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半導体真空技術

ポイント解説
半導体真空技術

A5判 224ページ 並製
価格:2,750円 (消費税:250円)
ISBN978-4-501-41890-8 C3053
奥付の初版発行年月:2011年05月 / 発売日:2011年05月中旬

内容紹介

真空技術はあらゆる産業を支える基礎技術の一つであり、食品産業から宇宙産業に至るまでその恩恵に与っている、本書では半導体産業に焦点をあて、そこで使われている真空技術についてまとめた。できるだけ数式を使わずに理論的、体系的に半導体に関わる真空技術を解説。

前書きなど

 本書は2007年の初版発行以来,(株)工業調査会から刊行され,幸いにも長きにわたって多くの読者から愛用されてきました。このたび東京電機大学出版局から新たに刊行されることとなりました。本書が今後とも,読者の役に立つことを願っています。
 2011年5月
 著者

 はじめに
 真空はあらゆる産業を支える基礎技術の一つです。応用範囲は広く,食品産業から宇宙産業に至るまでその恩恵に与っていますが,半導体産業もその一つです。
 筆者は数年前から半導体技術者や関連分野の方々に技術教育とコンサルタントを行っています。真空技術もその一つですが,よく相談を受けるのは,半導体用に書かれた適当な本やマニュアルがないため勉強できないというものです。また,現場の若いエンジニアの方々や指導する立場の方々からも,半導体に特化した教本を求める声がたびたび聞かれます。市販されている真空の本は多数ありますが,一般的な解説のものであったり,極端に理論的であったりします。取っ付きにくいのでしょうか,多くは本棚の隅で眠る運命になります。
 真空関係の教育で感じることは,ある程度の知識と論理的思考でエンジニアの持つ能力が飛躍的に伸びるという特徴が見られます。少しの教育やトレーニングによってある日から仕事内容がガラッと変わるという,教育に携わるものとしては喜ばしい分野です。半導体産業は応用する技術が電気,電子工学,物理,化学など多岐にわたり,特に装置に関わるエンジニアは一人前になるまでにかなりの年数を要します。何も知らずにこの業界に入り,先輩の見よう見まねでやってきた方々も多くおられます。また常に忙しい業界でもあり,教育時間が取れないジレンマも確かにあります。私にも経験がありますが,ほんの少しの知識があれば堂々巡りすることなく,すぐに解決できていたという問題も多いと思います。確かに真空には経験も大切で,ベテランのエンジニアはトラブルシュートも早いものです。しかしまったく新しいものに対応する時,この経験が災いすることがたびたびあります。理論に裏打ちされない経験はかえって危険である場合もあります。
 本書は半導体生産にはじめて携わる装置エンジニア,プロセスエンジニアのために書いたものですが,ベテランの方々にも今一度真空技術を見直していただけるものと思います。また半導体産業に関わる装置メーカーやその他サプライヤーの方々の教本としても良いかも知れません。
 真空技術は実用学問であり,現場でどんどん使ってもらわなくてはなりません。もちろん技術なのでバックにはきちんとした理論体系がなくてはなりませんが,それらは一般に難解で取っ付きにくいものです。本書では理論的バックボーンをなるべく崩さず,やさしく解説するようにしています。用語の語源や由来の説明,計算ではその過程も示しています。順を追って見ていくとよく理解できると考えています。
 後半の応用編では,真空を応用した各種プロセスを解説しています。お客様を訪問すると,装置エンジニアは装置のみ,プロセスエンジニアはプロセスのみしかカバーできず,グレーゾーンのトラブルは解決されないままズルズルと時間が過ぎていく,というような悩みを聞きます。生産工場ではまずい状況です。装置エンジニアはプロセスを,プロセスエンジニアは装置をもっと知るべきでしょう。このような目的で応用編の解説をしています。ここでもできるだけわかりやすく解説しており,部分によっては学問的に正しくないとお叱りを受けるかもしれません。しかし,技術ではまず理解することが重要であると考えています。理論に裏打ちされた経験はエンジニアの,そして会社の財産となり,新しい技術を創造していく力となることでしょう。
 本書ではできるだけ数式を使わず,かつ論理的,体系的に半導体に関わる真空技術を解説しています。しかしページ数の都合などで割愛した部分もあり,十分とは言えませんが,一人でも多くのエンジニアの方が本書を利用され,現場に生かされることを願ってやみません。
 2007年1月
 著者


目次

Ⅰ 基礎編
 第1章 半導体製造装置と真空
  1 装置システム構成
  2 なぜ真空が使われるのか
  3 半導体での真空応用例
 第2章 真空の理論と計算
  1 まずはトリチェリの実験から
  2 単位の話—PaとTorr,mbar
  3 真空理論の初歩
  4 真空の計算—P,S,Q
 第3章 真空ポンプとその使い方
  1 真空ポンプとは
  2 各種ポンプの原理と構造
 第4章 真空ゲージとその使い方
  1 真空ゲージとは
  2 各種真空ゲージの原理と構造
  3 使用上の注意
 第5章 ガスシステム・真空部品とその使い方
  1 真空シール,ガスケット,O-Ring
  2 フランジ・配管
  3 運動伝達部品
  4 バルブ・圧力調整機
  5 マスフローコントローラ
  6 配管継手類
  7 フィルタ
  8 フィードスルー
 第6章 リーク探し
  1 リークの検出
  2 ヘリウムリークディテクタの原理と使用法
  3 その他のリークチェック法
 第7章 真空装置の取り扱い
Ⅱ 応用編
 第8章 サーマル装置とプロセス
  1 熱酸化膜成長
  2 アニールと不純物活性化
  3 低温化の問題
 第9章 プラズマ装置とプロセス
  1 プラズマ放電
  2 プラズマ応用装置のカップリングによる分類
  3 ECR
  4 シース
 第10章 PVD装置とプロセス
  1 PVD装置の働き
  2 クラスタツール
  3 PVDプロセス
  4 PVD薄膜構造
  5 薄膜の評価
 第11章 CVD装置とプロセス
  1 CVDとは
  2 プラズマCVD
  3 薄膜の評価
  4 HDP CVD
 第12章 エッチング装置とプロセス
  1 エッチング装置の働き
  2 エッチングガス
  3 エッチング作用の種類
  4 形状制御
  5 問題点
 第13章 インプランテーション装置とプロセス
  1 インプランテーション装置の働き
  2 イオンの選択
  3 イオンの打ち込み
  4 熱工程
  5 インプランテーション装置の種類
  6 問題点
 第14章 プロセス管理・検査測定装置
  1 パーティクルインサイチューモニタ
  2 RGA
参考文献
索引


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