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徳川期から日中開戦まで日本綿業史

日本綿業史 徳川期から日中開戦まで

A5判 692ページ 上製
価格:7,920円 (消費税:720円)
ISBN978-4-8158-1059-7 C3033
奥付の初版発行年月:2022年02月 / 発売日:2022年03月上旬

内容紹介

明治の産業革命をリードし瞬く間に世界市場を制覇した日本綿紡績・織物業の競争力の源泉とは。近代的大紡績企業と、近世から続く農村織物産地や流通を担う問屋・商社などの連携による成長過程を初めて解明、衰退に向かう戦後も視野に、巨大産業の興隆を圧倒的な密度とスケールで描く決定版。

前書きなど

本書の課題は、財閥と並んで戦前期日本の工業化を推進した綿業(綿糸布の製造と流通を担う諸企業から成る産業)の生成と発展を、経済史および経営史の観点から考察することである。対象とするのは、徳川期から第一次世界大戦期を経て一九三七年の日中戦争開始直前までの時期である。ただし徳川期は、綿織物産地の全国的展開を俯瞰する第4章第一節において明治期の前史として論じるにとどめ、本格的な考察は明治期以降に関して進めることにする。

日本綿業についてはこれまで経済史・経営史以外にも経済発展論、技術史、建築史、労働史、女性史などさまざまな分野において、汗牛充棟という語がふさわしいほど多くの研究成果が蓄積されてきた。とりわけ綿紡績業に関しては、良質で豊富な資料を駆使した庄司乙吉・絹川太一・飯島幡司・関桂三・進藤竹次郎らの業界関係者による名著が戦前以来蓄積されてきた一方で、大学等の研究者によって、高村直助『日本紡績業史序説』や山口和雄らによる産業金融史研究をはじめ多数の業績が公刊されてきた。欧米でもゲーリー・サクソンハウス、グスタフ・レニス、セルゲイ・ブランギンスキー(以上の諸氏の専攻は経済発展論ないし計量経済史)、ジャネット・ハンター(女性史)、マイル……

[「序章」冒頭より/注は省略]

著者プロフィール

阿部 武司(アベ タケシ)

1952年生
1982年 東京大学大学院経済学研究科第二種博士課程単位取得退学
 東京大学社会科学研究所助手、筑波大学社会科学系講師、
 大阪大学大学院経済学研究科教授等を経て、
現 在 国士館大学政経学部教授、大阪大学名誉教授、経済学博士
著 書 『日本における産地綿織物業の展開』(東京大学出版会、1989年)
 『近代大阪経済史』(大阪大学出版会、2006年)
 『大原孫三郎』(編著、PHP研究所、2017年)他

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 章 日本綿業の生成と発展
――紡績会社・織物産地・問屋
一 日本経済史・経営史上における綿業の意義
二 本書の構成

第I部 日本綿業の興隆

第1章 近代日本綿紡績業確立の背景
――明治期を中心にみた農村織物業の特質
はじめに
一 明治期農村織物業における原料糸の変遷――手紡糸・輸入機械糸・国産機械糸
二 農村における繊維品の自家生産――兵庫県農村の事例
三 産地綿織物業と景気変動
四 産地綿織物業における三度のイノベーション
おわりに

第2章 近代綿紡績業の勃興と定着
はじめに
一 明治20年代における近代的綿紡績業の発展
二 日清戦後の不況
三 日露戦後の新たな展開
四 財閥と繊維産業
おわりに

第3章 綿紡績業の技術と労働
はじめに
一 イギリスにおける展開
二 アメリカにおける展開
三 日本における展開――大阪紡績会社の事例を中心に
おわりに

補論1 戦前期日本綿業における女性労働
はじめに
一 「女工哀史」
二 「原生的労働関係」の展開
三 綿紡績業の労働条件の急速な改善
四 開明的経営者と政府の役割
五 第一次世界大戦以降の労働運動とILO
六 戦間期の紡績業における女性労働者
おわりに

第4章 産地綿織物業の展開
――徳川期から明治期まで
はじめに
一 徳川時代における産地綿織物業
二 明治前期における産地綿織物業
三 明治中・後期における産地綿織物業
おわりに

第5章 産地綿織物業における問屋制の盛衰
はじめに
一 1880年代における問屋制の確立
二 問屋制の変質と衰退
おわりに

第6章 賃機から力織機工場へ
――明治中・後期における泉南綿織物業の場合
はじめに
一 分析視角
二 泉南における第一次力織機化
三 織元の対応――力織機工場か賃機か?
おわりに

補論2 明治後期の賃機工賃
――大阪府泉南地方の帯谷商店資料
はじめに
一 原資料について
二 集計方法
三 結果とその解釈

小 括 近代日本綿業の形成――近代産業と在来産業の併進

第II部 日本綿業の黄金時代

第7章 戦間期における日本綿業の事業戦略
――紡績業を中心として
はじめに
一 伝統的戦略の展開――水平的結合と垂直的統合
二 新戦略の展開
おわりに

第8章 戦間期における産地綿織物業の躍進
はじめに
一 戦間期日本の産地綿織物業
二 綿織物業の地域類型
三 産地綿織物業の発展戦略
四 日本綿業のなかの産地織物業
おわりに

第9章 今治綿織物業の展開
はじめに
一 今治綿織物業の発展
二 今治綿織物業における同業者団体と工業試験場
おわりに

補論3 備後地方で繊維産業がなぜ発展したのか

第10章 日本綿業と中国市場
――1914~1930年
はじめに
一 第一次世界大戦前後における日本綿業と中国市場
二 第一次世界大戦を画期とする中国紡績業の発展
三 1920年代日本綿業の中国進出
四 1920年代後半以降における中国綿布市場の変容
おわりに――1930年代への展望

第11章 在華日本紡績同業会の活動
はじめに
一 在華日本紡績同業会の設立
二 設立の背景
三 在華日本紡績同業会の活動
おわりに

第12章 綿紡績企業における経営者群像
はじめに
一 和田豊治と富士瓦斯紡績会社
二 資産家大原孫三郎の企業者活動と社会事業
三 大原孫三郎と武藤山治――経営理念と経営管理
おわりに

小 括 日本綿業の世界制覇――大企業と中小企業との連携

終 章 日本の経済発展と綿業
――総括と展望
一 総括
二 展望

資料紹介 『日本綿糸紡績業沿革紀事』
付録1 斉藤恒三宛伊藤伝七書翰
付録2 泉大津織物業の歩み――大野歳雄氏に聞く


あとがき
初出一覧
参考文献
図表一覧
索引


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