軍国の文化 下 日清戦争・ナショナリズム・地域社会
価格:8,030円 (消費税:730円)
ISBN978-4-8158-1138-9 C3021
奥付の初版発行年月:2023年12月 / 発売日:2023年12月上旬
華やかな祝祭や忠勇の伝承、民衆の献身的な恤兵活動、国家・郷里による死者の追悼と遺族への支援──。これらが織りなす戦争協同体の総体と、新たに現れた倫理や歴史認識を、国外の動向も含めて包括的に検証し、帝国日本が抱き続けた愛国のメンタリティと軍国主義の起源をたどる、泰斗の労作。
羽賀 祥二(ハガ ショウジ)
1953年 岐阜県に生まれる
1979年 名古屋大学大学院文学研究科博士後期課程中退
京都大学助手、立命館大学助教授、名古屋大学大学院文学研究科教授などを経て
現 在 名古屋大学名誉教授、博士(歴史学)
著書:
『明治維新と宗教』(筑摩書房、1994年、法蔵館、2022年再版)
『史蹟論―19世紀日本の地域社会と歴史意識―』(名古屋大学出版会、1998年)
『幕末維新の文化』(編、吉川弘文館、2001年)
『記録と記憶の比較文化史』(共編、名古屋大学出版会、2005年)
『近代日本の歴史意識』(編、吉川弘文館、2018年)
『近代日本の地域と文化』(編、吉川弘文館、2018年)
『名古屋と明治維新』(共編、風媒社、2018年)ほか
目次
地 図
第Ⅲ部 戦勝祝祭の空間
第12章 日清戦争と戦勝祭典
はじめに
1 最初の戦勝祭典 —— 広島大本営における平壌大祝宴会
2 旅順口陥落戦勝祭典 —— 12月9日東京上野公園
3 名古屋における戦勝祭典
4 明治天皇の東京凱旋
むすびに
補論2 1890年代の国民祭典
1 国民祭典の起源
2 大婚二十五年祝典の挙行
3 国民の祭典参加
第13章 戦勝のシンボル
はじめに
1 霊鷹の出現
2 霊鷹出現譚の流布
3 蜻蛉の戦勝神話
4 征服のイメージ —— 三韓征伐と桃太郎伝説
むすびに
第14章 鎮魂の音
—— 岐阜市権現山の戦勝記念鐘について
はじめに
1 旅順口占領と岐阜県内の動向
2 戦後の凱旋祝賀会
3 戦勝記念鐘の建立の経過
4 戦勝記念鐘の撞初式
むすびに
補論3 「軍歌の帝」明治天皇
1 「軍歌の帝」
2 軍歌集の発刊
3 軍歌と行軍
4 日清戦争と軍歌
5 横井忠直の『討清軍歌』
6 「国楽」制定論
補論4 戦争民俗考
1 戦争と民俗
2 徴兵除け・弾丸除けの信仰
3 戦争絵馬
第Ⅳ部 戦争記念碑論
第15章 軍・師団の戦争記念碑の建立
はじめに
1 第一軍戦死者記念碑の建立
2 戦死者記念碑建立の目的
3 広島凱旋記念碑の建立
4 清国海城の第三師団記念碑
むすびに
第16章 軍都の戦争記念碑
—— 豊橋第十八連隊と神武天皇銅像記念碑について
はじめに
1 豊橋第十八連隊の日清戦争
2 招魂祭の挙行
3 軍人記念碑の建立
4 神武天皇か明治天皇か
5 銅像記念碑をめぐる議論
むすびに
補 註 軍人記念碑の建立に関する補足
第17章 戦争記念碑の裾野
—— 郡町村の記念碑
はじめに
1 愛知県内の日清戦争記念碑
2 幡豆郡内の記念碑
3 記念碑の立つ場所
4 記念碑建立の契機と過程
むすびに
第18章 軍夫とその招魂記念碑
はじめに
1 軍夫の規律問題
2 軍夫をめぐる紛争
3 軍夫招魂碑の建立
4 軍夫への慰問・援護
むすびに
第19章 戦争記念碑の系譜
はじめに
1 戦争記念碑の始まり
2 愛知県内の西南戦争記念碑
3 名古屋鎮台の西南戦争記念碑
4 全国各地の記念碑建立の動向
5 碑文集の刊行 —— 西南戦争から日清戦争へ
むすびに
補論5 記念碑建立への法的規制
1 記念碑建立の規則
2 神社境内への記念碑建立をめぐる問題
3 日露戦争時の建碑問題
第20章 中国における日清戦争の墓碑・記念碑
—— 旅順口・金州・錦州
はじめに
1 遼東半島における戦闘
2 旅順口占領と虐殺事件
3 遼東半島の甲午戦争記念碑
4 錦州の「昭忠祠」と「勅建昭忠祠碑」
むすびに
第Ⅴ部 軍国のメディアと社会の倫理
第21章 従軍記者と戦争報道
はじめに
1 戦争開始と新聞界
2 従軍記者の派遣
3 従軍記者鈴木経勲
4 戦況報告演説会と幻灯器
5 戦争芝居と従軍記者
むすびに
補論6 従軍記者正岡子規と清国金州の句碑
1 子規の従軍
2 子規の句碑
3 金州における子規
4 子規と三崎山の墓碑
第22章 宣伝される忠勇者たち
はじめに
1 原田重吉 —— 平壌玄武門の英雄
2 第十八連隊長佐藤正大佐 —— 牛荘での戦傷
3 忠勇伝の刊行
4 振天府の設置
5 兵卒の事績の表彰
むすびに
第23章 兵卒・遺族と地域社会
はじめに
1 兵卒と地域社会 —— 徴兵慰労会について
2 出征者家族への援護体制
3 出征下士兵・戦病死者への慰労金
4 国民的義捐運動の展開
5 戦病死者と遺族の処遇問題
むすびに
第24章 「義」の民族協同体
はじめに
1 清国兵への視線
2 清国兵俘虜の取り扱い
3 清国負傷兵の救護行動と国際的評価
4 「義」の民族協同体
おわりに
第25章 未来の兵士たち
はじめに
1 戦時下の子供たち
2 運動会と尚武の気風
3 子供のための戦争の話
4 戦争と国民教育
むすびに
終 章 「軍国主義」の起源をめぐって
1 日清戦争とナショナリズム
2 世界史の中の日清戦争
3 日清戦争と明治維新
4 「軍国主義」の起源
5 ジンゴイズムの行方
6 戦争体験の諸相
註
あとがき
図表一覧
索 引
【上巻主要目次】
序 章
第Ⅰ部 第三師団の戦争と戦場の兵卒
第1章 戦時編制と動員体制
第2章 第三師団の出征と戦闘
第3章 征清軍の凱旋と損害
第4章 兵卒たちの戦争
第5章 戦場における日本軍と住民
第Ⅱ部 戦争と死者
第6章 将兵の死と葬送
第7章 戦病死者の招魂祭
第8章 戦争と仏教教団
第9章 仏教忠魂祠堂の建立
第10章 戦地における遺骨回収問題
第11章 「軍国」の文体
補論1 旧陸軍墓地の合葬墓
註