大学出版部協会

 

マッキントッシュの栄光と悲惨スティーブ・ジョブズIII

スティーブ・ジョブズIII マッキントッシュの栄光と悲惨

四六判 352ページ 並製
価格:2,750円 (消費税:250円)
ISBN978-4-501-55540-5 C3004
奥付の初版発行年月:2017年04月 / 発売日:2017年04月上旬

内容紹介

既刊『スティーブ・ジョブズII』の続編。マッキントッシュの本格的な開発から、マッキントッシュの売上低下によるスティーブ・ジョブズの追放までを描いている。当時の人間関係や技術を詳細に記述。

前書きなど

 第II巻『スティーブ・ジョブズII アップルIIIとリサの蹉跌』では、アップルIIIとリサの蹉跌の時期を経てマッキントッシュの開発開始の時期までをまとめた。本書第III巻『スティーブ・ジョブズIII マッキントッシュの栄光と悲惨』はその続編であり、ジョン・スカリーを社長に迎えた時期からマッキントッシュの劇的な発売、そしてマッキントッシュの売上げ低下の時期を経て、スティーブ・ジョブズの追放までを描いている。
 ジョン・スカリーは、きわめて特異な個性を持った人である。非常に内気ではにかみ屋の一面、大量解雇も平然とやってのける非情で冷酷な一面を持つ。朝は早くから起き、ジョギングを欠かさない。アルコールはほとんど摂らない。健康オタクかと思うと一日中ペプシコーラを大量に飲んでいる。
 少年時代には電子工学に興味を持っていたようだが、結局ものにならなかった。ただ理解力はあったようで、アラン・ケイの思想をよく理解し、アラン・ケイとは非常に馬が合った。不思議なことにアラン・ケイを引き抜いたスティーブ・ジョブズとは入社後、全く気が合わなかった。
 マーケッティングの大家として迎えられたジョン・スカリーだが、本当の才能は、組織内での権力闘争と陰謀にあった。彼がアップル・コンピュータに迎えられたことは、アップル・コンピュータ内部に権力闘争を生じさせ激化させることになる。当初ダイナミック・デュオとまで称えられたスティーブ・ジョブズとの間にも、いつしか激しい争いが生じる。結果的にはスティーブ・ジョブズが自分の作ったアップル・コンピュータから追放されることになる。
 ジョン・スカリーが持ち込んだ権力闘争の慣習は、スティーブ・ジョブズが追放された後もアップル・コンピュータに定着し、陰謀と追放劇が何度も繰り返されることになる。
 この時代、スティーブ・ジョブズは、残忍で冷酷な一面、まだナイーブな一面があり、ジョン・スカリーにはかなわなかった。しかし、この敗北で学んだ教訓と経験は、スティーブ・ジョブズをやがて冷徹な経営者に成長させていくことになる。
 本書ではジョン・スカリーを社長に迎えた時期からマッキントッシュの劇的な発売、そしてマッキントッシュの売上げ低下の時期を経て、スティーブ・ジョブズの追放までを描いている。また、第II巻との連続性を考慮し、章番号は連番とさせて頂いた。
 第13章では、ペプシコーラからジョン・スカリーを新社長に迎える経緯と、アップルIIグループの三角ビルへの左遷について述べた。
 第14章では、アップル・コンピュータのデザイン戦略について述べ、主にジェリー・マノックやハルトムット・エスリンガーに焦点を合わせた。
 第15章ではマッキントッシュの売り込みとエバンジェリズムの実際について述べた。
 第16章では、マッキントッシュの宣伝戦略について述べ、シャイアット・デイ社『1984年』について述べた。
 第17章では、マッキントッシュの売上げ低下と、その挽回策としてのターボ・マッキントッシュやビッグ・マッキントッシュについて述べた。
 第18章では、レーザーライターとDTPについて述べた。ジョン・ワーノックとチャールズ・ゲシキのアドビ・システムズとの関わり、ポール・ブレイナードのアルダスについても述べた。
 第19章では、ローカルトーク、アップルトークのもともとの仕組みについて考究した。アップルトークがISO‐OSIモデルに基づいたシステムであったこと、その仕組みについて簡単に述べた。またIBMシステムとの接続を目指したマッキントッシュ・オフィスについて述べた。
 第20章ではスティーブ・ジョブズの楽園追放について述べた。スティーブ・ジョブズはじわじわとアップル・コンピュータの中で追い詰められ、ついには追放されてしまう。

 本書の叙述には、できる限り慎重を期したつもりであるが、浅学菲才の筆者ゆえ、気が付かなかった間違いも多々あるかもしれない。読者の御寛恕を頂ければ幸いである。
 本書が成立できたのは本書の編集に熱心に取り組んで頂いた東京電機大学出版局の小田俊子氏、江頭勝己氏をはじめとする皆さんのおかげである。厚く感謝する。
 また日頃、御指導御鞭撻頂いた東京電機大学 加藤康太郎理事長には深甚なる感謝の意を表したい。

