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問いとしての尊厳概念

問いとしての尊厳概念

A5判 574ページ 上製
価格:6,380円 (消費税:580円)
ISBN978-4-588-15137-8 C1010
奥付の初版発行年月:2024年03月 / 発売日:2024年03月下旬

内容紹介

これまで「尊厳」概念の議論は、生命倫理や医療倫理の領域で、欧米圏での議論が中心であったが、本論集はその枠組みを超えて、高齢者やジェンダーなどの社会問題から、人権、正義、法、プラトンやハイデガーなどの哲学における概念の再構築、儒教、仏教、イスラーム、そして文学や動植物ら被造物の「尊厳」を論じる。問いを新たに惹起して諸問題の議論を継続する「問いとしての尊厳概念」を創出する。

著者プロフィール

加藤 泰史(カトウ ヤスシ)

加藤 泰史(カトウ ヤスシ)
1956年生まれ。名古屋大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。椙山女学園大学国際コミュニケーション学部教授、一橋大学名誉教授。哲学・倫理学。『人文学・社会科学の社会的インパクト』(共編著、法政大学出版局、2023年)、『スピノザと近代──ドイツ思想史の虚軸』(編著、岩波書店、2022年)、Kant’s Concept of Dignity, Berlin/Boston: De Gruyter, 2019 (Gerhard Schönrichとの共編著)、ほか。

上記内容は本書刊行時のものです。

・執筆者・訳者紹介

ライナー・フォアスト(Rainer Forst)
フランクフルト大学教授(政治哲学)。Kontexte der Gerechtigkeit. Politische Philosophie jenseits von Liberalismus und Kommunitarismus. Suhrkamp, Frankfurt/M. 1994, Toleranz im Konflikt. Geschichte, Gehalt und Gegenwart eines umstrittenen Begriffs. Suhrkamp, Frankfurt am Main 2003, Die noumenale Republik. Kritischer Konstruktivismus nach Kant. Suhrkamp, Berlin 2021, ほか。

桐原 隆弘(キリハラ タカヒロ)
広島大学教授。倫理学。ミヒャエル・クヴァンテ『精神の現実性──ヘーゲル研究』(共訳、リベルタス出版、2018年)、マティアス・ルッツ゠バッハマン『倫理学基礎講座』(晃洋書房、2018年)、フリードリヒ・ゲオルク・ユンガー『技術の完成』(共訳、人文書院、2018年)、ほか。

後藤 玲子(ゴトウ レイコ)
1958年生まれ。一橋大学博士(経済学)。帝京大学経済学部・先端総合研究機構教授、一橋大学名誉教授。『潜在能力アプローチ──倫理と経済』(岩波書店、2017年)、『福祉の経済哲学──個人・制度・公共性』(ミネルヴァ書房、2015年)、『正義の経済哲学──ロールズとセン』(東洋経済新報社、2002年)、ほか。

品川 哲彦(シナガワ テツヒコ)
1957年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。京都大学博士(文学)。関西大学文学部教授。哲学・倫理学。『倫理学入門──アリストテレスから生殖技術、AIまで』(中央公論新社、2020年)、『倫理学の話』(ナカニシヤ出版、2015年)、『正義と境を接するもの──責任という原理とケアの倫理』(ナカニシヤ出版、2007年)、ほか。

宇佐美 公生(ウサミ コウセイ)
1957年生まれ。東北大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。岩手大学名誉教授。倫理学・哲学。「尊厳概念の形而上学的意味の再検討」(『日本カント研究』第21号、日本カント協会、2020年)、『尊厳概念のダイナミズム──哲学・応用倫理学論集』(分担執筆、法政大学出版局、2017年)、『新・カント読本』(分担執筆、法政大学出版局、2018年)、ほか。

