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世俗の時代 上

世俗の時代 上 A Secular Age

A5判 548ページ 上製
価格:8,800円 (消費税:800円)
ISBN978-4-8158-0988-1 C3010
奥付の初版発行年月:2020年06月 / 発売日:2020年06月中旬

内容紹介

近現代の特徴の一つとされる「世俗化」。しかし、人々はさまざまなかたちで信仰や霊性とともに生きている。では、西洋において神信仰はいかにして力を失い、個人の選択肢の一つとなったのか。壮大な歴史的展望のもとに宗教・思想・哲学の曲折に満ちた展開を描き出す記念碑的大著、ついに邦訳。

前書きなど

本書は、一九九九年春にエディンバラで行ったギフォード講義に端を発している。その時の演題は「世俗の時代に生きているのか」というものであった。それからかなりの時間が経過し、また著述の範囲が広がっていったのも事実である。一九九九年のこの連続講義は、基本的には本書の第I部から第III部までを網羅するものであった。第IV部と第V部では、その折りに議論したかったいくつかの事柄を扱っている。しかし当時は、それらを適切に扱うだけの時間と能力をもちあわせていなかった(その後の年月の経過はこの点で助けになったと考えている)。

一九九九年の時点から本書はかなりの広がりをみせることになり、その関心の範囲も増大した。しかしその範囲が急激に増大したために、本書の広がりをもってしてもそれに追いつけなかった。それゆえ、いま読者が手にしている本書よりもはるかに大きな著作が、本来は必要とされたはずであった。本書で語ろうとしているのは、近代西洋において通常、「世俗化」(secularization)と呼ばれている現象についての物語である。それによって筆者は、世俗化のプロセスによってしばしば呼び起こされてきた事柄、さらには依然としていまだに不分明ではあるが、このプロセスがやがて行き着くはずの結果を明確化しようと試みている。この課題を適切に成し遂げるためには、より濃密かつ継続的な物語を語らねばならなかったはずである。だが、そのための十分な時間と能力を、筆者はもちあわせていなかったように思う。

本書を手にとった読者には、この著作が一連の「物語と議論」の展開であると考えないようにとお願いしたい。むしろ本書は、相互に関連しあういくつかの論考の集合体であり、各章はそれぞれ個別の主題を扱いながらも相互に光を投じつつ、共通の有意な文脈を提示するものだと理解してほしい。私の願いは、こうした素描を通じて本書のテーゼの要点が立ち現れてくることである。同時にまたそのことを通じて、本書のテーゼのさらなる展開、適用、修正、転換を試みていく際に、読者に何らかの示唆が与えられることを希望している。

この研究課題に取り組むきっかけを与えてくれたエディンバラのギフォード講義委員会の皆様に謝意を表したい。筆者はまた、一九九六年から九八年にかけてアイザック・キラム・フェ……

[「はじめに」冒頭より]

著者プロフィール

チャールズ・テイラー(チャールズ テイラー)

Charles Taylor
1931年、カナダ生まれ。オックスフォード大学にて博士号(哲学)取得。マギル大学などで教鞭をとり、現在、同大学名誉教授。政治哲学をはじめ、自己論・道徳論・言語論・宗教論などの分野において研究を積み重ねてきた哲学者であり、テンプルトン賞、京都賞などを受賞。本書『世俗の時代』(2007年)は、『ヘーゲル』(1975年)、『自我の源泉』(1989年)に続く第三の主著として位置づけられる。ほかの著作に、『今日の宗教の諸相』(2002年)、『実在論を立て直す』(共著、2015年)など。

千葉 眞(チバ シン)

1949年生まれ。プリンストン神学大学にてPh.D.(政治倫理学)取得。国際基督
教大学教養学部教授・特任教授を経て、現在、同大学名誉教授、平和研究所顧問。
著訳書 『現代プロテスタンティズムの政治思想』(新教出版社、1988年)
    『ラディカル・デモクラシーの地平』(新評論、1995年)
    『アーレントと現代』(岩波書店、1996年)
    『デモクラシー』(岩波書店、2000年)
    『「未完の革命」としての平和憲法』(岩波書店、2009年)
    『連邦主義とコスモポリタニズム』(風行社、2014年)
    アーレント『アウグスティヌスの愛の概念』(訳、みすず書房、2002年)
    ラクラウ/ムフ『民主主義の革命』(共訳、ちくま学芸文庫、2012年)他

木部 尚志(キベ タカシ)

国際基督教大学教養学部教授

山岡 龍一(ヤマオカ リュウイチ)

放送大学教養学部教授

遠藤 知子(エンドウ チカコ)

大阪大学大学院人間科学研究科准教授

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はじめに
凡 例

序 章

第I部 改革の仕事

第1章 信仰の防波堤
第2章 規律訓練社会の出現
第3章 大いなる脱埋め込み
第4章 近代の社会的想像
第5章 観念論の亡霊

第II部 転換点

第6章 摂理に基づく理神論
第7章 非人格的秩序

第Ⅲ部 ノヴァ・エフェクト

第8章 近代の不安
第9章 時間の暗い深淵
第10章 広がる不信仰の宇宙
第11章 19世紀の軌跡


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