ユーラシア東方の多極共存時代 大モンゴル以前
価格:14,300円 (消費税:1,300円)
ISBN978-4-8158-1150-1 C3022
奥付の初版発行年月:2024年02月 / 発売日:2024年03月上旬
遊牧王朝と中国王朝、なぜ数百年間も併存できたのか──。モンゴル帝国による統合以前のユーラシア東方では、複数の国家が並び立っていた。契丹(遼)と北宋の盟約による「澶淵体制」、さらには金(女真)の時代の国際関係に焦点を当て、考古資料も活用しつつ、外交・儀礼・信仰から歴史編纂まで東洋史・中国史像を刷新する。
古松 崇志(フルマツ タカシ)
1972年生まれ
1997年 京都大学大学院文学研究科修士課程修了
1999年 京都大学大学院文学研究科博士後期課程退学
京都大学人文科学研究所助手、同助教、岡山大学社会文化科学研究科准教授などを経て
現 在 京都大学人文科学研究所教授、博士(文学)
著書:
『草原の制覇──大モンゴルまで』(岩波新書、2020年)
『金・女真の歴史とユーラシア東方』(共編、勉誠出版、2019年)
『中国経済史』(共著、名古屋大学出版会、2013年)他
目次
序 章 ユーラシア東方の多極共存時代とは何か
—— 問題の所在
1 ユーラシア東方史とは何か
2 研究史の概観
—— 多極化時代のユーラシア東方における王朝間関係を中心に
3 本書のねらいと構成
第Ⅰ部 10~13世紀のユーラシア東方における王朝間関係
第1章 契丹・北宋間の澶淵体制と国境
はじめに
1 澶淵体制とは何か —— 11世紀ユーラシア東方の国際情勢
2 契丹・宋間の国境の形態
3 越境する人びと —— 国境管理の原則と越境の実態
おわりに
第2章 契丹・北宋間における外交文書としての牒
はじめに
1 最初の和議 —— 10世紀における契丹・北宋の辺臣間文書
2 外交文書としての牒文書の起源
3 外交文書としての牒文書制度の確立とその運用
4 契丹・北宋両国の朝廷間交渉の手段としての牒と文書管理
おわりに
第3章 契丹・北宋間の国信使と儀礼
はじめに
1 澶淵の盟締結前後の国信使制度の確立とその起源
2 国信使の旅と接待
3 国信使の朝見・朝辞儀をめぐって
—— 国書授受と皇帝・国信使対面の儀礼
4 契丹朝廷における儀礼の場
おわりに
附録 契丹・北宋国信使朝見儀・朝辞儀の儀注原文
第4章 金・北宋間の同盟をめぐって
—— 外交交渉と儀礼を中心に
はじめに —— 1117年の遼東漢人の山東漂着
1 「海上之盟」への道 —— 金・北宋間を結んだ渤海海峡
2 契丹・金間の講和の模索
3 金・北宋間の交渉と儀礼
おわりに
第5章 金国の正旦・聖節の儀礼と外国使節
はじめに
1 御寨・上京における儀礼
2 中都における儀礼
おわりに
附録 金国における外国使節入見・朝辞儀と元日の朝賀儀礼
第Ⅱ部 契丹・金の儀礼と信仰
第6章 契丹の王権儀礼と信仰
—— 即位儀礼・天地祭祀・喪葬儀礼をめぐって
はじめに
1 即位儀礼 —— 柴冊礼
2 天地の祭り —— 祭山儀
3 喪葬儀礼と追善供養
4 契丹人の基層信仰と仏教 —— むすびにかえて
第7章 契丹皇帝の喪葬儀礼
—— 聖宗文殊奴の喪葬儀礼と慶陵埋葬を中心に
はじめに
1 聖宗文殊奴の死と政争
2 喪葬儀礼(1)—— 永安山と慶州城における殯
3 喪葬儀礼(2)—— 慶州からの出発
4 喪葬儀礼(3)—— 慶陵での埋葬とその後の諸儀礼
おわりに
第8章 慶州白塔建立の謎をさぐる
—— 契丹皇太后・皇帝の仏教信仰
はじめに —— 慶州白塔文物の発見
1 ふたつの建塔碑
2 陀羅尼経板と慶州白塔建立の目的
おわりに
第9章 法均と燕京馬鞍山の菩薩戒壇
—— 契丹における菩薩戒の流行
はじめに
1 「法均遺行碑」伝存の経緯
2 法均の事跡と遼金時代の馬鞍山菩薩戒壇
3 契丹における菩薩戒の流行
4 国境を越える参詣者たち
おわりに —— 道宗皇帝の戒本をめぐって
附録 「法均遺行碑」録文
第10章 金国の祭天儀礼
—— 拝天と郊祀をめぐって
はじめに
1 女真の祭天 —— 拝天礼
2 南郊郊祀の導入をめぐって
おわりに
第11章 金国の祖先祭祀
—— 御容祭祀と宗廟
はじめに
1 御容を用いた祖先祭祀と原廟
2 宗廟制度(太廟)の導入と展開
おわりに
第Ⅲ部 多極共存時代の歴史編纂
第12章 女真開国伝説の形成
——『金史』世紀をめぐって
はじめに ——『金史』世紀をめぐる研究史
1 世紀の内容
2 始祖説話と按出虎水完顔部女真の拡大
3 記憶から文字へ —— 世紀成立への道程
おわりに
第13章 脩端「辯遼宋金正統」をめぐって
—— 元代における『遼史』『金史』『宋史』三史編纂の過程
はじめに
1 「辯遼宋金正統」訳注と内容
2 金国滅亡後の東原という場面
3 クビライ政権における修史事業
——『玉堂嘉話』に載せられた「辯遼宋金正統」
4 『秋澗先生大全集』の出版と三史編纂
5 元末の正統論争
——『国朝文類』に載せられた「辯遼宋金正統」
おわりに
終 章 10~13世紀のユーラシア東方史
—— 時代史の概観
1 契丹(遼)の覇権と澶淵の盟(10~11世紀)
2 北宋・契丹の自他認識
3 金国(女真)の覇権と多国体制の存続(12~13世紀初頭)
4 モンゴルによるユーラシア統合と多極共存時代の痕跡(13~14世紀)
5 まとめと課題
注
あとがき
参考文献
図表一覧
索 引