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植民地法における「日本国民」の定義帝国法制秩序と樺太先住民

帝国法制秩序と樺太先住民 植民地法における「日本国民」の定義

A5判 246ページ 上製
価格:4,180円 (消費税:380円)
ISBN978-4-7985-0327-1 C3032
奥付の初版発行年月:2022年03月 / 発売日:2022年03月中旬

内容紹介

19世紀半ば以降、日本とロシアはサハリン島に進出し、以後同島は両国の国境地域となった。近世末の日露雑居期から第二次大戦までに起きた度重なる国境変動は、アイヌ、ウイルタ、ニヴフ、エヴェンキなど現地先住民の生活に大きな影響を与えた。

日本の主な支配地域であったサハリン南部(「樺太」)の先住民は、その少数性などから日本の植民地政策上さほど重要視されておらず、台湾や朝鮮のような植民地統治に対する激しい抵抗もみられなかった。また、第二次大戦後、台湾や朝鮮の民族籍を持つ者は平和条約発効とともに日本国籍を喪失したが、樺太の先住民の一部は戦後も日本国籍の保持が認められた。

このように樺太先住民は、台湾・朝鮮と異なる植民地としての歴史的背景を持つが、国民統合や戦後補償の観点から従来の植民地研究のなかでは台湾・朝鮮と同じ枠組みで語られることが多かった。そのようななかで本書は樺太先住民に対する法政策に注目し、帝国法制のなかで「辺境」の先住民がいかなる法的地位の変遷をたどったのか、その関連法の制定と運用をみていき、法秩序上の「国民」とは何か分析する。

前書きなど

日露両国のはざまで
国境の先住民がたどった法的地位の
変遷を探る。

アイヌ、ニヴフ、ウイルタ、エヴェンキなど樺太先住民の
臣民化過程や、彼らへの法適用の実態から、
近代における国家と国民の「紐帯」とは何かを問い直す。

(帯より)

著者プロフィール

加藤 絢子(カトウ アヤコ)

2012年 日本学術振興会特別研究員(DC2)
     九州大学大学院比較社会文化研究院博士後期課程単位取得退学
2015年 九州大学百年史編集室テクニカルスタッフ(~2017年)
2019年 博士(学術、九州大学)
     九州大学大学院比較社会文化研究院特別研究者(~現在)
2020年 九州国際大学 非常勤講師(~現在)

主要論文:「樺太先住民の国籍:無国籍から日本臣民ヘ」(『北海道・東北史研究』第8号、2012年)
主要著書:「『樺太庁報』にみるサハリン先住民」(E.A.イカニカワ、A. A.ステパネンコ編『文学と定期
      刊行物におけるサハリンとクリル諸島 研究論文集成』サハリン総合大学、分担執筆、2013年)

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 章 植民地研究と法

 第1節 従来の植民地法研究の視角
 第2節 植民地研究における樺太
 第3節 本書の構成

第1章 日露のサハリン領有と先住民への対人主権

 第1節 日露によるサハリン島の共同領有
 第2節 自国民としての保護
 第3節 ロシア帝国臣民としての配慮

第2章 異法域としての樺太の誕生

 第1節 樺太の統治方針と特例規定
 第2節 漁業権にみる保護政策の背景

第3章 先住民の法的地位の「内地化」過程

 第1節 旧慣調査の状況と近代法の適用
 第2節 自治制度の整備にともなう先住民の法的地位の把握

第4章 先住民の越境と集住地の形成

 第1節 北樺太撤退と先住民の越境
 第2節 集住地「オタス」の形成

第5章 先住民の国籍  無国籍から日本臣民へ  

 第1節 領有初期の樺太先住民の国籍  日露講和条約と政府の認識  
 第2節 ソ連国籍の確認と先住民による請願運動
 第3節 日露講和条約の再解釈

第6章 先住民の引揚げ

 第1節 樺太先住民の「引揚げ」
 第2節 引揚げ後の状況

第7章 帝国臣民の定義

 第1節 戦前の臣民の定義
 第2節 戦後の臣民の定義

第8章 先住民の就籍とその法理

 第1節 戦後の帝国臣民の法的地位
 第2節 樺太先住民の就籍における戸籍と国籍の法理
 第3節 帝国法制の法理における日本国籍の得喪

終 章 樺太における属人法の性質

 第1節 サハリン島をめぐる日露統治と先住民の国籍
 第2節 内地人社会の形成と先住民の法的地位
 第3節 平和条約と樺太先住民の就籍の法理

 あとがき
 参考文献
 注
 索 引


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