囚人と狂気 一九世紀フランスの監獄・文学・社会
価格:5,940円 (消費税:540円)
ISBN978-4-588-37605-4 C1022
奥付の初版発行年月:2019年03月 / 発売日:2019年03月中旬
1843年、七月王政下の議会に提出された監獄法案は、少年と老人を除く全囚人を独房に収監するというものだった。囚人の社会復帰をめざす理想の監獄とその挫折をめぐって、新聞や学術論文、議事録、回想録や文学作品に表れた多様な論争的言説を掘り起こし、独房で精神を病んだ囚人が〈非理性〉や植民地へと追放されてゆく過程をたどる。犯罪と近代文学成立をめぐる表象文化研究の稀少な成果!
梅澤 礼(ウメザワ アヤ)
1979年生まれ。上智大学卒業後、ベルギー政府給費生、フランス政府給費生として留学したのち、2012年、パリ第1大学博士課程修了。日本学術振興会特別研究員を経て、現在富山大学准教授。専門は近代の文学と犯罪学。共著に『近代科学と芸術創造──19–20世紀のヨーロッパにおける科学と文学』(行路社、2015年)、訳書にカリファ『犯罪・捜査・メディア──19世紀フランスの治安と文化』(法政大学出版局、2016年)、『ラスネール回想録』(共訳、平凡社、2014年)などがある。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
推薦のことば (ドミニク・カリファ)
序章
1 監獄法案
2 監獄をめぐる研究
3 監獄をめぐる表象
4 本書の構成
第一部 「狂った囚人」
第一章 一八二〇年代
1 概 史
2 欠如した存在としての囚人と足し算型の処遇
3 囚人のための図書コンクール
4 博愛主義
5 悪臭と悪徳
第二章 一八三〇年代
1 概 史
2 博愛主義の名残
3 トックヴィルとリュカ
4 快適な監獄
5 博愛主義批判と厳罰化
6 「監獄は学校である」
7 伝染病と犯罪
8 統 計
9 犯罪者の国家
10 監獄という動物園
11 骨相学
12 「精神の奇形」
13 監獄における性
14 女囚の性
15 監獄学の誕生
16 新型囚人の登場とリュカの変節
第三章 一八四〇年代
1 概 史
2 囚人と労働者
3 監獄法案への反論
4 モン・サン・ミッシェル事件
5 狂気とは何か
6 「狂った囚人」の肖像
7 泥水の浄化
8 「狂った囚人」の犠牲
9 監禁から流刑へ
第四章 一九世紀後半
1 概 史
2 空気の個別化
3 空気から光へ
4 マザス監獄
5 マザス監獄と自殺
6 小ロケット監獄の悲劇
7 デジェネレッサンス理論の誕生
8 デジェネレの肖像
9 流刑の一般化
第二部 監獄と文学
第一章 一八二〇年代
1 監獄と文学の出会い
2 『ローラン、もしくは囚人たち』
3 『アントワーヌとモーリス』
4 囚人による作品
5 囚人の新しい描写
6 囚人文学
第二章 一八三〇年代
1 バルザックと博愛主義
2 リュシアンの獄死
3 バルザックと監獄改革
4 ラスネール伝説
5 青年時代のラスネール
6 作家としてのラスネール
7 ラスネール伝説の起源
第三章 一八四〇年代
1 『パリの秘密』と隠語
2 文学と奇形学
3 一つの法・二つの未来
4 大ロケット監獄とジャン・ヴァルジャンの徒刑場
5 小ロケット監獄とプチ・ピクピュス修道院
第四章 一九世紀後半─よみがえる黄金期
1 『娼婦エリザ』とバイヤルジェ
2 『娼婦エリザ』とレリュ
3 ゴンクールによる監獄資料の批判的引用
4 ラスネールとマルドロール
5 怪物的犯罪者の実像への回帰
終 章
1 監獄法案と流刑制度
2 文学と監獄の関係
3 犯罪学と文学の一世紀
あとがき
図版出典
注
人名索引