から権威志向型へ
第三節 教団の展開と組織運営
第五章 宗教集団の挫折――UFOグループのケース
第一節 予言の失敗と認知的不協和の理論
第二節 UFOグループの展開
1 発 端
2 集団形成
3 混 乱
4 直 前
5 「その日」、そしてその後
第三節 UFOグループにおける集団属性の変動
1 自律志向型ネットワークから権威志向型ネットワークへ
2 普遍的代償――そこにおける約束・実践・時期
3 権威志向型ネットワークから権威志向型組織へ
4 新たな組織目標の浮上と下位部門の分化
5 再び、権威志向型組織へ
6 内部環境不確実性の高まり、そして消滅
第四節 UFOグループの失策
1 提供されない普遍的代償と消極的な権威的存在
2 集団規模の小ささ
3 失われた組織目標
第六章 自律志向型ネットワークへの着目――宗教的無党派層の潜在力
第一節 変動する社会、そして宗教
1 社会の変動
2 宗教の変動
第二節 「宗教」の停滞、宗教的無党派層の台頭
1 停滞する宗教
2 スピリチュアリティ探求者群
3 宗教的無党派層
4 宗教的無党派層から現れる自律志向型ネットワーク
第三節 人間至上の信仰
1 デュルケムの「未来の宗教」
2 人間崇拝と宗教的無党派層
第四節 自律志向型ネットワークの変動
1 自律志向型組織へ――人間賛美にかかわる普遍的代償
2 権威志向型ネットワークへ――「聖なる人間」の危機
3 権威志向型組織へ
4 理想的な人間への憧憬
結 語 宗教社会学を、前へ
あとがき
参考文献
人名索引
事項索引
関連書
[現代宗教文化研究叢書]
1.土屋 博『宗教文化論の地平―日本社会におけるキリスト教の可能性―』(2012)
2.櫻井義秀『カルト問題と公共性―裁判・メディア・宗教研究はどう論じたか―』(2014刊行予定)
*櫻井義秀・中西尋子著『統一教会―日本戦況の戦略と韓日祝福』(2010)
*李元範・櫻井義秀編著『越境する日韓宗教文化』(2011)