内容紹介
わたしたちは,今どんな時代を生きているのか? 当代随一の表現者松浦寿輝からのメッセージ.2003年から2006年にいたる4年間の「文学季評」(『読売新聞』掲載)と「文化季評」(『UP』掲載)を全文収録.日本の文学が今日置かれている状況を剔抉し,「知識人」の思考を思考する.
目次
I 文学の現在
2003・7 闘争とノイズ/亀裂の変奏
2003・10 平板性に徹する/飢えた心と想像力
2004・1 地名という記号/三人の新人
2004・4 「偶然のおかしさ」を擁護する/多声化する現実
2004・7 真の才能の在り処/パラレル世代と政治
2004・10 クレオール的越境/書法の発明
2005・1 文体の不在/「外部」の視座
2005・4 徹底的な思考実験/甘美な毒と苦い蜜
2005・7 「小説だとは思っていません」/風味絶佳の文章
2005・10 「文学体」か「話体」か/詩劇の声
2006・1 歴史の風化/詩とは怖ろしいものだ
II 彼らの肖像
ロラン・バルトの現在
藤田省三あるいは知識人の品位
中井久夫と「より良き生」への信
高橋康也あるいは《serio ludere》
エドワード・W・サイードの偉大
パース、アーレント、アルチュセール
田中純あるいはイメージの地震計
吉本隆明の記憶
ミシマ、タルホ、イタミ
吉田健一の贅沢
阿部良雄あるいは情熱と責任
鹿野武一の沈黙