学校文化の史的探究 中等諸学校の『校友会雑誌』を手がかりとして
価格:9,680円 (消費税:880円)
ISBN978-4-13-056223-2 C3037
奥付の初版発行年月:2015年03月
戦前の中等教育における『校友会雑誌』を発掘し,内容を検討することで浮かび上がる群像……ストライキする学生,制服と女生徒,まだアマチュアだった文豪たち——初等と高等,公的カリキュラムに焦点をあててきた従来の教育史の狭間を埋め,生徒たちの多彩な生を描き出す.
目次
序 章 学校文化の探求へ(斉藤利彦)
1 学校文化へのアプローチ
2 学校文化の規定要因と本書の課題
3 新たなアプローチと史料論
I 学校文化とその表象
第1章 『校友会雑誌』にみる学校文化——表紙の変遷をとおして(斉藤利彦)
1 『校友会雑誌』の表紙から見えてくるもの
2 『校友会雑誌』と印刷文化
3 表紙の変遷にみる学校文化
4 「我々の雑誌は我々のデザインで」
5 「外地」の『校友会雑誌』
第2章 生徒の表現の場としての『校友会雑誌』——制約と可能性(市山雅美)
はじめに
1 校友会雑誌の成立と動揺
2 校友会雑誌の編集体制の確立——教員による検閲を中心に
3 日露戦争後の状況
結論
第3章 学校文化に現れた天皇(制)イメージ——『校友会雑誌』における「御大典」・行幸啓の表現から(茂木謙之介)
はじめに
1 想起・共有される天皇(制)——「御大典」記念号における天皇(制)イメージ
2 接触・経験される天皇(制)——昭和戦中期青森における秩父宮表象をめぐって
おわりに
II 学校文化における相剋の諸相
第4章 学校紛擾における要求実現のための生徒の行動様式——同盟休校と決議文を中心に(市山雅美)
はじめに 学校紛擾の位置づけと定義
1 同盟休校
2 学校紛擾の原因と生徒の要求
3 学校紛擾における生徒たちの戦略
結論 教師対生徒の図式を超えて——学校文化と学校紛擾
第5章 拮抗する青年論——明治後期中学生による応答の諸相(森田智幸)
はじめに 問題の所在と方法
1 青年批判言説の広がり
2 学校による「生徒管理」の強化
3 中学生による論理の共有
4 中学生による論理の拒否
おわりに 学び手の声を聴く
III 校風と学校文化
第6章 実業学校『校友会雑誌』にみる青年の社会観・実業観(井澤直也)
はじめに
1 実業学校「校風」育成の場としての『校友会雑誌』
2 商業学校の実業観・青年観
3 工業学校の工業観・青年観
4 農業学校の農業観・社会観
おわりに
第7章 高等女学校の校風文化と卒業生——大正から昭和期の跡見女学校(歌川光一)
はじめに
1 跡見女学校という考察対象
2 マス・メディアにおける跡見女学校
3 在校生の身装観
4 校風文化と卒業生
おわりに
IV 生徒文化の多様な展開
第8章 自伝にみる師弟関係——『私の履歴書』の分析から(稲垣恭子)
はじめに
1 『私の履歴書』と「先生」の思い出
2 さまざまな思い出の語りかた
3 各「界」における思い出の特徴
おわりに
第9章 近代日本の学校文化と文芸活動——『校友会雑誌』という磁場(斉藤利彦)
1 石川啄木の場合
2 芥川龍之介の場合
3 萩原朔太郎の場合
4 文学者の出発と『校友会雑誌』
5 野間宏の場合
6 『校友会雑誌』における文芸欄
7 文芸活動の具体相
8 文芸部の位置づけをめぐって
第10章 創作活動のアジール——昭和戦前戦中期盛岡中学校『校友会雑誌』短歌欄・短歌作品の分析から(茂木謙之介)
はじめに
1 昭和戦前・戦中期の歌壇状況
2 表現における規範
3 戦中期『校友会雑誌』短歌の諸相
4 規範としての教師
おわりに
第11章 高等女学校における教師と生徒による音楽活動——『校友会雑誌』上における表現を手がかりに(古仲素子)
はじめに
1 高等女学校における音楽の重視
2 学校設立初期における教師の音楽に対する意識とその指導
3 音楽活動に関する生徒の意識とその表現
おわりに
V 帝国日本と学校文化
第12章 大陸への修学旅行と帝国日本(井澤直也)
はじめに
1 先行研究と本章の位置
2 商業学校における「満鮮(韓)支」修学旅行の端緒
3 行商としての「満鮮(韓)支」旅行
4 旧制中学校の「満鮮(韓)支」旅行
5 紀行文に見る中等諸学校生の社会・文化意識
6 「満鮮(支)」修学旅行と学校文化
第13章 中等諸学校生徒のアジア認識の生成と相克——台北第一中学校,台北第二師範学校,京城公立中学校,新京中学校(梅野正信)
はじめに
1 台北州立第一中学校学友会雑誌言説にみるアジア認識の生成過程
2 台北第二師範学校,京城公立中学校,新京中学校生徒の『校友会雑誌』にみるアジア認識
3 アジア認識の相克,そして「揺れ」
終章 学校文化研究の今後の課題と展望(市山雅美)
1 学校文化を巡る対立・葛藤
2 学校外の文化と学校文化
3 学校文化の構造
4 今後の課題
5 近代日本と学校文化——学校文化と自己形成
あとがき(斉藤利彦)
執筆者紹介/索引