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水文学の基礎

水文学の基礎

A5判 218ページ 並製
価格:2,970円 (消費税:270円)
ISBN978-4-501-62380-7 C3051
奥付の初版発行年月:2008年10月 / 発売日:2008年10月下旬

前書きなど

 本書は先に著した『水圏水文学』の改訂版である。旧著は日本のいくつかの大学で教科書として使っていただいたり,中国語に翻訳されたので,ある程度成功したと思っている。本書はその旧著のうち,直接に水文学に対応している分野をまとめたものである。また,流体力学と数学を基本としまとめている。したがって,現われる式は,経験式や実験式でない限り,数学,力学や水理学の知識から導けるようにしている。
 日本の水文学の教科書(専門書ではない)には演習問題がないものが多い。米国の教科書には容易なものから難解なものまで,十分すぎる演習問題が付いている。講義を聞いたり,教科書を読んだりしても不十分な理解だった内容を,多くの問題を解くことによって深く理解することができる。著者も大学院時代に米国にいて,多くの問題を解き理解を深めた。そのため,本書の内容を理解してもらうためにも多くの演習問題を付けた。これらを解くことは,専門にかかわらず,理工系の学生にとって必要不可欠な工学的訓練である。著者の勤務する大学の学生も問題を解いて,理論が理解できたという感想を述べている。
 旧著の『水圏水文学』が出版されたのは1998年であった。水文学を取り巻く環境で,その当時と2008年とで大きく異なっているのは,地球の温暖化問題がはっきりと姿を現わしてきたことであろう。そのために本書では温暖化になるべく触れるようにした。また,本書はImpact Factor,あるいはCitation Index(他の雑誌がどの程度参考文献として利用されているかを示す数値)が十分な値を示す雑誌などに基づいて著したものである。著者自身はそのような雑誌を読み,しばしば査読も依頼され,それらに論文を投稿するように心がけている。
 本書の対象は,高校の理科や社会,大学教養程度の数学,流体力学や水理学を修得した大学の上級生から大学院生を考えている。水文学は基礎から応用まで多くの学問が絡みついて形成されているために,多くの分野の知識が必要となる。大切なのは,知識の獲得と計算力の養成である。
 最後に,この本が出版される経緯について説明する。旧著の版元である山海堂が経営事情の悪化により,『水圏水文学』と『水圏水文学演習』の継続出版ができなくなり,新しく二つの本を合体したものを東京電機大学出版局で出版することになった。本書を著すのに多大なお骨折りをいただいた。東京電機大学出版局の方々,特に,植村八潮氏および吉田拓歩氏に深く感謝いたします。また,2008年に旧著『水圏水文学』を教科書として使用する予定であった関係者の皆様にはご迷惑をかけ,申し訳ないと思っております。
 March,2008
 水村 和正


目次

第1章 序
 1.1 水文学とは
 1.2 水文学の歴史
 1.3 水文学的水循環
 1.4 世界と日本の水資源
 章末問題
第2章 気象と降水
 2.1 太陽の放射
 2.2 雲と降水
 2.3 降水の発生原因と分布
 2.4 DAD解析
 章末問題
第3章 水文学の基本概念
 3.1 序論
 3.2 蒸発と蒸散
 3.3 遮断,窪地貯留および表面滞留
 3.4 浸透
 3.5 早い流出成分の形成機構
 章末問題
第4章 雪の水文学
 4.1 雪の分布
 4.2 雪の形成と積雪
 4.3 融雪
 4.4 融雪指標
 4.5 積雪の流出への影響
 章末問題
第5章 飽和領域内の流れ
 5.1 地下水とは
 5.2 透水層内の流れの定量的特性
 5.3 地下水流の支配方程式
 5.4 井戸の水理学
 5.5 準一様流の流れ
 5.6 ブーシネスクの式
 章末問題
第6章 不飽和領域内の流れ
 6.1 不飽和透水層内の流れ
 6.2 浸透と浸出
 6.3 実用浸透式
 6.4 洪水流出
 章末問題
第7章 ハイドログラフとその特性
 7.1 ハイドログラフ
 7.2 流出特性
 7.3 ハイドログラフの成分分離
 7.4 減水曲線の特性
 章末問題
第8章 小領域の流出解析
 8.1 合理式法
 8.2 運動学的波法
 8.3 拡散波法
 章末問題
第9章 中規模流域の流出解析
 9.1 流出曲線番号法
 9.2 単位図法
 章末問題
第10章 洪水追跡計算
 10.1 貯留モデル
 10.2 水理モデル
 章末問題


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