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狂画で拓いた新時代河鍋暁斎の挑戦

河鍋暁斎の挑戦 狂画で拓いた新時代

A5判 464ページ
価格:10,120円 (消費税:920円)
ISBN978-4-13-086066-6 C3071
奥付の初版発行年月:2023年09月 / 発売日:2023年09月中旬

内容紹介

徳川の世から明治へと大きく変貌する時代を生きた、画鬼・暁斎。その卓越した画業を生み出したものは何だったのか。本書は、「狂画」という視点から暁斎の作品を綿密に分析、新しい技法や表現に挑み続けた絵師の全貌に迫る。従来の研究を問い直す、暁斎研究の最先端。

著者プロフィール

定村 来人(サダムラ コト)

イスラエル・ゴールドマン・コレクション・キュレーター、大英博物館アジア部客員研究員

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 章 河鍋暁斎と狂画
一 狂画軽視の傾向とその問題点
二 本書の目的と先行研究
三 本書の構成
四 狂斎の「狂」
五 狂画とは
第I部 狂斎としての形成期――本画と狂画
第一章 「狂斎」 以前――《竹生島詣》 と 《月下唐美人図》 を中心に
一 ギメ東洋美術館蔵《竹生島詣》
二 《竹生島詣》の造形的特徴と画題
三 イスラエル・ゴールドマン・コレクション蔵《月下唐美人図》
四 《月下唐美人図》の画題
五 その他の初期作品との比較
六 狩野派の本画から離れて――大津絵画題の重要性
第二章 能狂言画が橋渡しをした版画の世界――『絵本大和錦』 と関連作品
一 『絵本大和錦』と関連作品――『絵本大和錦 絵本大全』、『東都花競』他
二 『絵本大和錦』の落款と制作時期の検討
三 図に見られる変化
四 狂言画における滑稽の要素
第三章 幕末の狂画――時事的風刺浮世絵の時代
一 新たな考察および解釈を加えることのできる作品
二 暁斎作として新たに検討に加えるべき作品
三 暁斎による幕末風刺浮世絵の特徴
第四章 狂画としての春画
一 暁斎の春画制作
二 筆禍事件と春画
三 揶揄する笑い
四 逆転による笑い
第II部 狂斎から暁斎へ――狂画が広げた表現の可能性
第五章 新しさへの関心――イソップ物語と西洋
一 西洋木版の挿絵の学習と応用――『通俗伊蘇普物語』におけるイソップ物語との出会い
二 『通俗伊蘇普物語』の狂画化――錦絵「伊蘇普物語之内」および「暁斎楽画」シリーズ
三 教科書の挿絵――『修身説約』と『小学修身書』
四 再びジェームズ本に立ち返って――肉筆《イソップ物語》諸作品
第六章 現実世界と絵空事の交差点――田鶴追善作品群
一 イスラエル・ゴールドマン・コレクション蔵「幾世かがみ」
二 河鍋暁斎記念美術館蔵《見立七福神之内 花見弁天図》
三 『くまなき影』――「幾世かがみ」と《地獄極楽めぐり図》(静嘉堂文庫美術館蔵)との関連
四 富裕層の子ども供養と出版事業
五 《地獄極楽めぐり図》に見られる狂画的笑いと現実の要素
第七章 蛙、鬼、鴉の表象に見られる自己投影
一 狂画の伝統と今を生きる蛙たち
二 「蛙の面に水」――弱くて強い存在
三 「酒仲画鬼」――落款と鬼の像
四 「画鬼」――暁斎が寄り添った鬼たち
五 「[鴉]思」と「万国飛」――日々の習練と名声の象徴としての鴉
六 イソップ物語と鴉
第III部 晩年の暁斎――『暁斎画談』 のメッセージ
第八章 『暁斎画談』 の成立――近世絵本文化からの連続
一 底本イスラエル・ゴールドマン・コレクション本の書誌
二 暁斎の画業における『画談』の位置づけとその成立
三 異本の存在
四 『画談』に影響を与えた近世絵本
五 「古今」の世界観
第九章 流派を超えて――新時代の画譜
一 開かれた絵手本
二 内容的広がり
三 外篇の半生記と自画伝――「画狂」と「酒狂」の絵師として
四 『画談』の中の狂画
第十章 筆意と写生の合致――今日的問題に対する関心
一 『画談』内篇における「筆意」
二 対立概念としての「筆意」と「写真」および「写生」
三 『画談』外篇における「写生」
四 真図と画図
五 様々な「写生」――その多義性
六 筆意の学習と写生の訓練の統合
終 章 「本」 と 「狂」 の融合――新しい時代の絵を模索して
一 各部の要約とまとめ
二 新しい時代の絵のかたち
三 狂画が引き寄せた近代
四 今後の課題
あとがき
河鍋暁斎略年譜


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