新・動物記4
夜のイチジクの木の上で フルーツ好きの食肉類シベット
価格:2,420円 (消費税:220円)
ISBN978-4-8140-0356-3 C0345
奥付の初版発行年月:2021年10月 / 発売日:2021年10月上旬
夜の熱帯雨林、樹上数十メートルの枝でイチジクを貪り食うシベット。胴長短足の体に長い尾をもつ彼らは、地上と樹上を自在に往来し、食肉目なのになぜか果物をよく食べ、毎日下痢をしているらしい。なぜ果実にこだわるのか? 熱帯雨林の生態系を支えるイチジクとの関係は? 8年間に及ぶ怒濤の追跡から見えてきた、不器用で中途半端、だからこそ強い彼らの生き様。
中林 雅(ナカバヤシ ミヤビ)
2015年、京都大学大学院理学研究科博士課程修了(博士(理学))。日本学術振興会特別研究員(PD)などを経て、現在は広島大学大学院先進理工系科学研究科助教。幼少期から人よりも動物と接することを好んだ。高校2年生時に参加したボルネオジャングル体験スクールをきっかけにシベットの研究者を志し、現在に至る。今ではシベットに近づくとアレルギー反応によりくしゃみがとまらず、姿を思い浮かべると脳内でにおいが再現され、吐き気を催すようになった。シベット研究のあとはイチジクを経て、人と野生動物の軋轢に研究テーマが移行しつつある。2020年、「半着生イチジクの種子散布機構」に関する研究で第24回日本熱帯生態学会吉良賞奨励賞を受賞。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
巻頭口絵
はじめに
1章 おもしろそうな動物、シベット
1 篠山の野山で
2 目覚めよ、ブタ
3 シベットとの出会い
4 祖母との約束
2章 夜の森へ―シベットを追いかけろ
1 万全を期して調査地に入る
修士研究テーマの決定
調査方法の検討
タビンへ
2 タビンの強者たち
つると棘
アリ
3 はじめての追跡、そして撃沈
調査路の作成
シベットの居場所の推定
4 熱帯雨林の洗礼
作戦の練り直し
ヤミスズメバチに刺される
シベット研究の難しさ
5 パームシベットが好む環境
森林内部と道路沿い
パイオニア植物の果実
6 悩みの日々
3章 大きなイチジクの木の下で―共存の秘密に迫る
1 原点の森、ダナンバレーへ
博士研究テーマの決定
シベットを待ち伏せる
罠とプレゼント
2 怒涛の55徹
夜間張り込みの装備
夜も昼も見逃せない
3 シベットの採食行動の特徴
シベットの苦労
果実食に向いていない?!
4 あっという間の7徹
イチジクの饗宴
夜に長居するシベット
5 不器用なシベットのびっくり技
肥えろ
採食果実の特徴
パンダに負けるな
6 シベットの個体間関係
パームシベットの個体間関係
ミスジパームシベットの個体間関係
シベットの異種間関係
7 雲の上に手が届いた
大中小ビントロングとの再会
大ビントロングの追跡
8 ダナンバレーとの別れ
9 シベット3種の共存機構
利用環境と食物の差異
イチジクの魅惑
4章 森を育むシベット、シベットを育む森
―種子散布者の正体を追う
1 スーパーヒーロー・イチジク
新たな研究テーマ
イチジクとコバチの契約書
イチジクでつながる生態系
半着生イチジクの種子散布
2 新たにマリアウの森へ
苦しかった7か月
新たな調査地
マリアウでもっとも過酷なアクティビティ
3 樹上60メートルの糞探し
本題に取り掛かる
決死のテナガザル尾行
サイチョウを追ってジャングルを爆走する
4 有効な種子散布者とは
研究の背景
量と質
ビントロングは一日13万個の種を撒く?!
動物に食べられることの利点
半着生イチジクの運命を決定する散布環境
距離より場所
5 巷で流行りの総合的な有効性
ビントロングは引っ張りだこ
大型種子散布者の役割
6 ここまでわかったビントロングの生態
異端児ビントロングとイチジク
謎の答え合わせ
5章 中途半端の強み
1 食性を暴く
約束の動物博士
雑食とイチジク食
2 改めて共存機構を考える
競合を避ける方法
中途半端が最適
3 森と生き物と私
森とお化け
日本人と絵本
町での短所が森での長所に
4 おもしろさ
Column 1 ボルネオ島の棘植物たち
Column 2 イチジクの森へようこそ
Column 3 ビントロングの捕まえ方
おわりに
参考文献
索引