黎明期アメリカの銀行制度 中央銀行なき状態の苦悶と自生
価格:10,780円 (消費税:980円)
ISBN978-4-13-046129-0 C3033
奥付の初版発行年月:2019年08月 / 発売日:2019年08月下旬
南北戦争以前のアメリカは,中央銀行なき状態の下で通貨の信用秩序をいかにして守りえたのか.健全性維持を実現した州・地域の銀行制度の実態を緻密に解析し,理論的・歴史的な評価を主張するとともに,歴史的知見から現代の中央銀行や金融セーフティネットのあり方を問い直す.
大森 拓磨(オオモリ タクマ)
新潟大学経済学部准教授
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
序 章 課題と視角
第I篇 黎明期アメリカ・ニューヨーク州の銀行制度――銀行監査と預金保険の制度的淵源
第1章 存立背景と制度形成:1804~1829年――セイフティ・ファンド構想の誕生
1.存立背景:1804~1828年
1.1 1804年州法――銀行制度の原基
1.2 Albany Regencyとエリー運河構想
1.3 1818年州法と1827年州法
2.セイフティ・ファンドの生成:1828~1829年
2.1 着想の由来と原案の中身
2.2 原案の公表とその波紋
2.3 原案の審議
第2章 興隆と動揺:1829~1838年――政治・経済の自立と恐慌の到来
1.セイフティ・ファンドの興隆:1829~1836年
1.1 1829年州法の全容
1.2 セイフティ・ファンドの政治的含意
1.3 セイフティ・ファンドの伸展と不安定性の胎動
2.セイフティ・ファンドの動揺:1836~1838年
2.1 監査不信の噴出
2.2 営業停止命令と債務保証の処理
2.3 自由銀行制度の出現
第3章 交錯と崩壊:1838~1866年――自由銀行制度との並存と統一への志向
1.セイフティ・ファンドの危機:1838~1845年
1.1 自由銀行制度との交錯
1.2 セイフティ・ファンドの枯渇
1.3 セイフティ・ファンドの構造改革
2.銀行制度の崩壊と遺産:1845~1866年
2.1 新州憲法の制定と銀行制度の迷走
2.2 セイフティ・ファンドの最終利用状況
2.3 銀行制度の消滅と遺産の伝承
第II篇 黎明期アメリカ・インディアナ州の銀行制度――分権と集権とを兼備した銀行間組織の淵源
第1章 存立背景:1679~1832年――反銀行主義の理念と通貨・信用秩序の混乱
1.准州時代の銀行制度
2.州の成立と銀行制度
3.銀行制度の瓦解
4.銀行の消滅と銀行制度の模索
第2章 生成:1832~1834年――分権性と集権性を兼ねた銀行間組織の創出
1.混乱と創造
1.1 州法銀行の再創設
1.2 連邦の動向と州の対応
1.3 法案の整備
2.銀行制度の組成
2.1 法案の否決
2.2 法案の再審議とその成立
2.3 組織編制への着手
3.銀行制度の内実
3.1 銀行間組織の構成
3.2 株主構成の実態
3.3 減債基金と債務保証
第3章 興隆と試練:1834~1842年――経済開発による増資と恐慌への対峙
1.開発と投機
1.1 州経済の急伸
1.2 景気の高揚と銀行制度
1.3 景気の過熱と銀行業況
2.恐慌との対峙
2.1 正貨支払いの部分停止
2.2 州議会の対応
2.3 恐慌後の銀行業況
3.恐慌の爪痕
3.1 恐慌の再来
3.2 不況期の銀行業況
3.3 改革への模索
第4章 危機と再編:1842~1855年――強大な存在感への警戒と自由銀行制度との混交
1.昂進と迷走
1.1 銀行制度の動揺
1.2 業績の回復
1.3 銀行制度の存否
2.自由銀行制度の出現
2.1 制度の胎動
2.2 議論の交錯
2.3 自由銀行制度の導入
3.苦悶と混迷
3.1 自由銀行の増殖
3.2 倫理の欠如
3.3 制度混交の継続
第5章 終焉と遺産:1855~1865年――南北戦争による難局と国法銀行制度導入への貢献
1.新銀行の船出
1.1 新銀行の特徴
1.2 恐慌の波及
1.3 銀行制度の明暗
2.新銀行の展開
2.1 旧銀行の清算
2.2 新銀行の業態
2.3 南北戦争の勃発
3.遺産の伝承
3.1 銀行制度の転換と消滅
3.2 国法銀行制度への架橋
3.3 連邦準備制度への布石
終 章 本書の結論
The Banking System of the United States in the Early Years:
Without Central Banking Institutions, Difficulties and the Development of a Spontaneous Mechanism
Takuma Ohmori