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地球とツーリズムの未来を考える人新世とツーリズム

人新世とツーリズム 地球とツーリズムの未来を考える

A5判 178ページ 上製
価格:4,950円 (消費税:450円)
ISBN978-4-7985-0375-2 C3025
奥付の初版発行年月:2024年04月 / 発売日:2024年04月中旬

内容紹介

人新世とは何か。

今や、自然科学だけではなく社会・人文科学の分野から人新世に関する議論が活発になっている。本書は、「人新世という時代に私たちはいかに生活し、地球システムをいかに維持していくべきか。また、地球を改変する力、営力となったツーリズムは人新世時代にどう向き合うべきか」を問うたものである。

第1部「人新世という時代」では、人新世議論の発端となった2000年、2002年のクルッツェンらの報告を紹介し、産業革命以後の人新世時代を3つのステージに分けて、その歴史的変遷を概観する。そして、クルッツェンがインタビューに応じて、クルッツェン自身が語った人新世の本質について、解説を加えながら明らかにしている。

第2部「人新世時代のツーリズム」では、1970年代からツーリズムが環境へ負の影響を与えてきたことを概観する。次いで、ツーリズムは気候の恩恵を受けて発展してきたが、一方でツーリズムが気候変動と地球温暖化に影響を与えてきたことを明らかにする。さらに、人新世時代において営力となったツーリズムのあり方を考察し、これまでのツーリズムから脱却して、人新世第3ステージにふさわしい3つのツーリズム、地球をケアする地球愛をもったツーリズムのありかたを示す。

第3部「人新世と持続可能なツーリズム」では、ツーリズムが人新世時代にどのように変遷してきたか、その具体的事例をヨーロッパアルプスに求め、ツーリズムの現状を明らかにする。次いで、1970年代からのマスツーリズムの発展に対して、もう一つのツーリズムとして環境に負荷を与えることの少ないソフトツーリズムが生まれた背景とその今日的意義を考察する。そして、人新世時代に求められている持続可能なツーリズムの可能性を明らかにする。

著者プロフィール

片瀬 葉香(カタセ ヨウカ)

1997年、コーネル大学大学院(MPA)、2000年、コロンビア大学大学院(MPhil)、 2008年、早稲田大学
大学院社会科学研究科(地球社会論専攻)博士後期課程満期退学。
2012年、コロンビア大学地球研究所客員研究員を経て、現在、九州産業大学地域共創学部観光学科准教授。
専門は観光学。主な論文に「人新世におけるツーリズムの再検討」(九州産業大学地域共創学会誌、2022年)など。

横山 秀司(ヨコヤマ ヒデジ)

1981年、明治大学大学院文学研究科(地理学専攻)博士課程単位取得満期退学。博士(地理学)(明治大学)。
元・九州産業大学商学部教授、現・九州産業大学名誉教授。 専門は観光地理学、景観生態学。
主著に『景観生態学』(単著)古今書院、『景観の分析と保護のための地生態学入門』(編著)古今書院、
『観光のための環境景観学  真のグリーン・ツーリズムにむけて』(単著)古今書院、
『ジオツーリズム論  大地の遺産を訪ねる新しい観光』(編著)古今書院など。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

まえがき

   第1部 人新世という時代

第1章 人新世  人類の地質時代

 1. 人新世の始まり
 2. 人新世とは何か
 3. 人類の地質(Geology of Mankind)
 4. 人新世と地球システム

第2章 人新世の3つのステージ

 1. 3つのステージ区分
 2. プレ人新世
 3. 人新世第1ステージ:産業の時代(1800年頃~1945年)
 4. 人新世第2ステージ:大加速時代(1945年~2015年頃)
 5. 人新世第3ステージ:地球システムの管理者の時代?(2015年頃以降?)
 6. まとめ

第3章 クルッツェンの人新世の本質  クルッツェンの言葉

 1. クルッツェンへのインタビュー
 2. クルッツェンとの会話
 3. クルッツェンの人新世の本質

第1部小括

   第2部 人新世時代のツーリズム

第4章 ツーリズムによる環境への影響

 1. ツーリズムと環境
 2. ツーリズムによる自然環境への影響
  (1) ツーリズムによる土地利用の変容とその影響
  (2) 資源利用とその影響
  (3) 生物の移動と野生種の絶滅
  (4) 疫病の感染と流行
 3. ツーリズムによる都市環境への影響
 4. ツーリズムによる地域文化の変容
 5. まとめ

第5章 人新世時代におけるツーリズムと気候変動

 1. ツーリズムと気候
 2. 気候変動とツーリズムへの影響
  (1) 気候変動によるツーリズムへの影響
  (2) 気候変動と国際機関の動き
  (3) 気候変動とUNWTO
 3. 気候変動とツーリズムエリアへの影響
  (1) 山岳地域における気候変動
  (2) 島嶼と海岸地域における気候変動
  (3) 自然遺産および文化遺産への影響
 4. ツーリズム分野における気候変動緩和策
 5. 人新世第3ステージにおけるツーリズムと気候変動緩和策

第6章 人新世の視点からのツーリズム

 1. 「ツーリズムと人新世」について
 2. ツーリズムを人新世の視点から捉える
  (1) ツーリズム理論と地球
  (2) ツーリズムと人新世の課題
 3. 人新世第3 ステージにおけるツーリズムのあり方
  (1)「ツーリズムと人新世  差し迫った出会いに向き合う」
  (2)「人新世とツーリズム・デスティネーション」
  (3) ツーリズムの3つの運命
   非炭素ツーリズム/ステイホームツーリズム/目的地管理
 4. 人新世におけるツーリズムとは

第2部小括

   第3部 人新世と持続可能なツーリズム

第7章 人新世時代のヨーロッパアルプスのツーリズム

 1. アルプスの変貌
 2. アルプスにおける人新世の3つのステージとツーリズム
  (1) 人新世第1ステージ(1800年頃~1945年)のアルプス
  (2) 人新世第2ステージ(1945年~2015年頃)のアルプス
  (3) 人新世第3ステージ(2015年頃以降?)のアルプス
 3. 人新世第3ステージにおけるアルプスのツーリズムのあり方
 4. 第3ステージにふさわしいツーリズム

第8章 もう一つのツーリズム  ソフトツーリズム

 1. ソフトツーリズムとその展開
  (1) ソフトツーリズムの誕生とその背景
  (2) ソフトツーリズムとは何か
  (3) ソフトツーリズムの展開
  (4) ソフトツーリズムから持続可能なツーリズムへ
 2. 地球温暖化とソフトツーリズムの再興
  (1) ソフトツーリズムの再興
  (2) ソフトツーリズムの新たな動き
 3. COVID-19パンデミック後のソフトツーリズムと人新世
  (1) COVID-19パンデミック後のツーリズム
  (2) 人新世第3ステージのツーリズム
 4. ソフトツーリズムの今日的立場

第9章 持続可能なツーリズムの検討

 1. 持続可能な発展
 2. 持続可能なツーリズムの展開
 3. 持続可能なツーリズムの可能性
 4. 人新世と持続可能な発展

第3部小括

 あとがき

 コラム
 コラム5-1 アルプスにおける氷河の動態
 コラム7-1 人工降雪機のエネルギー消費
 コラム7-2 登山家村(Bergsteigerdorf)
 コラム8-1 ソフトツーリズムの源


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