『ジョン・ケージ 混沌ではなくアナーキー』

[hanmoto isbn=”978-4-901631-89-1″ type=”osusume”]

 今年2012年はジョン・ケージ生誕100年にあたり、ケージにちなむ数々のコン
サートや催しが開かれています。そこで、今回お勧めするのは第20回吉田秀和賞
受賞『ジョン・ケージ 混沌ではなくアナーキー』です。
 たとえば、ケージはどんな方法で沈黙の『4分33秒』を「作曲」したのか?
 なぜピアノの弦に異物を挟んだ「プリペアドピアノ」を考案したのか?
 易経の8×8のチャートを作曲に反映させた『易の音楽』とはどんな曲なのか?
 図形楽譜はどういう代物で、どう読み解くのか? そして難解とも奇妙ともいわ
れる彼の音楽理論は?
 緻密な論証によって、ケージにまつわる数々の謎を詳細に読み解いてゆくスリ
ルと醍醐味は格別ですが、同時に、なぜケージはそのように音楽と向き合ったの
か、ケージはなぜそのように生きたのかを論ずる丁寧な筆運びは、音楽学者であ
る著者のケージへの人間的共感に溢れています。
 「ともすると、音楽の鳴り響きとは別のところに存在意義があったとされるケ
ージだが、彼はなぜ、ほかならぬ音楽に身を捧げたのか、なぜ、音楽でなければ
ならなかったのか」読み終わった時こうした疑問が氷解するように論じたいとい
う著者の目的は達成されたようで、音楽に対し真摯に、かつユーモアの精神とと
ともに生きた1人の青年の姿が、そして年老いて静かに飄々と音楽への愛ととも
にその生涯を終える〈親愛なるジョン・ケージ〉の姿が浮かび上がります。是非、
あなただけの知られざるジョン・ケージを見つけてください。

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