健康朝鮮 植民地のなかの感染症・衛生・身体
価格:7,480円 (消費税:680円)
ISBN978-4-8158-1144-0 C3022
奥付の初版発行年月:2024年02月 / 発売日:2024年02月中旬
スペイン・インフルエンザのパンデミックを経験した植民地は、いかにしてその医療衛生システムを構築し、人々の健康を管理しようとしたのか。学校・工場・農村・軍・遊郭などの実態を、スポーツやレクリエーションも視野にトータルに解明、帝国下での医療の社会化の光と影を捉えた渾身の成果。
林 采成(イム チェソン)
1969年 韓国・ソウル市に生まれる
1995年 ソウル大学校農業経済学研究科修士課程修了
2002年 東京大学大学院経済学研究科博士課程修了
2004年 韓国培材大学校外国語大学専任講師
同助教授、ソウル大学校日本研究所副教授等をへて、
現 在 立教大学経済学部教授、博士(経済学)
著 書
『戦時経済と鉄道運営──「植民地朝鮮」から「分断韓国」への歴史的経路を探る』(東京大学出版会、2005年)
『華北交通の日中戦争史──中国華北における日本帝国の輸送戦とその歴史的意義』(日本経済評論社、2016年)
『飲食朝鮮──帝国の中の「食」経済史』(名古屋大学出版会、2019年)
『鉄道員と身体──帝国の労働衛生』(京都大学学術出版会、2019年)
『東アジアのなかの満鉄──鉄道帝国のフロンティア』(名古屋大学出版会、2021年)
目次
凡 例
地 図
序 章 植民地朝鮮における疾病・衛生と身体
1 近代的身体と植民地
2 植民地期における朝鮮保健医療史
3 西洋医学の浸透と近代的身体
4 本書の構成
第Ⅰ部 感染症と公衆衛生
第1章 スペイン・インフルエンザの大流行
—— 疾病と死亡の構造
はじめに
1 疾病と死亡の植民地的構造
2 スペイン・インフルエンザのパンデミック
3 スペイン・インフルエンザの社会経済的影響
おわりに
第2章 結核の流行とその背景
—— 社会経済的優位のパラドクス
はじめに
1 結核死亡率の推計と特徴
2 よりよい職業と住居は何をもたらしたか
3 総督府政策の含意をめぐって
おわりに
第3章 遊廓の導入と花柳病の流行
—— 植民地「亡国病」と身体的管理
はじめに
1 植民地朝鮮の売春業と「淫乱社会」
2 性をめぐる身体的管理 —— 性感染症の健康管理
3 衛生管理の効果 —— 娼妓・芸妓・酌婦の健康状況
おわりに
第Ⅱ部 労・農・軍の衛生
第4章 煙草工場と労働衛生
—— 朝鮮総督府専売局
はじめに
1 専売工場の展開と職工の入離職
2 職工の質的変化と作業能率
3 職工の健康と疾病
4 専売医体制と共済組合
おわりに
第5章 熊本農場と農村衛生
—— 慈恵診療所の設置と運営
はじめに
1 営農の合理化と小作人管理
2 全北の衛生状況と慈恵診療所の設置
3 慈恵診療所の運営と農村衛生研究所への模索
おわりに
第6章 朝鮮駐箚軍・朝鮮軍の衛生と医療
—— 植民地と日本軍
はじめに
1 朝鮮駐箚軍の配置と軍衛生 —— 兵士の健康管理
2 朝鮮軍の編成と軍衛生の再編 —— 感染症の大流行
3 軍衛生の拡充と朝鮮軍の満洲派遣 —— 朝鮮から中国大陸へ
おわりに
第Ⅲ部 身体と鍛錬
第7章 学校体育と運動会
—— 普通学校・小学校・国民学校
はじめに
1 学校体操教授要目と運動会の再編
2 改正要目と運動会の土着化
3 第二次改正要目と「小国民」の運動会
おわりに
第8章 労働者の身体と体育
—— 朝鮮総督府逓信局と企業スポーツの起源
はじめに
1 逓信労働者の身体とスポーツの必要性
2 逓信局内の倶楽部制度とスポーツの「膨張」
3 健康な身体作りと「逓信体育協会黄金時代」
4 戦時下の心身練成と局友会の設置
おわりに
第9章 朝鮮簡易生命保険とラヂオ体操の普及
—— 社会体育の生成
はじめに
1 簡易生命保険の実施と朝鮮内の死亡推移
2 朝鮮総督府逓信局によるラヂオ体操の導入
3 戦時下のラヂオ体操と国家イデオロギー
おわりに
第Ⅳ部 衛生インフラの光と影
第10章 水道の普及と経営分析
—— 感染症・水質論争の検証
はじめに
1 水道の普及と民族別格差
2 水道の衛生効果の限界と決定要因分析
3 水道経営分析と水道事業の持続性
おわりに
第11章 温陽温泉の近代化と朝鮮京南鉄道
—— 湯治と娯楽
はじめに
1 温陽温泉の営業と朝鮮京南鉄道の敷設
2 鉄道の温泉買収と神井館の造成
3 神井館の経営成果と兼業の実態
おわりに
第12章 阿片中毒と阿片専売
—— 植民地住民と総督府の麻薬政策
はじめに
1 阿片煙吸食訓令と総督府の生阿片専売
2 大正製薬の密売と総督府の製造専売
3 中毒者の急増と麻薬消費
4 治療・予防と麻薬取締令
おわりに
終 章 衛生の帝国と植民地
1 医療衛生の移植と伝播
2 医療機関の多様性と医療の社会化
3 植民地医学における軍医と同仁会
4 植民地的近代性と医療格差
5 健康のビジネス化と生活様式の変容
6 身体の鍛錬と戦争動員
7 医療衛生の戦後史への展望
あとがき
注
参考文献
図表一覧
索 引