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新しい脳科学と心のマネジメントニューロ

叢書・ウニベルシタス1161
ニューロ 新しい脳科学と心のマネジメント

四六判 542ページ 上製
価格:5,720円 (消費税:520円)
ISBN978-4-588-01161-0 C1330
奥付の初版発行年月:2023年10月 / 発売日:2023年10月下旬

内容紹介

科学はすでに一世紀以上、脳と神経機能のうちに「人間とは何か?」という問いの鍵を求めてきた。脳科学や神経科学の理論的・技術的・経済的な展開は、道徳や人格の自律性、精神異常や犯罪をめぐる社会的思考にどんな影響を及ぼしてきたのか。そして批判的思考は生政治の未来に何を期待することができるのか。人文社会科学の側から試みられた、脳と心の科学史への決定的寄与。

著者プロフィール

ニコラス・ローズ(ローズ ニコラス)

ニコラス・ローズ(Nikolas Rose)
1947年生。イギリスの社会学者。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスBIOS研究所所長をへて、現在ロンドン大学キングスカレッジ教授。生物学研究から精神医学およびリスク研究に向かい、生物学や心理学、社会学との境界領域で、フーコーの生権力理論を軸に多産な研究をおこなう。現代社会における自己の統治と先端医療技術の関わり、生命科学・生命倫理の問題を、社会全体の権力論的構造のなかで探究する議論は、現代の生政治論への大きな貢献として注目を集めている。著書に『生そのものの政治学』(法政大学出版局、2014)、『魂を統治する』(1989)、『われわれの自己を発明する』(1996)、『自由の権力』(1999)、共著に『現在を統治する』(2008)ほか多数。

ジョエル・M. アビ=ラシェド(アビ ラシェド ジョエル)

ジョエル・M.アビ=ラシェド(Joelle M. Abi-Rached)
医学史家・医師・哲学者。ハーバード大学講師(科学史)を経て、ハーバード・ラドクリフ・インスティテュート・フェロー。生政治研究。歴史・哲学・倫理・医療・グローバルヘルス・政策の交わりに関心をおく。ローカルかつグローバルな文脈における精神医学の歴史を、また低中所得国ないし「グローバルサウス」で展開される生政治を研究している。著書に『ʿAṣfūriyyeh ──中東における狂気・近代・戦争の歴史』(2020)、論文に “From brain to neuro:the Brain Research Association and the making of British neuroscience, 1965–1996” (Journal of the History of the Neurosciences)ほか。

檜垣 立哉(ヒガキ タツヤ)

檜垣 立哉 1964年生。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中途退学。大阪大学名誉教授、専修大学文学部教授。哲学・現代思想。著書に『生命と身体』(勁草書房)、『日本近代思想論』『ヴィータ・テクニカ』(青土社)、『バロックの哲学』(岩波書店)、『日本哲学原論序説』(人文書院)、『ベルクソンの哲学』『西田幾多郎の生命哲学』(講談社学術文庫)、『哲学者がみた日本競馬』(教育評論社)、監訳書にN.ローズ『生そのものの政治学』(法政大学出版局)ほか。

櫛原 克哉(クシハラ カツヤ)

櫛原 克哉 1988年生。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。東京通信大学講師。社会学。著書に『メンタルクリニックの社会学』(青土社)、共著に『支援と物語の社会学』(生活書院)、共訳書に『21世紀を生きるための社会学の教科書』(ちくま学芸文庫)ほか。

志水 洋人(シミズ ヒロト)

志水 洋人 1988年生。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。日本学術振興会海外特別研究員(エジンバラ大学生物医学・自己・社会センター客員研究員)。立命館大学生存学研究所客員研究員。医療社会学。共著に『病と健康をめぐるせめぎあい』(ミネルヴァ書房)。論文に“Narrative reconstruction of mental illness as a work-stress-induced disorder”(Sociology of Health & Illness)ほか。

野島 那津子(ノジマ ナツコ)

野島 那津子 大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。静岡文化芸術大学文化政策学部准教授。社会学。著書に『診断の社会学──「論争中の病」を患うということ』(慶應義塾大学出版会)、共著に『シリーズ人間科学5 病む』(大阪大学出版会)、論文に「「探求の語り」再考──病気を「受け入れていない」線維筋痛症患者の語りを通して」(『社会学評論』第69巻第1号)ほか。

山田 理絵(ヤマダ リエ)

山田 理絵 1989年生。東京大学総合文化研究科博士課程修了。東京大学総合文化研究科・教養学部附属共生のための国際哲学研究センター(UTCP)上廣共生哲学講座特任助教。青山学院大学、聖マリアンナ医科大学など非常勤講師。社会学。共著に『精神医学と当事者』(東京大学出版会)ほか。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

謝 辞

序論

デカルト主義を超えて?
脳を通じて統治する
われわれの主張
概念とテクノロジー
未来を統治する─脳を通じて
脳の経済学
脳と人格
人間科学?

第一章 神経分子的脳

どのように神経科学の歴史を記述するべきなのか
神経を通じた道
脳を通じた道
狂気を通じた道
インフラストラクチャー
神経分子的な思考様式
可塑性へ
神経分子的なものと可塑的な脳

第二章 不可視のものを可視化する

臨床の眼差し
身体そのものへの刻印
脳を開く
生きている脳を見る
可視化の疫学
脳機能は局在化されるのか
実験室──場所あるいは非・場所?
ピクセルから画像へ
エビデンスと解釈
脳の可視化の新たなエンジン

第三章 彼らのマウスのどこが悪いのか?

人為性?
第一の安定化──実験者
第二の安定化──セットアップ
第三の安定化──動物
Models1, Models2, Models3, Models4 (そしてもしかするとModels5)
人間の特殊性
転 訳
創造としての生命

第四章 すべては脳の中に?

真の狂気を定義する
精神障害の負荷
すべては脳の中に?
神経精神医学と診断のジレンマ

第五章 社会脳

「社会脳仮説」
社会脳の病理
社会神経科学
神経科学を越えた社会神経科学
社会脳を統治する

第六章 反社会脳

具現化された犯罪的なるもの/身体化された犯罪者
生きている人間の脳の内部
神経法学?
統制の遺伝学
サイコパスの芽を摘みとる
素晴らしき数年間で脳を彫塑する
反社会脳を統治する

第七章 神経生物学的時代における人格性

挑戦される自己
病理的なものから正常なものへ
損傷からえられる教訓
現実世界についての非現実的なヴィジョン
リベティズム
自己──魂から脳へ
倫理と自己のテクノロジーの突然変異?
神経生物学的自己をケアする

結論 脳、心、そして自己を管理する

神経生物学的複合体
あるべき場所にある(In Situ)脳?
コーダ──神経生物学的時代の人間科学

補遺

監訳者あとがき
文献一覧
索引


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