岩佐 宣明(イワサ ノブアキ)
1976年生まれ。名古屋大学大学院文学研究科博士後期課修了。博士(文学)。愛知学院大学教養部教授。哲学・倫理学。「デカルト認識論における自己認識の問題」(『理想』第699号、2017年)、「コギトの特権性」(『フランス哲学・思想研究』第12号、2007年)、「歪められたコギト」(『哲学』第56号、2005年)、ほか。

高木 駿(タカギ シュン)
1987年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。北九州市立大学基盤教育センター准教授。美学、ジェンダー論、価値理論。『カント『判断力批判』入門──美しさとジェンダー』(よはく舎、2023年)、「美的価値と適切さの基準──『判断力批判』の趣味判断論に基づいて」(『基盤教育センター紀要』第37号、北九州市立大学、2021年)、「醜さとは何か?──『判断力批判』の趣味論に基づいて」(『哲学』第71号、日本哲学会、2020年)、ほか。

齊藤 安潔(サイトウ ヤスキヨ)
1981年生まれ。名古屋大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(文学)(名古屋大学)。椙山女学園大学国際コミュニケーション学部特任研究員。古代ギリシア哲学。「『法律』701cにおける「古のティタンの本性」の解釈(『名古屋大学哲学論集 金山弥平先生ご退職記念特別号』、2020年)、「オルペウス教の神統記におけるディオニュソスの死と再生」(『西洋古典研究会論集 第28号』、2019年)、ほか。

ヨハネス・ギージンガー(Johannes Giesinger)
1972年生まれ。チューリッヒ大学博士号取得。ザルガンス州立学校教諭、および、チューリッヒ大学倫理センター連携研究協力員。Wahlrecht – auch für Kinder?, Heidelberg: J. B. Metzler, 2022; Autonomie und Verletzlichkeit. Der moralische Status von Kindern und die Rechtfertigung von Erziehung, Bielefeld: transcript, 2007.

柳橋 晃(ヤナギバシ アキラ)
1985年生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。茨城キリスト教大学文学部児童教育学科講師。教育哲学、研究倫理学。「カントの道徳哲学と道徳教育思想における実例の位置づけ」(『道徳と教育』第340号、2022年)、「小児対象研究におけるリスク・利益の捉え直し」(共著、『生命倫理』第32号、2022年)、『相談事例から考える研究倫理コンサルテーション』(分担執筆、医師薬出版、2022年)、ほか。

片山 勝茂(カタヤマ カツシゲ)
1974年生まれ。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得退学。東京大学大学院教育学研究科准教授。教育哲学。Is the Virtue Approach to Moral Education Viable in a Plural Society? in; J. Dunne and P. Hogan (eds.) Education and Practice: Upholding the Integrity of Teaching and Learning (Oxford, Blackwell Publishing, 2004)、『教育哲学事典』(分担執筆、丸善出版、2023年)、ほか。

森永 駿(モリナガ シュン)
1990年生まれ。名古屋大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。椙山女学園大学特任研究員。哲学、倫理学。「1920年代におけるハイデガーの真理論」(中部哲学会編『中部哲学会年報』第49号)、「実存と固有性──ハイデガーの思想を手がかりに」(名古屋哲学会編『哲学と現代』第38号)、ほか。

クリストフ・エンダース(Christoph Enders)
1957年生まれ。フライブルク大学教授資格取得。ライプツィヒ大学教授。Die Menschenwürde in der Verfassungsordnung. Zur Dogmatik des Art. 1 GG , Tübingen: Mohr Siebeck, 1997、ほか。

アルント・ポルマン(Arnd Pollmann)
1970年生まれ。マクデブルク大学教授資格取得。ベルリン・アリス・ザロモン大学教授。Unmoral. Ein philosophisches Handbuch, München: C.H.Beck, 2010; Philosophie der Menschenrechte. Zur Einführung, Hamburg: Junius, 2007(共著)、ほか。

