生態人類学は挑む SESSION3
病む・癒す
価格:3,740円 (消費税:340円)
ISBN978-4-8140-0378-5 C3339
奥付の初版発行年月:2021年12月 / 発売日:2021年12月中旬
ネアンデルタール人が遺体に花を添えるようになってから“20万年”。逃れられない「生老病死」が現代の西洋医学ではカバーできない広がりを持つのと同じくらい、人々は様々な祈りや癒しを生み出してきた。人類にとって病とは悪か? 疫禍の不安と恐れのなかで、「病む・癒す」を見つめる。
稲岡 司(イナオカ ツカサ)
佐賀大学名誉教授.東京大学大学院医学系研究科博士課程修了,博士(保健学).主な著作に,「トンガ人の肥満」(『ネイチャー・アンド・ソサエティ研究 第3巻 身体と生存の文化生態』第4章,海青社,2014年,141-159頁),Inaoka, T., Matsumura, Y. and Suda, K. 2007. “Tongan obesity: causes and consequences,” In: Ryutaro Ohtsuka and Stanley J. Ulijaszek. (eds.) Health Change in the Asia-Pacific Region. UK: Cambridge University Press, pp.127-146.などがある.
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
序 稲岡 司
第Ⅰ部 霊長類の病む・癒す
第1章 ルビー一家の闘病記—野生チンパンジーの「病い」の経験と病原体を介した「人間」との混淆[花村俊吉]
1 レアの死
2 2006年の感染症の流行
3 ルビー一家の闘病の記録
4 チンパンジー社会における「病い」の経験
5 「人間」と「自然」の混淆
第2章 医療診断なきチンパンジー社会の「障害」について[松本卓也]
はじめに
1 XT11の診断録(カルテ)
2 「診断」を疑う―自立志向の発達という蜃気楼
3 チンパンジー社会におけるXT11―やりとりの地平へ
おわりに
第Ⅱ部 個体を脅かす狭義の病
第3章 狩猟採集社会における健康と医療—バカが膨大な薬の知識をもつ理由[服部志帆]
はじめに
1 調査地と調査対象
2 調査方法
3 結果
4 考察
おわりに
第4章 パプアニューギニア北西部沿岸に住む人びとの病気と治療行動[塚原高広]
はじめに
1 アラペシュの人びとの生活
2 アラペシュにおける治療行動
おわりに
第5章 身体の不調に対処する—ラオス南部農村の事例[藤村美穂]
はじめに
1 ラオス南部農村の医療の実態
2 村びとたちの病いへの対処
おわりに
第Ⅲ部 社会を脅かす広義の病
第6章 先史時代の「病み」—縄文人の口腔病理からみえる食生活[佐宗亜衣子・近藤 修・米田 穣]
はじめに
1 縄文人の歯周病と虫歯
2 縄文人の口腔衛生指標における経時変化
3 古人骨の食性分析と口腔衛生指標
おわりに
第7章 ミルクから見る適応と進化—フィリピンにおける水牛ミルク摂取と乳糖不耐症[辻 貴志]
はじめに―「乳糖不耐症」とは何か?
1 乳糖不耐症に関する先行研究
2 調査地と調査の概要
3 調査結果
4 「病い」,「癒し」と乳糖不耐症
5 結論
第8章 社会の変容と子どもの栄養・成長—西ジャワ農村の事例[関山牧子]
はじめに
1 社会環境と子どもの成長
2 調査地域の概要と地域の子どもの栄養・成長
3 調査地域の変化(2000~2015年)
4 子どもの栄養・成長の変化(2000~2015年)
5 西ジャワ農村の社会変容と子どもの栄養・成長
おわりに
第Ⅳ部 他集団との共存
第9章 新たな環境への適応過程—タイにおける焼畑民モンの移住と生業変化[中井信介]
はじめに
1 タイにおける焼畑民モン
2 移住と人口の動態
3 定住化とその後の生業
4 定住化とその後の家畜利用
5 儀礼と食事の現在
6 考察
第10章 野生の保護動物との事故—スリランカ中部乾燥地帯におけるヒト・ゾウ紛争[Anuradha Jayaweera,藤村美穂,稲岡 司]
はじめに
1 スリランカにおけるゾウと人間の衝突―どこで起こるのか
2 IHECを抑制するための農民の行動
3 スリランカにおけるIHECを減らす方策
終 章 「病む・癒す」が持つ意味[稲岡 司]
1 誰が「病む・癒す」か?
2 人はどうやって「病む・癒す」をしてきたか
3 「狭義の病」と「広義の病」の意味づけ
4 「癒し」の効果とコスト・パフォーマンス
5 そもそもなぜ病気があるのか
6 新型コロナウイルス感染症に関する補足と「病と癒し」の将来
索 引
執筆者紹介