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近世から近代へ交隣と東アジア

交隣と東アジア 近世から近代へ

岡本 隆司:編, 石田 徹:著, 中 純夫:著, 石川 亮太:著, 森 万佑子:著, 朴 漢珉:著
A5判 380ページ 上製
価格:5,940円 (消費税:540円)
ISBN978-4-8158-1044-3 C3022
奥付の初版発行年月:2021年11月 / 発売日:2021年11月中旬

内容紹介

交隣とは、たんに日朝の善隣友好を示すものではない。朝貢一元体制の矛盾の露呈を防ぎ、各国の通交を成り立たせた朝鮮外交の意外な役割から東アジアの秩序体系を明らかにし、西洋の到来によるその解体過程も精細にとらえて、世界史的近代の日・朝・中・琉球の姿を映し出す。

前書きなど

なぜ「交隣」なのか
本書は「交隣」を通じて、東アジアの世界史的近代を語ろうとする試みである。「交隣」とは文字どおりには、隣国との通交という意味にすぎない。けれども歴史学の範疇としては、漢語圏の東アジアにおいて、中国にも日本にも存在しない、朝鮮半島・朝鮮王朝独自の漢語概念・対外関係を指す術語である。

「交隣」という漢語は、『孟子』を典故とするから、語彙じたいは大陸でも列島でも使われることはあった。なかんづく琉球は「交隣」を朝鮮と共有した事例もあって、注目に値する。しかしそう形容されるような対外関係、あるいはその語彙をもって自らの対外関係のありようをいいあらわす発想・観念は、日中ないし他の漢語圏の歴史には見いだしがたい。換言すれば、「交隣」こそ朝鮮半島、とりわけその近世・近代の世界観・秩序体系を体現するものなのである。

朝鮮半島の存在を抜きにして、東アジア全体の対外関係は語れない。だとすれば、朝鮮半島じしん世界観・秩序観も、多かれ少なかれ東アジア全体に影響を及ぼしていたはずであり、「交隣」もまたその例に漏れない。

それなら、そうした「交隣」の内実を明らかにし、変容の過程をたどることが、朝鮮半島の歴史のみならず、その枠をこえて、半島に関わりのある東アジア全体の歴史をよみとく鍵になるであろう。……

[「序章」冒頭より/註は省略]

著者プロフィール

岡本 隆司(オカモト タカシ)

1965年、京都市に生まれる。現在、京都府立大学文学部教授。著書、『近代中国と海関』(名古屋大学出版会、1999年、大平正芳記念賞)、『属国と自主のあいだ』(名古屋大学出版会、2004年、サントリー学芸賞)、『中国経済史』(編著、名古屋大学出版会、2013年)、『出使日記の時代』(共著、名古屋大学出版会、2014年)、『宗主権の世界史』(編著、名古屋大学出版会、2014年)、『中国の誕生』(名古屋大学出版会、2017年、アジア・太平洋賞特別賞、樫山純三賞)ほか

石田 徹(イシダ トオル)

1973年生 島根県立大学国際関係学部准教授
著書 『近世移行期の日朝関係』(溪水社、2013年)

中 純夫(ナカ スミオ)

1958年 京都府立大学文学部教授
著書 『朝鮮の陽明学』(汲古書院、2013年)

石川 亮太(イシカワ リョウタ)

1974年生 立命館大学経営学部教授
著書 『近代アジア市場と朝鮮』(名古屋大学出版会、2016年、日経・経済図書文化賞)

森 万佑子(モリ マユコ)

1983年生 東京女子大学現代教養学部准教授
著書 『朝鮮外交の近代』(名古屋大学出版会、2017年、大平正芳記念賞)

朴 漢珉(パク ハンミン)

1982年生 東北亜歴史財団研究委員
著書 『유길준의 知―人, 상상과 경험의 근대(兪吉濬の知―人、想像と経験の近代)』(共著、高麗大学校出版文化院、2018年)

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

凡例

序 章 「交隣」とは何か [岡本隆司]

第I部 交隣の諸相――近世のプリズム

第1章 交隣と隣交 [石田徹]
――近世対馬における日朝関係認識
はじめに
1 近世~近代移行期日朝関係史研究概観
2 「対馬宗家文書」における「隣交」
3 対馬藩における「日朝関係」認識
4 維新期対馬における「交隣」
おわりに

第2章 北伐と北学 [中純夫]
――近世朝鮮の対清認識
はじめに
1 宗時烈とその門下の中国認識
2 北学派の対清認識と北学思想
3 北学派の宋時烈評価と華夷観念
4 北伐と北学
おわりに

第3章 交隣と貿易 [石川亮太]
――開港前後の海藻輸出
はじめに
1 フノリ・テングサとその利用
2 倭館終末期の対日貿易とフノリ・テングサ
3 釜山開港後の海藻貿易と収税問題の発生
4 警察所による海藻「公貿」とその結末
おわりに

補 論 交隣と信義 [石田徹・岡本隆司]
――通信から欽差へ
はじめに
1 朝鮮側史料における「通信」
2 日本側史料から見た「通信」
3 修信使の派遣
4 欽差大臣へ
おわりに

第II部 交隣の高潮――プリズムの拡大

第4章 交隣の論理と中華 [森万佑子]
――1874年「密咨」の衝撃
はじめに
1 密咨の到着とその内容
2 密咨への反応と朝鮮政府の対応
3 交隣と中華のはざま
おわりに

第5章 朝鮮の対日使節派遣 [朴漢珉]
――使節にみる交隣の変容
はじめに
1 修信使派遣時期の活動と特徴
2 欽差大臣の派遣と交渉
おわりに

第6章 交隣と条約 [石川亮太]
――「自由貿易」と商業税をめぐる日朝交渉
はじめに
1 宮本・趙書簡の成立とその内容
2 海関設置以前の貿易体制と宮本・趙書簡
3 海関設置後の開港場商業と自由貿易
4 二重課税をめぐる争点の明確化と膠着
5 開港場客主制度をめぐる論議の帰結
おわりに

第III部 交隣の運命――プリズムの葛藤

第7章 琉球の「兩屬」から朝鮮の「兩截」へ [岡本隆司]
――「自為一國」をめぐる一考察
はじめに
1 「金山洋文日報」と「自為一國」
2 『三洲日記』と「自主」
3 「琉球処分」と「自為一國」
4 変容とその意味
おわりに

第8章 天津からみる朝鮮の「交隣」 [森万佑子]
――事大における敬礼の模索
はじめに
1 『舊韓國政府外交文書綴』「第七冊」と「第八冊」の概要
2 事大と交隣の交錯
おわりに

終 章 事大と列強のはざまで [岡本隆司]
――「大君主」の興亡
はじめに
1 「大君主」の登場と定着
2 朝鮮の条約締結と君主号
3 「大君主」の変容
4 「皇帝」即位
おわりに


あとがき
文献目録
索引


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