中世日本の世界像
価格:7,480円 (消費税:680円)
ISBN978-4-8158-0902-7 C3095
奥付の初版発行年月:2018年02月 / 発売日:2018年02月下旬
芸能から魔界まで――。絵巻や曼荼羅、物語や儀礼のなかで生動する男女・仏神・異類たち。それらの存在を支えた世界像とはいかなるものだったのか。説話や音楽から、性や童子、さらには聖地・霊地まで、時代とともに揺れ動く文化の諸相を一望し、中世的世界を多面的にとらえた渾身の書。
阿部 泰郎(アベ ヤスロウ)
1953年、横浜に生まれる。現在、名古屋大学大学院人文学研究科教授、人類文化遺産テクスト学研究センター長。著書に『湯屋の皇后』(小会,1998)、『聖者の推参』(同,2001)、『中世日本の宗教テクスト体系』(同,2013)など。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
序 章 はじまりのテクスト
総説Ⅰ 中世日本の世界像
はじめに ——『信貴山縁起』 絵巻の世界
1 行基日本図から聖徳太子絵伝の世界像へ
2 三国伝来の生身仏縁起 —— 善光寺阿弥陀と清凉寺釈迦
3 三国世界観の言説化と図像化
4 曼荼羅縁起と天神縁起の世界像
5 巡礼/回国する聖たち
6 勧進により建立される中世世界
総説Ⅱ 中世的世界の形成
はじめに —— 年代記という座標から
1 法勝寺をめぐって
2 宝蔵と知の類聚
3 祝祭と霊地参詣および勧進
第Ⅰ部 芸能の世界像
第1章 中世の音声と音楽 —— 聖なる声
1 神々の声
2 仏法の声
3 今様の声
4 融けあう神と仏の声
5 神/仏を歌う聖ヒジリ
第2章 中世の芸能と童子 ——〈聖なるもの〉 と童子
1 遊ぶこどもの声
2 天神と童子
3 観音と童子
4 童 行 者
5 逸脱する童子
第3章 中世の性と異性装 —— 性の越境
1 神と英雄の異性装
2 結界破りの女
3 芸能における性の越境
4 性を越境する物語
第4章 中世の王権と物語 —— 注釈と日本紀
1 日本紀という運動
2 中世注釈の重層性
3 「日本紀」 と 「日本国大将軍」
第Ⅱ部 知の世界像
第5章 中世的知の形態 —— 説話の位相
1 何ものかをもたらす 〝説話〟
2 〝説話〟 という枠組
3 物語の 〝説話〟 化
4 媒介としての 〝説話〟 と中世説話集の成立
5 潜在する枠組 —— 学問体系の中の 〝説話〟
第6章 中世的知の様式 —— 日本における対話様式の系譜
1 対話様式テクスト論
2 宗教テクストの方法としての対話様式
3 語られたテクストと語りを書くテクスト
第7章 中世的知の集成 —— 寺院聖教の世界
1 次第を読む
2 中世寺院における知的体系の展開
第8章 中世的知の統合 —— 慈円作 『六道釈』 をめぐりて
1 承久の乱まで
2 『六道釈』 解題
3 承久の乱の後
4 二十五三昧と和歌
三千院円融蔵 『六道釈』 翻刻
第Ⅲ部 仏神の世界像
第9章 中世の仏神と曼荼羅 —— 密教と神仏習合の世界
1 霊地の図像学
2 神道曼荼羅の構造と象徴体系
第10章 中世の霊地と縁起 —— 元興寺と長谷寺
1 元興寺の縁起と伝承
2 長谷寺の縁起と霊験記
第11章 中世の浄土と冥界 ——「往生」 というテクスト
1 浄土願生者の夢と冥界巡り
2 山中他界の夢 —— 浄土と地獄の往来
3 霊地の宗教空間とその運動 —— 南北軸と東西軸の焦点
4 霊験所に顕われる像 —— 影向と感得
5 往生を妨げるもの ——『発心集』 における往生と魔
6 往生する西行というテクスト
第12章 中世の魔界と絵巻 ——『七天狗絵』 とその時代
1 釼阿写本と絵巻
2 『七天狗絵』 を読む
3 抗争するテクスト
4 『七天狗絵』 の亀裂
終 章 中世世界像の鏡 —— 縁起絵巻というメディア
注
あとがき
初出一覧
図版一覧
索 引