維新の政治と明治天皇 岩倉・大久保・木戸の「公論」主義 1862~1871
価格:10,780円 (消費税:980円)
ISBN978-4-8158-1139-6 C3021
奥付の初版発行年月:2023年11月 / 発売日:2023年11月上旬
大変革を捉え直す
国家の危機を前に、幕末・維新のリーダーたちはいかにして政治的意思決定を行ったのか。そのとき天皇のあり方はどのように変化したのか。岩倉具視・大久保利通・木戸孝允らによる「公論」主義を軸に、倒幕から廃藩までの激動の過程を一貫した視座のもとでとらえ、新たな明治維新像を示す渾身作。
伊藤 之雄(イトウ ユキオ)
1952年 福井県に生まれる
1981年 京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学
名古屋大学文学部助教授、京都大学大学院法学研究科教授などを経て
現 在 京都大学名誉教授、博士(文学)
著 書
『大正デモクラシーと政党政治』(山川出版社、1987年)
『立憲国家の確立と伊藤博文』(吉川弘文館、1999年)
『政党政治と天皇』(講談社、2002年、講談社学術文庫、2010年)
『昭和天皇と立憲君主制の崩壊』(名古屋大学出版会、2005年)
『明治天皇』(ミネルヴァ書房、2006年)
『山県有朋』(文春新書、2009年)
『伊藤博文』(講談社、2009年、講談社学術文庫、2015年)
『昭和天皇伝』(文藝春秋、2011年、文春文庫、2014年、司馬遼太郎賞)
『原敬』上・下巻(講談社、2014年)
『元老』(中公新書、2016年)
『「大京都」の誕生』(ミネルヴァ書房、2018年)
『大隈重信』上・下巻(中公新書、2019年)
『最も期待された皇族東久邇宮』(千倉書房、2021年)
『東久邇宮の太平洋戦争と戦後』(ミネルヴァ書房、2021年)他多数
目次
はしがき
凡 例
序 論
第Ⅰ部 「公論」主義と慶喜・幕府(徳川宗家)勢力排除
第1章 孝明天皇・明治天皇と薩長討幕派
—— 木戸・大久保らの「公論」主義の形成(文久2年~慶応3年)
1 木戸孝允の「正議論」から「公論」へ
2 大久保利通の「公論」の確立
第2章 孝明天皇・明治天皇と討幕派公家
—— 岩倉・三条らの「公論」主義の形成(文久2年~慶応3年)
1 朝議の拡大構想
2 新体制構想と「公論」主義
第3章 小御所会議への道
——「公論」主義か「公議」主義か(慶応3年10月~12月8日)
1 幕末史の新しい見方の成果と課題
2 睦仁親王の政治体験
3 大政奉還の衝撃
4 小御所会議への密謀
第4章 小御所会議と王政復古政権
——「公議」主義の抑圧(慶応3年12月9日)
1 小御所会議への武力動員
2 小御所会議の回数と参加様式
3 小御所会議での激しい対立と結末
第5章 王政復古政権の展開
——「公論」主義と「公議」主義の対決(慶応3年12月10日~同年末)
1 慶喜処分実施か緩和か
2 12月23日・24日の朝議をめぐる対立
3 王政復古政権での「公論」主義の展開
4 岩倉・薩長と慶喜・松平春嶽
第6章 鳥羽・伏見の戦いと朝廷
——「官軍」を創る(慶応3年12月末~同4年1月上旬)
1 開戦前夜の岩倉らの政治的優位
2 「朝敵」決定
3 新政府軍の軍事的勝利とその背景
4 官軍の成立
第Ⅱ部 維新の大変革の始動
第7章 大坂行幸の意思決定
—— 朝議の限界への対応(慶応4年1月中旬~同年3月中旬)
1 大坂遷都の非承認
2 大坂行幸の実施と遷都構想
第8章 維新政権の展開と慶喜・徳川宗家処分
—— 新体制へ(慶応4年1月下旬~同年5月)
1 「公論」派の主導と「公議」派への配慮
2 王政復古体制でできた制度の大改革
3 慶喜・徳川宗家処分の意思決定
第9章 東幸・東京奠都と明治天皇を象徴とした新体制
——「公論」主義の展開(慶応4年閏4月~明治2年3月)
1 明治初年の「公論」主義
2 東幸の意思決定過程
3 急進的変革をめぐる綱引き
第10章 「公議」を求める声と朝議・政府の「権威」
——「公論」主義の維持(明治2年前半)
1 公議所の開設
2 人材「公撰」構想
3 人材「公撰」の真実
4 朝議の実態と天皇・政府の「権威」
第Ⅲ部 版籍奉還をめぐる政府崩壊の危機
第11章 実質的な版籍奉還構想
—— 大変革を目指す(慶応4年2月~明治2年前半)
1 急進的廃藩論の木戸と岩倉・大久保
2 「版籍奉還」への木戸・大久保・岩倉の合意
3 実質的廃藩に非協力的な薩・土
第12章 版籍奉還をめぐる対立
——「公論」主義者の分裂(明治2年半ば)
1 木戸・木戸派と大久保・岩倉らの対立
2 明治2年7月の制度大改革の精神
3 民部省の大蔵省への合併
4 「万機御親裁」の建前と少年天皇
5 天皇の成長と「君徳培養」
第13章 三職体制の意気込みと実態
——「公議」主義の機能不全(明治2年秋~同3年秋)
1 三職と木戸・木戸派との和解の模索
2 民蔵分離の意思決定
3 大隈の参議昇格と木戸派の意欲
第14章 兵制をめぐる対立と兵部省再建
—— 木戸・大久保の相互不信と和解(明治2年9月~同3年9月)
1 未確定な兵制と大村益次郎
2 大村益次郎没後の兵部省の混乱
3 木戸による兵部省の再建
第Ⅳ部 廃藩置県を含む大変革の実施
第15章 実質的廃藩合意と「建国策」の併存
—— 大変革への薩長合意(明治3年秋)
1 小変革としての「建国策」
2 実質的廃藩を含んだ大変革への合意
3 木戸が大変革方針を信じる
第16章 大変革の中の廃藩置県
——「公論」主義の貫徹(明治3年11月~同4年7月)
1 大変革の薩長リーダーたち
2 薩長両藩の実質的な廃藩への「合意」と土佐藩
3 完全な廃藩へ
4 廃藩置県等の大変革へ
5 大変革後の新体制
第17章 大変革と兵制・宮中の大改革
—— 維新の諸目標の始動(明治2年夏・3年秋~明治4年12月)
1 兵制大改革方針の形成
2 宮中大改革への道と天皇
3 宮中大改革の展開
結 論
1 インフォーマルな「公論」主義での意思決定
2 小御所会議から鳥羽・伏見の戦いまでの時期のとらえ方
3 廃藩はいつから具体的目標となったのか
4 明治天皇の変化と宮中改革の段階
5 政治・行政制度の大改革
6 新しい兵制の創設
注
あとがき
索 引