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 大本弾圧事件と戦後日本宗教文化は誰のものか

宗教文化は誰のものか 大本弾圧事件と戦後日本

A5判 352ページ 上製
価格:5,940円 (消費税:540円)
ISBN978-4-8158-1005-4 C3014
奥付の初版発行年月:2020年10月 / 発売日:2020年10月下旬

内容紹介

信仰の“内か外か”を越えて――。最大の宗教弾圧事件の記憶は戦後、いかに読み直され、何を生み出してきたのか。教団による平和運動を導くとともに、アカデミアにおける「民衆宗教」像の核ともなった「邪宗門」言説の現代史から、多様な主体が交差する新たな宗教文化の捉え方を提示。

前書きなど

一九四五年(昭和二〇)の秋、大本の聖師・出口王仁三郎は、一〇年前の弾圧事件(第二次大本事件)で壊滅させられた京都府何鹿郡綾部町の神苑跡地、そして神体山として崇められてきた本宮山に足を踏み入れた。事件後、綾部・亀岡・穴太の教団所有地は、二束三文で強圧的に“売却”させられ、綾部の神苑は何鹿郡設グラウンドへと改造されていた。当時、すでに七十代なかばとなり、高血圧症にも苦しんでいた王仁三郎は、側近の青年が運転する自転車のサイドカー(「更生車」と呼ばれていた)に乗って移動していたという。このときも更生車を使っていたが、神苑の西門にあたる場所に来ると車を降り、みずからの足で歩きだした。

グラウンドの周囲には桜の木が植えられていた。王仁三郎はその桜をすべて切り、代わりに梅と松を植えるよう「きつく」命じている。そして神苑を新たに「梅松苑」と名づけたのである。梅と松は開祖・出口なお以来の大本の象徴であり、桜はここでは弾圧の記憶、ひいては天皇制国家を象徴しているといえるだろう。王仁三郎は天皇制国家の無残な敗北、そして梅松苑の新たな出立を告知するのだ。

グラウンドを横切って、青年に尻をおされつつ本宮山に登っていく。山頂の木々を眺めながら、王仁三郎は「建……

[「序章」冒頭より]

著者プロフィール

永岡 崇(ナガオカ タカシ)

1981年、奈良県に生まれる。2004年、大阪大学文学部人文学科卒業。2011年、大阪大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。南山宗教文化研究所研究員、日本学術振興会特別研究員などを経て、現在、駒澤大学総合教育研究部講師、博士(文学)。著書、『新宗教と総力戦――教祖以後を生きる』(名古屋大学出版会、2015年)、『日本宗教史のキーワード――近代主義を超えて』(大谷栄一・菊地暁との共編、慶應義塾大学出版会、2018年)他

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

凡例

序 章 大本弾圧事件の戦後
一 事件の残骸
二 〈事件〉が切りひらく世界
三 読みの運動と解釈共同体
四 協働表象が生じる場
五 結節点としての大本七十年史編纂会
六 本書の構成
七 戦前期大本の歩み

第1章 戦後大本と「いまを積み込んだ過去」――前進と捻じれの平和運動
はじめに
一 大本の平和運動をとらえるためのふたつのスケール
二 七王も八王も王が世界に在れば……
三 出口伊佐男の世界連邦主義
四 人類愛善-世界連邦運動の展開
五 人類愛善-原水禁運動のはじまり
六 出口榮二の平和思想
七 人類愛善運動とアジア主義
八 平和運動の軋み
九 破裂
おわりに

第2章 〈事件〉をめぐる対話
はじめに
一 「神さまの摂理」としての〈事件〉
二 大本邪教説の再構成
三 予備調査へ
四 〈事件〉をめぐる対話
おわりに

第3章 宗教文化は誰のものか
はじめに
一 大本七十年史編纂会の形成
二 “民衆宗教”という表象
三 教祖の人間化
四 戦争と平和
五 〈事件〉は誰のものか
六 『大本七十年史』とその後
おわりに

第4章 “民衆”の原像――出口榮二と安丸良夫
はじめに
一 アイヌへのまなざし
二 “土”の文化と縄文
三 「万教同根」とアジア主義
四 読みの運動のなかの『出口なお』
五 無意識としての神
六 筆先の「改編」
七 “民衆”の原像
おわりに

第5章 “民衆宗教”の物語の起源――教祖をめぐる欲望の系譜学
はじめに
一 新宗教研究と複数の経路
二 単層的な教祖像
三 深層への遡行
おわりに

第6章 反倫理的協働の可能性――高橋和巳『邪宗門』を読む
はじめに
一 高橋和巳の衝動とひのもと救霊会
二 ひのもと救霊会の構造
三 〈事件〉の変奏
四 協働の反倫理性
おわりに

終 章 批判的宗教文化への視角
一 “いま”を生きる大本
二 苦闘の軌跡へ
三 捻じれた連続性
四 “本質”をめぐる解釈闘争
五 戦後社会のなかの“民衆宗教”
六 分析的介入の課題


大本関連年表
あとがき
図表一覧
索引


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