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 自分を指差す,自分の名を言う〈私〉の誕生 生後2年目の奇跡Ⅰ

〈私〉の誕生 生後2年目の奇跡Ⅰ 自分を指差す,自分の名を言う

A5判 288ページ
定価:4,800円+税
ISBN978-4-13-011146-1 C3011
奥付の初版発行年月:2020年04月 / 発売日:2020年04月下旬

内容紹介

1歳代の子どもが,自らを語る「ことば」を獲得し,それを媒介に周辺の人々やものにかかわり始め,一個のペルソナが生まれてくるまでの過程を,日誌観察法によりつぶさに描き出す.第一分冊では「自分の名前」がいつから一人称とみなせるかをテーマに「自己」の発達を論じる.

著者プロフィール

麻生 武(アソオ タケシ)

奈良女子大学名誉教授

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

I 自分を指差す,自分の名を言う

序 章 「自分」とは何か?
 1.「私」という一人称の不確かさ
 (1)日本語の一人称
 (2)英語の主語の一人称は必要なのか
 (3)「私は私だ」という巨大な“錯覚”
 2.「I」や「you」という人称代名詞の背後にあるもの
 (1)一人称代名詞を用いる難しさ
 (2)自分の名をいつまでも自称詞に用いることは幼いことか
 (3)欧米の一人称・二人称と対話の場の成立
 (4)「I」や「you」を使えることはそんなにすごいことか
 3.自分の名前という不思議
 (1)人称語は呼びかけから発生するのか
 (2)「呼びかけ」と「名指し(名前を言う)」
 (3)人物の名前とは何か
   ①第三者への名指し
   ②第一者(自分自身)への名指し
   ③第二者(子ども)への名指し
 (4)人物の名前は固有名詞なのか普通名詞なのか
   ①「ダディ」とは誰か
   ②固有名詞の理解
 (5)自分の名前とは何か
   ①名前を持たない人たち
   ②個人のアイデンティティを大切にする一神教
   ③「自分の名前」という手形
 
第1章 生後1年目,「身ぶりからことばへ」
 1.乳幼児の日誌的な観察
 2.日々の生活における子どもの観察
 (1)本研究の観察の目的
 (2)観察の対象
 (3)観察の方法
 (4)観察データの分析方法
 3.長男Uの生後1年目の達成
 (1)「共同化された対象世界」の出現
   ①「共同化された“人”的存在」
   ②突然の出来事を「共同化された事象」にする力
   ③ツツジの花を指差し,笑い声を出し,父親を見る
 (2)「自己」を「他者」と同型的な存在として組織化
   ①仕草の模倣
   ②道具の理解    
 (3)「他者」と並ぼうとする「自己」の欲望の出現
 4.生後1年目に関する理論的な留意点
 (1)「模倣」をどのようにとらえるか
   ①コミュニケーションとしての模倣
   ②他者の行為意図を理解するための模倣
   ③身体所作の模倣の重要性
 (2)「身体」をどのようにとらえるのか
    
第2章 ことばの世界へ
 1.アイコン・インデックスとしてのことば
 (1)記号(サイン)をどのようにとらえるのか
 (2)Uにとって父親とはいかなる存在か,その多面的な関係性
   ①一瞬前の体験を共有する相手としての父親
   ②母親と話題にする対象としての父親
   ③意図を確認する相手としての父親
   ④保持される父親の意図
   ⑤鍵をドアと関連づけ,またその所有者である父親とも関連づける
   ⑥父親の見つめているモノを確認する指差し
   ⑦一緒のことにして楽しめる遊び相手としての父親
   ⑧父親がUに注意をすることを催促?――禁止の内面化
   ⑨まとめ――Uにとって父親とはどのような存在か
 (3)やりとりの不連続的な連鎖
 2.投機とグラウンディングを通じてのコミュニケーション
 (1)投機とグラウンディング
 (2)異なる意志を持つ他者(父親)
 3.ことばとしての身体
 (1)ことばとして機能し始めるUの身体
 (2)他者の同型的な身体図式の形成
 (3)自他の身体を結びつける写真やことば(音声言語)
 (4)身ぶりと発声でのやりとり
 〈まとめ〉
  
