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帝国日本と地方財政調整制度

大阪大学法史学研究叢書5
帝国日本と地方財政調整制度

A5判 358ページ 上製
価格:7,040円 (消費税:640円)
ISBN978-4-87259-795-0 C3032
奥付の初版発行年月:2024年03月 / 発売日:2024年04月上旬
発行:大阪大学出版会  
発売:大阪大学出版会
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内容紹介

「地方自治」はどのようにして失われたのか。――地方財政調整制度は「国家総力戦体制」のもとで帝国日本の統治をいかに強化したのか。

戦後日本の地域経済、開発において重要な役割を果たした一方で、地方財政の自主性を奪ってきたとの批判も受けてきた地方交付税制度。本書では、元来地方自治体間の財政力の格差、都市部-農村部間の財政格差を是正するために誕生した地方交付税制度の意義を、その源流である昭和15(1940)年の地方分与税制度の成立と展開の過程から歴史的に解明する。また、先行研究に依拠しつつ、未公刊の一次資料も用いて地方自治のあり様や大正期以降の地方税財政政策、地方財政調整制度をめぐる官僚機構内部の動向、及び警察・軍隊の動向を内務省地方局やその政策理念を通じて検討することで、帝国日本における地方財政調整制度の歴史的意義と役割を考察した。

著者プロフィール

矢切 努(ヤギリ ツトム)

1975 年 大阪府に生まれる
1999 年 関西大学経済学部経済学科卒業
2013 年 大阪大学大学院法学研究科博士後期課程修了 博士(法学)
現  在 中京大学法学部法律学科准教授
専 門 日本近代法制史
主要論文 「 郡制・郡役所の廃止と両税委譲案の消長」『東アジア研究』第50 号、2008年3 月
     「 『馬場税制改革案』の立案と軍部の地方財政調整交付金制度構想」『阪大法学』第63 巻第3・4合併号、2013 年10 月
     「 日本における公文書管理問題の法史学的考察」『中京法学』第54 巻第1・2合併号「政治学・歴史学編」、2019 年12 月

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序章 本書の意義と目的
第一章 郡制・郡役所の廃止と両税委譲案の消長
序 説  
第一節 第一次世界大戦後の社会経済的状況と国税委譲論・郡制廃止要求の台頭  
第一項 地方財政膨張と国税委譲論の出現  
第二項 地方財政膨張と郡制廃止への動き  
第二節  郡制廃止と「両税委譲案」(臨時財政経済調査会特別委員会答申)  
第三節 「調査会答申」と両税委譲案  
第四節 両税委譲案の消滅と郡役所の廃止  
小 結  

第二章 地方財政調整制度構想出現の前史的考察
序 説  
第一節 1920年代後半における両税委譲案の挫折と税制整理  
第一項 税制整理と両税委譲案の消長
第二項 田中義一(政友会)内閣における両税委譲案の再浮上  
第三項 内務官僚らの構想からみる田中義一(政友会)内閣の両税委譲法案  
第二節 濱口雄幸(民政党)内閣の昭和六年税制改正  
第一項 昭和6年税制改正の立案過程  
第二項 昭和6年税制改正の内容  
第三項 昭和6年税制改正と新たな地方税制改革論の登場  
小 結  

第三章 日本における地方財政調整制度の導入・構想過程
序 説  
第一節 財政調整制度の誕生と日本への紹介・導入  
第二節 研究者による独・英両国の財政調整制度に対する評価  
第一項 ドイツ財政調整法   
第二項 イギリス一般国庫交付金制度  
第三節 内務官僚らによる独・英両国の財政調整制度の紹介とその評価 
第一項 内務官僚・永安百治のイギリスの一般国庫交付金制度に対する評価 
第二項 内務官僚・三好重夫のドイツの財政調整法に対する評価  
第三項 1930年代後半におけるドイツの財政調整法研究  
第四節 内務官僚の地方財政調整制度構想 
第一項 地方財政調整制度構想の思想的基盤  
第二項 永安百治の地方財政調整制度構想  
第三項 三好重夫の地方財政調整制度構想  
小 結  

第四章 内務省「地方局案」と地方財政調整制度の立案過程
序 説   
第一節 地方税制改革論における内務省の台頭  
第一項 内務省地方局の地方財政調整交付金案(「地方局案」)の特徴  
第二項 中央官庁内における地方財政調整制度案の乱立と「地方局案」の台頭  
第三項 「地方局案」の支持基盤  
第二節 内務省・大蔵省の「地方局案」をめぐる対立と内務省の譲歩
第一項 「地方局案」をめぐる内務省と大蔵省の対立
第二項 内務省の「地方局案」修正の経緯  
第三節 内務省と農林省の対立  
第一項 農林省による内務省の交付金制度への批判  
第二項 農林省と「農村経済更正特別助成施設要綱」   
第四節 内閣審議会と内務省の立案した交付金制度の挫折  
第一項 内閣審議会前夜の内務・大蔵両省の攻防 
第二項 内閣審議会における内務省主導の交付金制度の挫折  
小 結  

第五章 「馬場税制改革案」の立案と地方財政調整金制度
序 説  
第一節 内務省の地方財政調整交付金制度実現に向けた動きと馬場鍈一蔵相の登場  
第一項 内閣審議会と内務省  
第二項 内閣審議会後における内務省の巻き返し  
第三項 内務省の挫折  
第二節 「馬場税制改革案」の立案と内務省・大蔵省の対立  
第一項 「馬場税制改革案」の登場  
第二項 「馬場税制改革案」における大蔵省の理念  
第三項 「馬場税制改革案」の立案をめぐる内務省・大蔵省の対立  
第三節 「馬場税制改革案」と地方財政調整金制度  
小 結  

第六章 軍部・警察と地方財政調整制度
序 説  
第一節 内務省警保局の動向と地方財政調整制度
第一項 農民運動と内務省警保局  
第二項 警察機構の拡充と「馬場税制改革案」  
第二節 「国家総力戦体制」構築の観点からの地方財政調整制度  
第一項 「国防上ノ見地」からの税財政改革への要請  
第二項 陸軍の地方財政調整制度への要求(一)「国政刷新要綱案 昭和十一年六月 陸軍省」  
第三項 陸軍の地方財政調整制度への要求(二)石原莞爾と日満財政経済研究会の構想  
小 結  

第七章 地方財政調整制度の法制化――地方分与税制度の誕生
序 説  
第一節 「臨時町村財政補給金規則」の実現と内務省  
第一項 「臨時町村財政補給金規則」の概要とその特徴  
第二項 結城豊太郎蔵相による馬場財政の修正と交付金制度  
第二節 「臨時地方財政調整補給金」の実現と内務省  
第一項 補給金の増額に対する要求  
第二項 「臨時地方財政補給金規則」の成立と内務省  
第三項 補給金のさらなる増額と内務省・大蔵省  
第三節 地方分与税制度の成立と内務省  
第一項 昭和15年税制改革への流れ
第二項 昭和15年税制改革の内容と意義  
第四節 昭和15年税制改革と地方の「財政自治」  
第五節 昭和15年税制改革と地方税財政の帰結  
小 結  

第八章 帝国日本の植民地朝鮮における地方財政調整制度
序 説  
第一節 植民地朝鮮における中央・地方の財政状況  
第二節 植民地朝鮮における地方財政調整制度  
小 結  

終章 むすびにかえて


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