吉田 量彦(ヨシダ カズヒコ)
1971年生まれ。慶應義塾大学大学院を経て、ドイツ連邦共和国ハンブルク大学にて学位取得。博士(哲学)。東京国際大学商学部教授。哲学、倫理学専攻。Vernunft und Affektivität. Untersuchungen zu Spinozas Theorie der Politik, Würzburg: Königshausen & Neumann, 2004;『スピノザ──人間の自由の哲学』(講談社現代新書、2022年)、スピノザ『神学・政治論』全2巻(光文社古典新訳文庫、2014年)、ほか。

前川 健一(マエガワ ケンイチ)
1968年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学、東京大学)。創価大学大学院文学研究科教授。仏教学。『明恵の思想史的研究──思想構造と諸実践の展開』(法藏館、2012年)、『明恵上人夢記訳注』(奥田勲・平野多恵との共編、勉誠出版、2015年)、『現代語訳 顕戒論』(東洋哲学研究所、2021年)、ほか。

武田 祐樹(タケダ ユウキ)
1986年生まれ。二松学舎大学大学院文学研究科中国学専攻博士後期課程修了、博士(日本漢学)。二松学舎大学非常勤講師。専門は日本漢学。『林羅山の学問形成とその特質──古典注釈書と編纂事業(研文出版、2019年)、『川田剛『甕江文稿』』(近代日本漢籍影印叢書2、研文出版、2020年)、「林羅山の排耶論再考」(『日本儒教学会報』第5号、2021年)、ほか。

上原 麻有子(ウエハラ マユコ)
京都大学大学院文学研究科教授。Journal of Japanese Philosophy (ニューヨーク州立大学出版) 編集長。専門は西田哲学と京都学派を中心とする近現代の日本哲学、翻訳哲学、女性哲学。「日本哲学の連続性」(『世界哲学史8──現代グローバル時代の知』、ちくま新書、2020年)、「九鬼周造 偶然‒必然の戯れとしての芸術と実存」(『東アジアにおける哲学の生成と発展──間文化の視点から』日文研・共同研究報告書178、廖欽彬・伊東貴之・河合一樹・山村奨編著、法政大学出版局、2022年)、「田辺哲学への問い 不可視の他者」(『危機の時代と田辺哲学──田辺元没後60周年記念論集』、廖欽彬・河合一樹編著、法政大学出版局、2022年)、ほか。

ギブソン 松井 佳子(ギブソン マツイ ケイコ)
インディアナ大学比較文学部Ph.D.取得。神田外語大学外国語学部教授。「感染症文学・生命・尊厳」(『尊厳と生存』法政大学出版局、2022年)、「翻訳学と脱構築のはざまで考える「社会正義」」(『〈翻訳〉のさなかにある社会正義』、東京大学出版会、2018年)、“Re-examining Human Dignity in Literary Texts: In Seeking for a Continuous Dialogue Between the Conceptual and the Empirical Approaches”, Dialog: A Journal of Theology, volume 56, Number 1, 2017, ほか。

小島 毅(コジマ ツヨシ)
1962年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東京大学大学院人文社会系研究科教授。中国思想史。『儒教の歴史』(山川出版社、2017年)、『近代日本の陽明学』(講談社、2006年)、『宋学の形成と展開』(創文社、1999年)、『中国近世における礼の言説』(東京大学出版会、1996年)、『中国思想史』(共著、東京大学出版会、2007年)、ほか。

牧角 悦子(マキズミ エツコ)
1958年生まれ。九州大学大学院文学研究科博士後期課程中退。京都大学博士(文学)。二松学舎大学文学部教授。中国古典学。『経国と文章──漢魏六朝文学論』(汲古書院、2018年)、『中国古代の祭祀と文学』(創文社、2006年)ほか。

張千帆(チョウ センパン/Qianfan Zhang)
1964年北京市生まれ。テキサス大学オースティン校にて博士号(政治学)。北京大学法学院教授。法学、政治学。『西方憲政體系之歐洲憲法』(北京市:中国政法大学出版社、2005年)、『西方憲政體系之美国憲法』(北京市:中国政法大学出版社、2004年)、ほか。