第3章 人称的世界へ
 1.父親や母親に対する人称詞の獲得
 (1)父親や母親に対する呼びかけ
 (2)なぜ父母を「名指す名前」の習得には時間がかかるのか
 (3)「お父ちゃん」「お母ちゃん」の言語理解
 (4)「トータン」「タータン」といった名前の習得
 (5)人称詞「トータン」の獲得プロセスのまとめ
 2.自分の名前の獲得
 (1)自分の名前が分かるとはどういうことか
 (2)なぜ子どもは自分の名前を自分で口にするようになるのか
   ①「投機的な振る舞い」としての「自分の名」を発する
   ②「自分の名前」と分かって「自分の名前」が言えるようになる
 3.自己と他者とのつながりと駆け引き
 (1)自己と他者とのつながりを生きる
   ①「姿勢・態度を写す模倣」と「模倣の意識化」
   ②他者の身体運動を模倣する
   ③受動―能動反転模倣
 (2)他者への共感・物語の理解
   ①絵本の理解
   ②絵本理解における二つの視点(当事者視点と第三者視点)
   ③他児への共感
 (3)その他の発達について
   ①表現する力の発達
   ②交換条件の理解と行動の抑制
   ③首の横振りと自己主張
 〈まとめ〉

第4章 人称的世界の開花I:「自分の名前」と自己意識
 1.自分の名前の獲得
 (1)「自分の名」を言うことはどのような行為か
   ①綿巻による「自分を表す語」の分析
   ②本書の自称詞の分析(分類)カテゴリー
 (2)自称詞の爆発的増加
   ①1歳6ヵ月代の自称詞の用い方
   ②1歳7ヵ月代の自称詞の用い方
   ③1歳8ヵ月代の自称詞の用い方     
 2.「自分の名」が一人称になるのはいつか
 (1)自称詞による「プラン宣言」発話  
 (2)自称詞による「行為者同定」発話
 (3)自称詞による「所有主張」発話 
 3.鏡を通じての新しい自己意識
 (1)自己の鏡像理解(先行研究から) 
   ①子どもはいつ頃鏡の自己像を理解できるようになるのか
   ②鏡の「マーク課題」を通過できることは何を意味しているのか
 (2)自己の鏡像理解(Uの日誌データから)
   ①鏡の前で「Uちゃんどこ?」
   ②鏡の前で「あれは誰?」
   ③新しい服を着せると鏡を見に行きたがる
   ④「マーク課題」について
 〈まとめ〉

第5章 人称的世界の開花II:広がる内界と外界
 1.広がる自己の世界
 (1)内的状態の表現への歩み 
 (2)「延長された自己」をめぐる議論
   ①ことばに先立つ「自伝的自己」
   ②ことばの後に生まれる「自伝的自己」
   ③エピソード記憶と「延長された自己」
 (3)Uの「延長された体験生活」
   ①ワーキング・メモリ(作業記憶)の拡大
   ②出来事の記憶をめぐる会話
   ③エピソード記憶らしきものの出現
 2.広がる他者との世界(対人意識の発達)
 (1)操られ主体として立ち上がってくる人形 
   ①ライバルとしての人形(ぬいぐるみ)
   ②人形を行為の主体として操る
   ③人形の一人称「ボク」ということばの出現
 (2)役割の逆転,受け身の立場から能動的立場へ
 (3)親に指示し,「コウ,コウ」と手本を示せるまでに  
 (4)反抗できる力,拒否できる力 
   ①「トータンは?」「タータンは?」と聞き返す
   ②「アカン」を他者に対して拒否(禁止)として用いる
   ③「こっち」と言えば「あっち」と自分の意思を主張
 〈まとめ〉

第6章 新たな「自己」の出現(1歳9ヶ月代~1歳10ヶ月代)
 1.自称詞の展開
 (1)Uの自称詞 
   ①1歳9ヶ月代の自称詞の用い方
   ②1歳10ヶ月代の自称詞の用い方
   ③1歳11ヶ月代の自称詞の用い方
 (2)人形の自称詞「ボク」
   ①1歳9ヶ月代の「ボク」の用い方
   ②1歳10ヶ月代の「ボク」の用い方
   ③1歳11ヶ月代の「ボク」の用い方
 2.象徴能力の出現,イメージ世界の展開
 (1)象徴能力 
 (2)広がる仮想世界
   ①「ナイ」という意識
   ②内的状態をどう表現するか
   ③絵本の登場人物の立場を理解する
 3.自己と時間
 (1)自己の対象化と自己意識 
   ①「ココ」と「ムコウ」など(1歳9ヶ月代)
   ②「ジブン(自分)」「トイ(一人)」など(1歳10ヶ月代)
 (2)時間意識と自己意識 
   ①過去と自己(1歳9ヶ月代)
   ②過去と自己(1歳10ヶ月代)
 (3)自我の出現・反抗期の始まり?
 〈まとめ〉


The Emergence of ‟I”, the Miracle in the Second Year of Life, I:
Pointing to One's Self, Uttering One's Own Name
Takeshi ASAO


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