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建築の経年と木肌処理技術「洗い」の日本建築史

「洗い」の日本建築史 建築の経年と木肌処理技術

A5判 304ページ
価格:7,920円 (消費税:720円)
ISBN978-4-13-066863-7 C3052
奥付の初版発行年月:2024年03月 / 発売日:2024年03月上旬

内容紹介

木肌に付いたシミや変色など、物理的な汚れを落とし、経年により古びた建物の視覚的な印象を操る「洗い」の仕事・技術を、日本建築の歴史から解明する。また、伊勢神宮に象徴されるような「新しさ」の美意識と、茶室のわびさびのような「古び」の美意識が、どのように醸成され、定着していったのかを考察し、「建築の経年」への新たな視点を与える。

著者プロフィール

中山 利恵(ナカヤマ リエ)

京都工芸繊維大学デザイン・建築学系准教授。

金沢美術工芸大学美術工芸学部卒業。東京藝術大学大学院修士課程修了後、東京大学大学院工学系研究科博士課程、有限会社金沢設計(降幡建築設計事務所金沢分室)勤務、公益社団法人金沢職人大学校修復専攻科を経て、2012年「日本の木造建築における『洗い』の歴史的研究――木肌処理技術からみた建築の経年に対する美意識の変遷」により博士(工学)学位取得。2015年12月より京都工芸繊維大学助教、2020年12月より現職。
著書に『建築と都市の保存再生デザイン――近代文化遺産の豊かな継承のために』(共編著、鹿島出版会、2019年)、『日本の建築文化事典』(共著、丸善出版、2020年)、『住まいの生命力 清水組住宅の一〇〇年』(共著、柏書房、2020年)。2017年東アジア建築文化国際会議にてExcellent Paper Award For Young Scholars受賞。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序章 日本建築における「洗い」
一 建物を洗う――本書の目的
二 洗い屋鷲山金次郎の引札
三 洗いと洗い屋――洗いの工程と用語の定義
四 木肌処理技術研究の意義
五 既往研究
六 本書の構成

第一章 木肌削り出し――古代から近世に至る痕跡と記録
一 建物に残された削りの痕跡
二 近世文書に見る「しらけ」「上削」「白削」
三 「木肌削り出し」の時代的傾向

第二章 洗清と清鉋――中世・近世伊勢神宮遷宮記録に見る竣工儀式
一 「洗清」とは何か――新築の神殿を洗う
二 「掃除」とは何か――中世の仮殿遷宮で行われた二つの清め
三 「清鉋」とは何か――戦国期の「シサリカンナ」から始まった
四 元禄二年遷宮記に見る造営中神殿の「古び」問題
五 熱田神宮との比較から見る「洗清」の道具

第三章 灰汁洗い――近世作事文書に見る洗いの記録
一 蕎麦藁を用いた左官の洗い
二 灰汁の洗いと洗い屋の発生
三 洗いの工事種別の確立と定着
四 本途帳にみる洗い
五 洗い屋たちの仕事――洗いの用途物・施工者・種別
六 確立から発展・成熟まで

第四章 近現代の洗い――「洗い」と「木肌削り出し」の発展と変容
一 洗い屋たちの近現代――曹達導入と職人の証言
二 洗いと削りと古色の併用――文化財修理工事記録と鷲山金次郎
三 洗いの縮小と古色の拡大――二条城の昭和修理
四 古びと清浄の併存――桂離宮の昭和修理
五 式年造替を再現する洗い――熱田神宮の近現代造営
六 式年造替を再現する削り――伊勢神宮棟持柱の古材転用

終章 洗いか古びか――日本建築の経年美
一 三つの系譜が織りなす洗いの変遷――削りと清めと汚れ落とし
二 日本建築の美と経年
三 建築の経年に対する美意識の変遷
四 経年と清浄の融合――最適な建築の経年美を実現する

附論 洗いの道具について――桶・箒・コソゲ・薬液
一 洗いに用いられる桶類
二 洗いに用いられる箒と簓
三 コソゲと鉋、その他の道具
四 洗い道具の特性
五 洗い道具と洗いの起源


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