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工場跡地から都市を再生する米国のブラウンフィールド再生

米国のブラウンフィールド再生 工場跡地から都市を再生する

B5判 388ページ 上製
価格:8,580円 (消費税:780円)
ISBN978-4-7985-0227-4 C3052
奥付の初版発行年月:2018年03月 / 発売日:2018年03月中旬

内容紹介

米国北東部・中西部の衰退工業地域(ラストベルト)では、1980年代から土壌汚染を抱えた工場跡地が遺棄され、深刻な都市問題となった。土壌汚染の存在が隘路となり「塩漬け」になった工場跡地は、「ブラウンフィールド」と呼ばれ、産業を失った工業都市の衰退を加速させた。そのため、ブラウンフィールドの再生は、1990年代以降の米国の主要な政策課題となり、現在に至るまで手厚い再生支援が展開されている。

本書は、再生を支える政策と再生の現場である中小工業都市の取組を中心に、米国のブラウンフィールド再生の全容を描くものである。第一部では、先進州や連邦政府の関係者への取材を通して、「縦割り」や連邦・州・自治体の違いを乗り越えて環境保護と都市再生を両立する革新的な再生政策の形成過程を解説する。第二部では、環境問題に加えて人口減少と雇用喪失に立ち向かい、都市再生を実現したラストベルトの工業都市(マサチューセッツ州ローウェル・コネチカット州ブリッジポート・ニューヨーク州バッファロー)を事例に、「負の遺産」を「再生の資源」に転換した都市デザインの手法を分析する。

著者プロフィール

黒瀬 武史(クロセ タケフミ)

東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻修士課程修了、株式会社日建設計都市デザイン室、東京大学
大学院助教を経て、2016年から九州大学大学院人間環境学研究院都市・建築学部門准教授。近年の主な
研究分野は「ブラウンフィールドの再生」と「人口減少時代の都市デザイン」。

共著に『まちを読み解く  景観・歴史・地域づくり  』(朝倉書店、2017年)、『都市経営時代のアー
バンデザイン』(学芸出版社、2017年)、『アーバンデザインセンター  開かれたまちづくりの場  』
(理工図書、2012年)など。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序章 工業都市の再生とブラウンフィールド問題

 0.1 本章のねらい
 0.2 本書の構成
 0.3 ブラウンフィールド再生を考えるうえでの課題
 0.4 なぜ米国のブラウンフィールド再生政策なのか
 0.5 本書の特徴

 第1部 米国のブラウンフィールド再生政策

1章 米国の土壌汚染地対応の枠組み

 1.1 本章のねらい
 1.2 米国連邦ブラウンフィールド法の定義
 1.3 州政府によるブラウンフィールドの考え方
 1.4 米国におけるブラウンフィールドの考え方
 1.5 連邦政府・州政府・自治体の役割
 1.6 米国の土壌汚染地対応の枠組みとブラウンフィールドの位置付け

2章 ブラウンフィールド再生政策の変遷

 2.1 本章のねらい
 2.2 スーパーファンド法の制定とブラウンフィールド問題の発生
 2.3 ブラウンフィールド問題の発生と第1世代の政策による対応
 2.4 ブラウンフィールド再生政策の変化と第2世代政策の発展
 2.5 小括:米国ブラウンフィールド再生政策の変遷と特徴

3章 ブラウンフィールド再生政策の実態

 3.1 本章のねらい
 3.2 連邦政府の再生政策の概観
 3.3 省庁間の連携を促す制度
 3.4 小括:連邦政府のブラウンフィールド再生政策
 3.5 州政府の再生政策の概観
 3.6 マサチューセッツ州の再生政策
 3.7 ニュージャージー州の再生政策
 3.8 ニューヨーク州の再生政策
 3.9 小括:3州の政策の比較と州政府の役割

4章 ブラウンフィールド再生政策の特徴

 4.1 分析の枠組み
 4.2 米国のブラウンフィールド再生政策の実態とその手法
 4.3 ブラウンフィールド再生政策の進化
 4.4 各行政機関の役割分担と連携

 第2部 米国のブラウンフィールド再生の実態

5章 米国北東部を対象とした事例分析の枠組み

 5.1 本章の目的と構成
 5.2 自治体によるブラウンフィールド再生の分析の枠組み
 5.3 ケース・スタディ対象の選定
 5.4 ケース・スタディ都市の位置付け

6章 コネチカット州ブリッジポート市

 6.1 分析の枠組みと基礎的情報の整理
 6.2 ブリッジポート市の再生戦略1:全米ブラウンフィールド調査パイロット
 6.3 ブリッジポート市の再生戦略2:自治体の都市計画と再生戦略の関係
 6.4 ダウンタウン周縁部のブラウンフィールド再生
 6.5 West End 地区
 6.6 East Side 地区とEast End 地区
 6.7 小括:ブリッジポート市のブラウンフィールド再生

7章 マサチューセッツ州ローウェル市

 7.1 分析の枠組みと基礎的情報の整理
 7.2 ローウェル市のブラウンフィールド再生事業と公的支援
 7.3 ローウェル市の再生戦略1:ブラウンフィールド再生対象地区の抽出
 7.4 ローウェル市の再生戦略2:自治体の都市計画と再生戦略の関係
 7.5 北運河地区
 7.6 Acre 地区
 7.7 JAM 地区
 7.8 Tanner St. 地区
 7.9 小括:ローウェル市のブラウンフィールド再生

8章 ニューヨーク州バッファロー市

 8.1 分析の枠組みと基礎的情報の整理
 8.2 バッファロー市のブラウンフィールド再生事業と公的支援
 8.3 バッファロー市の再生戦略:自治体の都市計画と再生戦略の関係
 8.4 ダウンタウンとその周縁部
 8.5 South Buffalo 地区1:BOA以前の取組
 8.6 South Buffalo 地区2:BOA以降の分析
 8.7 バッファロー市内のBOAの取組
 8.8 小括:バッファロー市のブラウンフィールド再生

9章 ブラウンフィールドを抱える都市の再生

 9.1 都市全体のブラウンフィールド再生戦略
 9.2 ブラウンフィールド再生における計画技法
 9.3 公的支援の利用実態とその意義

結章 環境保護と都市計画の連携が生み出した米国のブラウンフィールド再生政策

 10.1 本書が明らかにした論点
 10.2 事例都市の分析を踏まえた米国のブラウンフィールド再生政策
 10.3 ブラウンフィールド再生における環境保護行政と都市計画行政の連携
 10.4 ブラウンフィールド再生政策継続の背景
 10.5 日本への示唆
 10.6 本書の限界と展望

 あとがき
 索 引


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