2017年3月
著者 脇 英世


目次

第13章 新社長 ジョン・スカリー
 マイク・スコットの帰去来の辞
 新社長が必要だ
 ジョン・スカリーの少年・青年時代
 ペプシコーラ入社
 冷酷でよそよそしいプロフェッショナル
 ジョン・スカリーの4人の配偶者
 コカ・コーラとの対決
 ジョン・スカリーのスカウト
 ジョン・スカリーのアップル・コンピュータ入社
 アップル・コンピュータ幹部のリトリート
 三角ビルへ島流しのアップルII事業部
 ミスター・マッキントッシュ
 ビル・キャンベル
第14章 アップル・コンピュータのデザイン戦略
 ジェリー・マノック
 スティーブ・ジョブズのデザイン指針
 ロバート・ジェメル
 ハルトムット・エスリンガー
 ジャック・ホカンソン
 スノーホワイトとデザイン言語
 スノーホワイト構想実現のためのデザイナー歴訪
 スノーホワイトをめぐる激しい競争
 長期契約の成立とハルトムット・エスリンガーの全権掌握
 アップルIIeの登場とシナテック
 ウォルター・ブロードナーとMMUとIOU
 ポータブル・マシン開発の構想
 アップルIIc
 アップル・コンピュータのデザイナー達の退場
 アップルIIGS
 アップルIIcプラス
第15章 マッキントッシュの売り込み
 足りないアプリケーションとエバンジェリストの登場
 ガイ・カワサキ
 マックペイント
 マックライト
 マッキントッシュのエバンジェリズム(伝達)の実際
 教育界への売り込み
第16章 『1984年』
 ジェイ・シャイアット
 シャイアット・デイ社の設立
 リー・クロウ
 スティーブ・ヘイドン
 アカウント・プランニング
 『1984年』の成立
 リドリー・スコット
 ハワイで開催されたアップル・コンピュータの販売会議
 取締役会の否定的な意向
 第18回スーパーボウルの第3クォーター
 フリント・センターでの株主総会
 公式マッキントッシュ設計チーム
 アップルIIよ、永遠なれ
 マイクロソフトの突然の奇襲 ウィンドウズ
 スコット・マクレガー
 ウィンドウズの開発意向表明
 ウィンドウズ1.01
第17章 マッキントッシュの売上げ低下
 販売網の再構築
 アラン・ケイの獲得
 ル・ムートン・ノワールでの晩餐会
 1984年のマッキントッシュ開発の情勢
 ターボ・マッキントッシュ
 ビッグ・マッキントッシュ
 マイケル・デューイとロン・ホーホスプラング
第18章 レーザーライターとDTP
 ゲアリー・スタークウェザー レーザー・プリンターの発明者
 ジョン・ワーノック
 チャールズ・ゲシキ
 アドビ・システムズの創立
 ポストスクリプト
 スティーブ・ジョブズの登場
 アドビ・システムズの快進撃
 ポール・ブレイナード
 アルダス社の設立
 DTPの発展
 アドビ・システムズのフォント開発
 アルダスの蹉跌
第19章 アップルトークとマッキントッシュ・オフィス
 ロバート・メトカルフェ
 イーサネット
 ロバート・メトカルフェの独立
 DIXとIEEE 802.3
 マッキントッシュ・オフィス
 ローカルトーク
 アップルトーク
 データリンク層のプロトコルALAP
 ネットワーク層のプロトコルDDP
 トランスポート層のプロトコル ATP
 アドレス解決プロトコル AARP
 ネーム・バインディング・プロトコル NBP
 プリンター・アクセス・プロトコル PAP
 アップルトーク・ファイリング・システムのアーキテクチャ
 プリント・スプーラーのアーキテクチャ
第20章 スティーブ・ジョブズの楽園追放
 ハワイの販売会議と『ゴースト・バスターズ』
 反撃の試み
 一打逆転の提携・買収計画
 リサに引導を渡す
 テスト・ドライブ
 マッキントッシュの値下げの検討
 レミングス
 1985年1月の株主総会
 マイクロソフトとの駆け引き
 1985年1月31日のパハロ・デューンズのリトリート
 30歳の誕生日と荒海の中へ
 スティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックとの確執
 ファイル・サーバーの進捗状況
 マイク・マレーの動揺
 スティーブ・ジョブズとジョン・スカリーの初の衝突
 ジャン・ルイ・ガッセー
 1985年4月のアップル・コンピュータの取締役会
 ジョン・スカリーの組織再編成
 激動の5月
 欧州への逃避行
 次はネクスト
終章
あとがき
引用・参考文献
索引


一般社団法人 大学出版部協会 Phone 03-3511-2091 〒102-0073 東京都千代田区九段北1丁目14番13号 メゾン萬六403号室
このサイトにはどなたでも自由にリンクできます。掲載さ>れている文章・写真・イラストの著作権は、それぞれの著作者にあります。
当協会 スタッフによるもの、上記以外のものの著作権は一般社団法人大学出版部協会にあります 。