社会をつくった経済学者たち スウェーデン・モデルの構想から展開へ
価格:6,930円 (消費税:630円)
ISBN978-4-8158-1097-9 C3033
奥付の初版発行年月:2022年09月 / 発売日:2022年09月中旬
不況・戦争など直面する危機を乗り越え、福祉先進国の礎を築いた経済学者たち。ケンブリッジ学派と双璧をなしたスウェーデン経済学の全体像を、彼らの政治・世論との深いかかわりとともに初めて解明、福祉国家への合意を導いた決定的役割と、現代におけるその変容までを鮮やかに描き出す。
目次
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序 章 スウェーデン社会をつくった経済学者たち
1 スウェーデン・モデルの研究
2 スウェーデン社会への経済学史的アプローチ
3 スウェーデンの経済学史――既存研究と本書の登場人物
4 本書の構成と概要
第I部 黎明から「第1世代」の経済学者へ
第1章 「大国の時代」・「自由の時代」と重商主義
――スウェーデン経済学の黎明
1 「大国の時代」と中央銀行の成立
2 「自由の時代」における経済と学問の振興
3 スウェーデン初の経済学教授ベルチ
4 リンネ的「エコノミー」
5 1760年代の物価安定化論争
6 絶対王政の再開と崩壊
7 スウェーデンの重商主義
第2章 ダヴィッドソンとスウェーデン経済学界の形成
――自由主義の勃興
1 親フランス路線と「国民経済協会」の設立
2 親ドイツ路線と社会保険原理の導入
3 経済理論家ダヴィッドソンの登場
4 経済学雑誌『エコノミスク・ティドスクリフト』
第3章 新マルサス主義者としてのヴィクセル
――「奇矯過激の人」の改革思想
1 ヴィクセル1880年講演の衝撃
2 文化急進主義の1880年代
3 ヴィクセルの就職――カッセルとのポスト争い
4 『経済学講義』第1巻第1章の人口論
5 スウェーデン内外における新マルサス主義の定着
6 「奇矯過激の人」――労働時間論・国防論・私生活
7 社会改革と経済学
第4章 ヴィクセルの貨幣理論
――累積過程への視座
1 『価値、資本及び地代』と『経済学講義』第1巻
2 『利子と物価』における累積過程の理論
3 定義の変更と2つの論争
4 ヴィクセル貨幣理論の革新性と保守性
5 第1次世界大戦前後のインフレ・デフレと政策提言
6 ヘクシャーによる「経済学クラブ」の創設
第5章 カッセルとヘクシャーの保守主義・自由主義
――「第1世代」の知的遺産
1 カッセルとヘクシャー――略伝
2 経済と社会政策への関心
3 国際経済への理論的関心
4 自由主義
5 経済理論と経済史
6 公共論議への貢献
7 経済学の教育者
8 スウェーデン経済学の「第1世代」
第II部 「第2世代」とストックホルム学派の成立
第6章 「経済学クラブ」における世代間対立
――「中間世代」から若手の台頭へ
1 「中間世代」のバッジェ
2 ケインズ『自由放任の終焉』をめぐる議論
3 ミュルダール『経済学説と政治的要素』
4 1920年代終盤の「経済学クラブ」
第7章 リンダールとミュルダールの動学的方法
――ストックホルム学派の初期形成過程
1 リンダールとミュルダール――略伝
2 ミュルダール博士論文「価格形成問題と変動要因」(1927年)
3 リンダール「資本理論からみた価格形成問題」(1929年)
4 リンダール『金融政策の手段』(1930年)
5 ミュルダール「貨幣的均衡について」(1931年)
6 ミュルダールのアメリカ滞在とリンダールの転居
第8章 オリーンの経済学
――貿易理論から貨幣的経済理論へ
1 貿易理論
2 コペンハーゲン大学への就職と自由主義の変容
3 ケインズとの「トランスファー論争」
4 貨幣的経済理論と経済拡張政策への関心
5 ヘクシャー=オリーンの定理
6 「経済学クラブ」の代表者
7 自由党への入党
第9章 失業委員会での協働
――ストックホルム学派の群像
1 失業委員会の設立
2 第1報告書「失業の程度・特徴・原因」と付録・覚書
3 第2報告書作成過程における付録と覚書の作成
4 事務局ハマーショルドと最終報告書
5 失業委員会におけるストックホルム学派
第10章 大恐慌期の金融政策と「新しい財政政策」
――リクスバンク・社民党・経済学者
1 リクスバンクの金融政策
2 社民党政権の始まり
3 ウィグフォシュの「新しい財政政策」とミュルダール
4 「新しい財政政策」の実行
5 金融政策・財政政策の効果
6 1934年という潮目――学者たちの変化
第III部 ケインズ革命とストックホルム学派
第11章 ケインズ『一般理論』の形成とストックホルム学派
――国際的人物交流
1 『貨幣論』から『一般理論』へ
2 ケンブリッジ・ロンドン・ストックホルム
3 ハイエク編論集所収のミュルダール論文
4 LSEのトーマスと若手たち
5 『一般理論』の刊行
6 ケインズのストックホルム来訪
7 未完のケインズ革命
第12章 「先行性論争」とストックホルム学派
――オリーンの『エコノミック・ジャーナル』論文
1 オリーン1937年論文
2 オリーン1937年論文に関するケインズの私信
3 1937年のケインズ
4 スウェーデン経済学界のケインズ『一般理論』評価
5 日本での同時代研究
6 長年にわたる「先行性論争」
7 「スウェーデンにおけるケインズ革命」か?
第13章 ストックホルム学派の衰退
――集団の解散と学術的理由
1 ストックホルム学派の形成――再論
2 ストックホルム学派の解散――次のキャリアへ
3 ストックホルム学派の衰退――学術的要因
4 遅れて刊行された英訳書
5 プラットフォームの変容
6 「集団」の解散と「学派」の衰退
第IV部 スウェーデン・モデルと「第2世代」の経済学者
第14章 スウェーデン・モデルの政策論争
――「社民党対自由党」の福祉国家路線
1 第2次世界大戦とミュルダールのアメリカ論
2 1944年の戦後経済展望
3 戦後経済とレーン=メイドナー・モデル
4 スウェーデン・モデルの成立から成熟へ
5 憲法改正と一院制の導入
第15章 国際社会の平和と「福祉世界」
――冷戦下での中立国の役割
1 国連欧州経済委員会のミュルダール
2 第2代国連事務総長ハマーショルド
3 ミュルダール『福祉国家を越えて』
4 平和国家のSIPRI
5 アメリカ社会への提言
6 1970年代の急進化――社民党長期政権の終焉
7 「福祉国家の危機」とスウェーデン・モデル
第16章 「ノーベル経済学賞」
――リクスバンクの反撃
1 社民党とリクスバンクの対立
2 リクスバンク創立300周年とオスブリンクの企図
3 ミュルダールとハイエクの共同受賞
4 オリーンとミードの共同受賞
5 「ノーベル経済学賞」選考委員会
6 「ノーベル経済学賞」の社会的影響力
終 章 スウェーデンにみる経済学者の社会的影響力
1 スウェーデン経済学史の伝統的特質
2 経済学史からみたスウェーデン社会の成り立ち
3 エピローグ――若干の現状分析・将来展望
参考文献
あとがき
図表一覧
索引