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書くことの代行とジェンダー口述筆記する文学

口述筆記する文学 書くことの代行とジェンダー

A5判 318ページ 上製
価格:6,380円 (消費税:580円)
ISBN978-4-8158-1129-7 C3095
奥付の初版発行年月:2023年08月 / 発売日:2023年08月上旬

内容紹介

谷崎潤一郎をはじめ、口述筆記を行った作家は実は多い。だが、ディスアビリティやケアが絡み合う空間で、筆記者、特に女性の役割は不可視化されてきた。大江健三郎、多和田葉子、桐野夏生らの作品をも取り上げ、書くことの代行に伴う葛藤とジェンダー・ポリティクスを鋭く分析した力作。

著者プロフィール

田村 美由紀(タムラ ミユキ)

1990年 奈良県に生まれる。
2015年 奈良女子大学大学院人間文化研究科博士前期課程修了
2021年 総合研究大学院大学文化科学研究科博士後期課程修了
現 在 国際日本文化研究センター機関研究員、博士(学術)
主な論文に「完結する物語、完結しない声――崎山多美「ピンギヒラ坂夜行」から考える」(坪井秀人編『戦後日本の傷跡』臨川書店、2022年)などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 章 口述筆記する文学
     1 口述筆記とはなにか
     2 〈もう一人の書き手〉を問う
     3 〈書かれた作品〉から〈書かれつつある現場〉へ
     4 本書の構成と概要

  第Ⅰ部 ディスアビリティをめぐる交渉――口述筆記創作の現場から(1)

第1章 ペンを持てない男性作家
     ――谷崎潤一郎の場合
     1 書くことのディスアビリティ
     2 谷崎潤一郎と口述筆記
     3 口述筆記のジェンダー・ポリティクス
     4 リテラシーをめぐる評価と〈書かせる〉こと
     5 署名と実像のはざまで

第2章 「書く機械」になること
     ――伊吹和子『われよりほかに』
     1 筆記者・伊吹和子
     2 書く行為の代行とジェンダー
     3 「書く機械」になるという戦略
     4 作家であること、作家になること
     5 〈選別〉の論理

  第Ⅱ部 書くことの協働性とケア――口述筆記創作の現場から(2)

第3章 ケアとしての口述筆記
     ――筆記者たちの経験から考える
     1 作家の労働空間とその編成
     2 ケアのニーズへの応答――上林暁と德廣睦子
     3 性役割の反転――三浦綾子と三浦光世
     4 関係を編み直す――大庭みな子と大庭利雄
     5 〈書く身体〉に伴走する

第4章 〈書かせる〉でもなく、〈書かされる〉でもなく
     ――武田泰淳『目まいのする散歩』
     1 武田泰淳と武田百合子の評価
     2 歩くことと書くこと
     3 自律的な主体像を疑う
     4 〈書かせる〉と〈書かされる〉のあいだ
     5 他者性と依存性

  第Ⅲ部 言葉を媒介することとジェンダー――テクストのなかの口述筆記

第5章 〈媒体〉となる身体
     ――円地文子「二世の縁 拾遺」
     1 〈媒体〉としての筆記者
     2 女性筆記者の立場性
     3 「戦争未亡人」の性
     4 書記機械であることを裏切る身体
     5 〈媒介/霊媒〉としての女

第6章 再演される言葉
     ――大江健三郎『みずから我が涙をぬぐいたまう日』『水死』
     1 言葉の媒介者
     2 批判者としての女性
     3 自己批判の演劇
     4 声の文字化と女たちの連帯
     5 憑坐として語ること

  第Ⅳ部 代行のポリティクス――口述筆記の向こうへ

第7章 創造性から逃れる
     ――多和田葉子「無精卵」
     1 〈書く〉ことと〈書き写す〉こと
     2 「無精卵」の読まれ方
     3 創造性を欠いた書き手たち
     4 単為生殖としての書くこと
     5 強制的異性愛の綻び
     6 暴力の痕跡を書き写す
     7 〈書き写す〉ことの先へ

第8章 書きかえられる物語
     ――二つの「残虐記」をめぐって
     1 二つの「残虐記」――谷崎潤一郎と桐野夏生
     2 戦後空間のなかの「残虐記」
     3 語り手は何を黙殺するのか
     4 もう一つのクィアな欲望
     5 「言葉」と「想像力」の物語
     6 事件を語り直すこと
     7 想像力の両義性
     8 「傷」をめぐる攻防

終 章 ペンを持たない時代の口述筆記
     1 書字の機械化と身体性
     2 モチーフとしての口述筆記――現代の漫画を例に
     3 交差するフレーム

 注
 あとがき
 初出一覧
 索引


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