大学出版部協会

 

eビジネスの理論と応用

インターネットの知的情報技術
eビジネスの理論と応用

A5判 148ページ 並製
価格:2,090円 (消費税:190円)
ISBN978-4-501-53540-7(4-501-53540-7) C3004
奥付の初版発行年月:2003年01月 / 発売日:2003年01月上旬

内容紹介

知的情報処理の応用技術やその課題を平易に解説

 「インターネットの知的情報技術シリーズ」の応用編として,わが国における知識処理の第一線の研究者により,インターネット時代に有望な知的情報処理技術の応用領域について解説した一冊.一般のビジネスマンや文系の大学生などのインターネット初学者にもできるだけ直観的に理解できるように,具体的な方法を豊富な応用例をもとにしてわかりやすく書くようにまとめた.読者はインターネットに関するごく基本的な知識さえあれば,本書を読むことにより,eビジネスに関わる情報処理技術の本質的な課題,それに対する人工知能をはじめとする知的処理の取り組み,そして,今後インターネットが進んでいく方向を把握することができるだろう.

前書きなど

 インターネットがこれほどまでの成功を収めたのは,それがビジネスと直接結びつくことができたからであろう.IBMが""""International Business Machines""""の略称であるように,コンピュータ産業の発展はビジネスの世界とともにあるといってよい.
 従来のビジネス向けコンピュータは,データベース管理システムを中核として,生産管理,在庫管理,顧客管理,財務管理など,従来は人間が行っていたデータ管理や計算作業をコンピュータで置き換えることをその主な目的としていた.これは,企業内の事務の合理化と経費節減に絶大な威力を発揮した.
 これに対してインターネットは,企業内におけるコンピュータ利用の目的を大きく広げることになる.すなわち強力なコミュニケーションメディアであるインターネットは,コンピュータを企業内での利用から企業対企業(BtoB),あるいは企業対顧客(BtoC)の取引を電子的に実現する電子商取引へと発展させた.このことは,従来の商取引のあり方を量と速度と規模の面で革新的に変化させたといえるであろう.
 それでは,BtoC電子商取引の代表例ともいえるAmazon.comを例にとろう.Amazon.comは1995年の創業以来,書籍やCDをはじめとするオンラインショッピングサイトとして急速な成長を遂げてきた.第1の特徴は,その量である.書籍に限っても,約170万タイトルの購入が可能である.たしかに最近では在庫150万冊をアピールするような大規模書店も現れてはいるが,その陳列のためには何千坪もの売り場面積をもつ店舗が必要になる. したがって,そのような書店が存在するのは多くの人口を有する大都会に限られている.一方,オンラインショッピングは,Webサーバを介して商品カタログをインターネット上に公開するだけであり,物理的な制約を受けないという利点がある.第2の特徴は,その取引の速度である.顧客は書店まで足を伸ばす必要がなく,自宅のパソコン上で電子カタログをクリックするだけで本の注文を即時に行うことができる.もちろん書籍の場合は,本が自宅に送られてくるためには宅配便等の物理的輸送手段を用いるために時間がかかるという欠点があるが,電子出版物やソフトウェアなどインターネットを介した配送が可能な商品に関しては瞬時にして入手することが可能である.第3の特徴はその取引の規模である.Amazon.comの顧客は200ヵ国国,2000万人に及んでいる.これは地球規模のネットワークであるインターネットならでは利点といえる.
 さて,このような電子商取引がさらなる発展を遂げて行くうえで,人工知能や取引を仲介するエージェントなどの知的情報処理技術の応用が期待されている. 一般に電子商取引は,""""商品検索,取引,決済""""の3ステップから成り立っているとみなすことができる.商品検索の段階では,顧客側からは必要としている商品を効率よく発見する情報検索の技術が,逆に企業側からは顧客に対して効果的に商品を広告したり推薦したり技術が重要になるであろう.また取引の段階では,マルチエージェントシステムの研究領域において研究されている交渉の技術が重要になるであろう.特に近年では,その一形態として電子オークションの技術が注目されている.さらに決済の段階では,電子マネーや少額決済を可能にするマイクロペイメントなどの技術が必要になる.
 本書「eビジネスの情報技術」では,このような背景から「インターネットの知的情報技術シリーズ」の応用編として,わが国における知識処理の第一線の研究者により,インターネット時代に有望な知的情報処理技術の応用領域について述べたものである.本書は一般のビジネスマンや文系の大学生などのインターネット初学者にもできるだけ直観的に理解できるように,具体的な方法を豊富な応用例をもとにしてわかりやすく書くように心がけたつもりである.よって,読者はインターネットに関するごく基本的な知識さえあれば,本書を読むことにより,現在における本質的な課題,それに対する人工知能をはじめとする知的処理の取り組み,そして,今後インターネットが進んでいく方向を把握することができるだろう.
 菅坂玉美(富士通研究所)による第1章「電子商取引とエージェント」では電子商取引において,売り手や買い手,仲介者を支援するエージェント技術について解説している.特に富士通研究所において開発された知的エージェント環境「SAGE」の企業間電子商取引への応用について述べている.
 横尾真(NTTコミュニケーション科学研究所)による第2章「インターネットオークション」は,近年,電子商取引の一形態として注目されているインターネットオークション技術について述べている.特にこれまで経済学の分野で研究されてきたオークションの理論をベースに,インターネットオークション方式の設計における頑健性の問題について解説を行っている.
 寺野隆雄(筑波大学)による第3章「情報推薦システム」は,顧客に対して適切な商品を推薦する情報推薦システムについて述べている.特に情報推薦システムの電子商取引における重要性を述べ,著者らが開発したシステム「TwinFinder」を含め,基本的な技術と具体的な実現方法について解説している.
 山口高平(静岡大学)による第4章「ビジネスアイディアの情報化技術」は,商品流通を中心とした狭義の電子商取引だけでなく,顧客管理,会計,マネジメント,物流,マーケティング,ファイナンス,契約などの企業活動全体を支える情報技術について議論している.この中で,特に企業内での知識共有のために必要なオントロジ技術の重要性と実例について解説している.

 さて,本シリーズは関西文化学術研究都市けいはんなプラザにおける学術交流の一環として行われた知的情報統合研究会の活動を通して生まれたものである. この研究会を積極的に支援していただいた株式会社けいはんなの皆様にこの場を借りてお礼申し上げる.最後に,本書において,図や表の引用に快く応じて頂いた多くの研究者の方々にもお礼を申し上げる.
2002年11月
北村泰彦
山田誠二


目次

第1章 電子商取引とエージェント
第2章 インターネットオークション
第3章 情報推薦システム
第4章 ビジネスアイデアの情報化技術


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