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食と人びとの日常史胃袋の近代

胃袋の近代 食と人びとの日常史

四六判 354ページ 上製
価格:3,960円 (消費税:360円)
ISBN978-4-8158-0916-4 C3021
奥付の初版発行年月:2018年06月 / 発売日:2018年06月下旬

内容紹介

人びとは何をどのように食べて、空腹を満たしてきたのか。一膳飯屋、残飯屋、共同炊事など、都市の雑踏や工場の喧騒のなかで始まった外食の営みを、日々生きるための〈食〉の視点から活写、農村にもおよぶ広範な社会と経済の変化をとらえ、日本近代史を書き換える。

前書きなど

一 食と人びとの日常史

近代とはどのような時代か。

文明開化の時代、西洋化の時代、産業革命の時代、労働者階級誕生の時代、民法成立の時代、戦争の時代、企業勃興の時代、鉄道の時代など、これまでさまざまな視点からこの時代は名付けられてきた。しかし、それらはこの問いに対する答えのほんの一部に過ぎない。

これまで、私たちはどこまで当時を生きた人びとの視点と感覚からこの時代を考えてきただろうか。ここでいう「人びと」とは、さまざまな職業や立場の人が含まれる。農村から都市へ出稼ぎに来た人びと、たとえば工場で働く女工、町工場の職工、商店の丁稚奉公人、カフェーの女給、中流階級家庭で働く女中、あるいは都市から都市へと放浪する日雇い人、行商人、露天商人、芸人、そして都市の街路を行き交う官吏、警察官、兵士、銀行員、事務員、学生たち。それだけではない。無職の人、若い人、年老いた人、子どもたち、男の人、女の人、農村に暮らす人、都市に暮らす人、漂泊の人、豊かな人、貧しい人、健康な人、病気の人、障害をもつ人、戦場の人、銃後の人など、社会を構……

[「序章 食と人びと」冒頭より]

著者プロフィール

湯澤 規子(ユザワ ノリコ)

1974年 大阪府生まれ
2003年 筑波大学大学院歴史・人類学研究科博士課程単位取得満
    期退学、博士(文学)
    明治大学経営学部専任講師、筑波大学生命環境系准教授
    を経て、
現 在 法政大学人間環境学部教授
著 書 『在来産業と家族の地域史――ライフヒストリーからみた
    小規模家族経営と結城紬生産』(古今書院、2009年)
    『7袋のポテトチップス――食べるを語る、胃袋の戦後
    史』(晶文社、2019年)他

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 章 食と人びと
 ―見えない歴史の構築―
1 食と人びとの日常史
2 近代の都市と人口と胃袋――見取り図
3 外で飯食う事――知らぬ火の食事
4 社会問題は胃の問題――罪と胃袋

第1章 一膳飯屋と都市
 ―胃袋からみる近代日本の都市問題―
1 十銭玉一つの飯どんぶり
2 舌で書く食堂経済学――石角春之助
3 「天下の台所」の近代台所事情――大阪市の一膳飯屋調査

第2章 食堂にみる人びとの関わり
 ―食をめぐる政治と実践―
1 都市労働者問題と民営食堂
2 胃袋に対する行政の関与
3 市営食堂その後
4 「地域」社会事業と実務家のネットワーク

第3章 共同炊事と集団食のはじまり
 ―工場の誕生と衣食住の再編―
1 工場食の世界
2 共同炊事のはじまり
3 食と「地域」社会事業
4 共同炊事による胃袋の連帯
5 胃袋と企業・国家・科学

第4章 胃袋の増大と食の産業化
 ―大量生産・大量加工時代の到来―
1 食の産業化――大量生産と大量加工
2 漬物と近代
3 工場・女工・漬物・肥料
4 蔬菜栽培の発展と漬物屋の増加
5 軍需と家庭――戦下の漬物樽

第5章 土と食卓のあいだ
 ―食料生産の構造転換と農民・農家・農村―
1 農村と都市のあいだ
2 農村の変化と青年たち
3 米と繭と新しい商品作物
4 土と食卓のあいだ――「百姓」から「農家」へ

第6章 台所が担う救済と経済
 ―公設市場・中央卸売市場の整備―
1 食の交換と分配
2 胃袋と都市の台所
3 中央卸売市場の誕生――救済政策から経済政策へ

第7章 人びとと社会をつなぐ勝手口
 ―市場経済が生んだ飽食と欠乏―
1 勝手口からみる歴史
2 『残食物需給ニ関スル調査』
3 食べものの洪水と空っぽの胃袋
4 食堂の勝手口から地域社会へ

終 章 胃袋からみた日本近代
 ―食と人びとをつなぐ地域の可能性―
1 胃袋の孤立化と集団化
2 食と人びとと地域の日常史
3 人びとをめぐって――民衆と他者
4 胃袋の現代へ――日々食べるということ


あとがき
参考文献
図表一覧
索 引


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