高畑 祐人(タカハタ ユウト)
1961年生まれ。南山大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。名古屋大学非常勤講師。哲学、倫理学。「カントにおける自然美と芸術美」(中部哲学会編『中部哲学会紀要』第51号、2020年)、マルティン・ゼール『幸福の形式に関する試論──倫理学研究』(法政大学出版局、2018年)、ほか。

小松 香織(コマツ カオリ)
1956年生まれ。東京大学大学院人文社会科学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(文学)。早稲田大学教育・総合科学学術院教授。歴史学(オスマン帝国・トルコ共和国近現代史)。『オスマン帝国の海運と海軍』(山川出版社、2002年)、『オスマン帝国の近代と海軍』(世界史リブレット79、山川出版社、2004年)、アブデュルレシト・イブラヒム『ジャポンヤ──イブラヒムの明治日本探訪記』(共訳、岩波書店、2013年)、ほか。

小倉 康寛(オグラ ヤスヒロ)
1982年生まれ。一橋大学大学院言語社会研究科博士後期課程修了。博士(学術)。フランス文学、フランス美術史、美学。椙山女学園大学人間学・ジェンダー研究センター特任助教。『ボードレールの自己演出』(みすず書房、2019年)、「ボードレールの批評的知性における三つの成熟」(『Gallia /ガリア』63、2024)、ほか。

目次

編者前書き 「Argument Stopper」から「Argument Provoker」へ(加藤泰史)

第Ⅰ部 原理的考察

1 看護倫理学と「高齢者の尊厳」の問題・序説(加藤泰史)

2 批判の根拠──社会的正当化秩序における人権概念について(ライナー・フォアスト/桐原隆弘゠訳)

3 尊厳へのケイパビリティと公共的相互性(後藤玲子)

4 人間の尊厳はくるむようにして守られる(品川哲彦)

5 「尊厳」概念の不確定性をめぐって(宇佐美公生)

6 被造物の尊厳──比較衡量可能な内在的価値の可能性(岩佐宣明)

7 尊厳の崇高論──崇高としての尊厳と価値の問題(高木駿)

第Ⅱ部 欧米圏の概念史的考察

1 プラトンにおける「魂の尊厳」(齊藤安潔)

2 カントにおける尊厳と教育(ヨハネス・ギージンガー/柳橋晃・片山勝茂゠訳)

3 ハイデガーは人間にいかなる尊厳を見出しているのか?(森永駿)

4 人間の尊厳とは、権利をもつ権利である──誤解されてきたボン基本法のメッセージ(クリストフ・エンダース/吉田量彦゠訳)

5 一九四五年以後の人間の尊厳──人権史における一つの激変がもたらした、さまざまな帰結について(アルント・ポルマン/吉田量彦゠訳)

第Ⅲ部 非欧米圏の概念史的考察

1 生まれてこないものの尊厳──仏教と反出生主義(前川健一)

2 グローバル化萌芽期における霊魂の不滅に関する言説をめぐって(武田祐樹)

3 日本の近代化における女性の尊厳意識への目覚め(上原麻有子)

4 関係概念としての〈尊厳〉──『ひかりごけ』と『バートルビー』における〈食〉と〈生〉の共振をめぐって(ギブソン松井佳子)

5 春秋学の微辞と中華の復興(小島毅)

6 儒教的表現意識と個の表白──「詩言志」理解の変化をめぐって(牧角悦子)

7 中国古典哲学における人間の尊厳の観念──儒教思想の再構成(張千帆/高畑祐人゠訳)

8 オスマン社会における「尊厳」(小松香織)

◎参考資料「尊厳概念のグローバルスタンダードの構築に向けた理論的・概念史的・比較文化的研究」活動記録(齊藤安潔・小倉康寛・森永駿・加藤泰史゠編)

編者後書き それでもなお、「尊厳ある社会」の構築に向けて(加藤泰史)

執筆者・訳者紹介


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