京大式サイエンスの創り方 狙ってもできないことがある
価格:1,980円 (消費税:180円)
ISBN978-4-8140-0408-9 C1040
奥付の初版発行年月:2022年03月 / 発売日:2022年04月中旬
2016年、京都大学理学研究科で型破りな教育プログラムが始動した。事前にゴールは定めないし、成果は出るか出ないかわからない。そんな「狙わない」知の冒険こそが、真に新しい研究を創出するのだという。溢れる好奇心を旗印に集ったメンバーが、数理という共通言語を介して交流しながらその先にある何かを追求する。京大理学が挑む知の航海記。
目次
読者のみなさんへ――本書の読み方 [坂上 貴之]
第Ⅰ部 視る──百論は一見にしかず
第1章 生き物の形を数理で探る [高橋 淑子/髙瀨 悠太]
忘れられない論文
ゆるキャラでいく
ニワトリの胚発生
金字塔を自分たちのものに
本物を目で
学部生の活躍
狙ってもなかった効果
基礎科学のための教育とは
第2章 大自然の中に心揺さぶる数理を見つける [小山 時隆/市川 正敏/松本 剛]
闇夜に光るファンタジー──ホタルの明滅パターンを求めて亜熱帯の島へ
ドローン墜落記
鳥取砂丘の空へ──初めての風紋観察
砂の模様を数理で見る
再び鳥取砂丘の空へ──解析
できる画像取得を目指して
次なる展開へ──三度目の風紋観測
ドローンと身体で見つける流氷の不思議
まとめにかえて
第3章 医学と数物科学の融合に挑む [田中 求/カレル・シュワドレンカ]
はじめに──医学と数物科学はそもそも「かけ離れた存在」なのか?
研究に立脚した教育プログラム「医学と数物科学の融合」
病理画像の数値化・数式化を目指して
スタディグループの二つの柱
参加学生の活動成果
スタディグループから研究への展開
医学と数物科学の融合──なんで京大でやるの?
新たな学問的流れを生み出す
まとめにかえて──若い読者、研究を志す学生へのメッセージ
第Ⅱ部 集う──科学の異言語交流
第4章 統計サンプリングを使いこなす [林 重彦]
次元の呪い
習うために慣れろ
視野を広げる
Different strokes for different folks
相互理解の基盤としての数理
タンパク質構造モチーフの判定
分子ダイナミクスシミュレーションと「変な」水分子の仮想実験データ同化
データ科学と理学
第5章 データ同化で何ができるか [三好 建正]
講義型スタディグループの狙い
データ同化って何?
データ同化の仕組み
データ同化は「誤差」の数理
「誤差」とは何か
データ同化で行う情報の重ね合わせ
観測していない変数を推定する
アンサンブル予報と予測可能性
カオス力学系とデータ同化
データ同化で何ができるか
身をもって学ぶデータ同化講義
データ同化を学んで世界を変える
第Ⅲ部 拓く──前人未想の世界を求めて
第6章 VRで見る・3Dで触る先端科学 [稲生 啓行]
VRとは?
初めてのVR
対象(3Dモデル)の作り方
活動開始
作品紹介
完成度・インターフェイスについて
稲生の作品たち
3D印刷
3Dクリスタル
おわりに
第7章 自然科学と圏論の関係を探る [佐々 真一]
背景
自然科学のための圏論に向けて
圏論と熱力学
展望
第8章 「狙ってもできないこと」を狙う [太田 洋輝]
化学反応の舞台を用意する
細胞内現象を数理で描く
新しい共通言語の獲得
化学反応を変えてみる
再び化学反応を変えてみる
「わからない」が触媒となる舞台
雑談から研究へ
座談会 とらわれない科学の心を育む
[國府 寛司/佐々 真一/高橋 淑子/田中 耕一郎/林 重彦/余田 成男/坂上 貴之]
「狙ってもできない」という発想
「道具」を介したコミュニケーション
垣根を越えた雑談
数理が活かせる分野は広大な未開拓地
先生も一緒に違う分野に飛び込む、遊び心
成果を求めず面白がるという贅沢
次に繋げていくために
理学教育としてのMACS教育プログラム [坂上 貴之]
京大理学部の教育理念──ある学生の目線から
理学の特徴と京大理学部における教育理念
京都大学理学部の教育理念──緩やかな専門化
専門教育の光と影
現代の世界と理学──自然科学をめぐる学問の動向
MACS教育プログラムの理念──緩やかな《非》専門化
「狙ってもできない」ことを支援する教育プログラム
各スタディグループの位置づけ
MACSの先にあるもの──SACRA学際融合部門 自発的な組織改編
最後に
刊行によせて [國府 寛司]
編集後記 [MACS教育プログラム実行委員会]
執筆者一覧