叢書・ウニベルシタス988
安全の原理
価格:3,080円 (消費税:280円)
ISBN978-4-588-00988-4 C1330
奥付の初版発行年月:2013年05月 / 発売日:2013年05月下旬
近代以降の国家のもとで暮らす人びとは、自由と安全の両方を同時に得ることが不可能になり、そのどちらかの選択を迫られ、結局は日常のあらゆる事象に対して安全を求めて、終始不安に怯える存在となった。本書は、ホッブズ、ルーマン、ベック、ゴッフマンらの理論に依拠つつ、とりわけチェルノブイリ原発事後や9.11テロ以後の世界に顕著に現われる安全をめぐる諸問題について考察する。
ヴォルフガング・ソフスキー(ソフスキー,W.)
(Wolfgang Sofsky)
1952年、ドイツのカイザースラウターン生まれ。社会学者、哲学者、エッセイスト。ゲッティンゲン大学で社会学、哲学、歴史学、政治学を専攻したのち、1981年に同大学で博士号を取得。複数の大学で教鞭をとったのち、現在は在野の著述家として、『ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥンク』や『フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥンク』などのメディアに寄稿しつつ定期的に著作も発表するなど、精力的な言論活動を行なっている。『テロの秩序── 強制収容所』(Die Ordnung des Terrors:Das Konzentrationslager, S. Fischer, Frankfurt a.M. 1993)により1993年の「ショル兄妹賞」を受賞。
佐藤 公紀(サトウ キミノリ)
1978年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、博士(学術)。現在、東京大学大学院総合文化研究科学術研究員。主要業績に、博士論文「ヴァイマル共和国(1919-33年)における監獄改革・犯罪生物学・釈放者扶助」(東京大学,2010年)、「ヴァイマル共和国における監獄改革と受刑者処遇の実際──不服申し立て史料の検討を通して」『現代史研究』55号、2009年など。
セバスティアン・マスロー(マスロー,S.)
(Sebastian Maslow)
1983年生まれ。2007年ドイツ・ベルリン自由大学卒業、現在、東北大学大学院法学研究科博士課程在籍(政治学専攻)、および、日本学術振興会特別研究員を経て、現在、ハイデルベルク大学東アジア研究センター助教。主要業績に、“Right-Wing Politics in Postwar Japan(1945-Present),” in Louis G. Perez, ed., Japan at War: An Encyclopedia, Santa Barbara: ABC-Clio(2013), “Dispatched and Displaced: Rethinking Employment and Welfare Protection in Japan,” The Asia-Pacific Journal , 15-3-10, April 2010(共著)など。
目次
1 破局
うねり/爆発/九・一一/運命/正常性への意志
2 危険、冒険
リスクと責任/正常な危険
3 計算と否認
幸運あるいは災難/ありえない災難
4 不安、勇気、そしてリスク願望
非常事態の雰囲気/勇気の賛美/不安の文化/冒険心というニッチ
5 保険社会
安全に対する資金/責任と損害/社会保険の惨状
6 社会的紛糾
役割、規範、幻想/信頼/距離と裏切り/猜疑心/孤独
7 リスク経済
市場と競争/労働市場/銀行業の栄枯盛衰/調子のいい株式仲買人/資金と性格
8 保安国家
支配と安全/国家権力/法的安全?/権力の夢/警察/全体的社会国家/国家の終焉?
9 戦争の危険
感覚、計算/兵士の戦争/戦争の権利/総力戦
10 テロ
現場、動機/テロリズムからテロ戦争へ/恐怖の支配者/狙撃手、人質誘拐犯/自爆テロ実行犯/強者の弱点/弱者の勝利
11 平和と安全
破壊力の均衡/冷戦/ヘゲモニー/世界帝国/国家形成の加速?
12 自由あるいは安全
消極的自由/例外状態/事前配慮の危険/全体的テロ
原註および出典
原著者あとがき
訳者あとがき
人名・事項索引
関連書
U.ベック著/東廉・伊藤美登里訳『危険社会』
N.ルーマン著/馬場靖雄訳『近代の観察』