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マムルーク朝・オスマン帝国とヴェネツィア人近世東地中海の形成

近世東地中海の形成 マムルーク朝・オスマン帝国とヴェネツィア人

A5判 240ページ 上製
価格:5,940円 (消費税:540円)
ISBN978-4-8158-1053-5 C3022
奥付の初版発行年月:2022年01月 / 発売日:2022年01月下旬

内容紹介

古くから東西交易の要衝として栄えた「レヴァント」。中世から近世への転換のなか、イスラーム国家とヨーロッパ商人の「共生」を支えてきた秩序の行方は? オスマン条約体制や海港都市アレクサンドリアのありようから、異文化接触の実像を明らかにするとともに、東アジアに及ぶ「治外法権」の淵源をも示した力作。

前書きなど

歴史世界としての「東地中海」(ヨーロッパ諸語でいう「レヴァント(Levant)」は、アジア、アフリカ、ヨーロッパの三大陸とインド洋および地中海の二つの海域を相互につなぎ、東アジアに通じる草原ルート、オアシス=ルート、海上ルートが結節していた、東西交通の要衝として特徴づけられる。それゆえこの地域の政治権力と社会経済は、しばしば周辺諸地域の動向と連動し、多宗教・多文化間関係のなかで営まれた。本書の目的は、こうして形成された異文化接触の秩序構造とその変容を、中世から近世への移行期に焦点をあてて明らかにすることにある。

七世紀にアラビア半島から発して八世紀には中央アジアおよびイベリア半島に達した「アラブの大征服」と、その後も周縁各地で見られたイスラーム勢力圏の拡大は、その内外の異教徒との関わりを必然的にともなっていた。これは、イスラーム圏のキリスト教世界に対する境界が長期にわたって前進した東地中海にもあてはまる。七世紀にアラブ人ムスリムはビザンツ帝国(三九五~一四五三)に属していたシリアとエジプトを征服し、その後もビザン……

[「序章」冒頭より]

著者プロフィール

堀井 優(ホリイ ユタカ)

1965年 神奈川県に生まれる
2002年 東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了
2003年 地中海学会ヘレンド賞受賞
 広島修道大学経済科学部准教授を経て
現 在 同志社大学文学部教授、博士(文学)
著 書 『1571年 銀の大流通と国家統合』(共著、山川出版社、2019年)
 Religious Interactions in Europe and the Mediterranean World: Coexistence
 and Dialogue from the Twelfth to the Twentieth Centuries
(共著、
 Routledge、2017)
 『商業と異文化の接触――中世後期から近代におけるヨーロッパ国際
 商業の生成と展開』(共著、吉田書店、2017年)
 『オスマン帝国史の諸相』(共著、東京大学東洋文化研究所、2012年)

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

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凡例

序 章
1 中世から近世へ
2 条約、貿易、海港
3 主要史料と論述構成

第I部 商業特権と条約体制の規範構造

第1章 マムルーク朝最末期エジプトにおけるヴェネツィア人の商業特権
1 史料――勅令および合意書
2 マムルーク朝領の内と外
3 マムルーク朝領内のヴェネツィア人の処遇
むすび

第2章 オスマン帝国・ヴェネツィア間の条約規範の展開
1 史料――ヴェネツィアへのアフドナーメ
2 勢力関係と空間構成
3 オスマン領内のヴェネツィア人の処遇
むすび

第II部 エジプトの支配体制と海港社会――アレクサンドリアの事例研究

第3章 マムルーク朝とエジプトのヴェネツィア人
1 海港の行政と商業
2 積極化する海港政策
3 ヴェネツィア人・スルタン政権の軋轢と交渉
むすび

第4章 オスマン帝国とエジプトのヴェネツィア人
1 オスマン支配体制の形成
2 新たな海港政策
3 オスマン体制下のヴェネツィア人
むすび

終 章

あとがき

参考文献
図表一覧
索引


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